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Wild At Heart

 ラメ入りスパンコール&原色系キワモノ変態ロックンロールロードムービー。そう、それはドロドロ映画を作らせたら右に出るものはいない、奇才デヴィッド・リンチの90年作品、"Wild At Heart"。カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作。

 "Twin Peaks" や "Blue Velvet" も確かにキワモノ映画だったが、この作品はそれに加えて、下品。なんてったって、主演がハ×で、だけど胸毛はぼうぼうで、顔のデカい、だけど女のコには人気のある(何故だ ?)ニコラス・ケイジ。このニコ・ケイ演じる殺人犯セイラーが、仮保釈中に逃走。Go West! 目指すはもちろん西海岸。連れはローラ・ダーン演じるルーラ。ルーラももちろんエッチでビッチ。この2人の演技がとにかく派手で大袈裟。両手を大きく広げて「セイラーベイビー」だの「ルーラハニー」だの「ピーナッツ」だの、とにかく暑い、暑苦しい。 video

 セイラーがいつも着ているのが、「俺の魂の自由を表す」蛇革のジャケット。さらに、ディスコでちょっかいをだされたルーラを助けた後で、そのルーラに向けてエルビス・プレスリーを熱唱。ルーラうっとり。あぁ、バカ丸出し。

 加えて、この映画は暴力に満ち満ちている。冒頭の殺人シーン、逃げる2人を追う探偵の死、交通事故にあった瀕死の女のコ、終盤の銀行強盗での殺人と、そして結局は警官に射殺される強盗。また、こういった血なまぐさいシーンの他にも、アップで映る煙草の火、退廃的で行き場の無さそうなセックスシーン、口紅で顔を真っ赤に塗りたくるルーラの母など、作品は全編がリンチカラーに染められている。

Wild At Heart そう、Wild At Heartはそれまでのどのリンチ作品よりも、直接的にバカバカしくて、直接的に暴力的だ。が、この作品の恐さは、これら直接的な映像の中にあるのではない。この映画が全編を通して観る者に語りかけてくるその雰囲気の中に、本当の恐さはある。言い換えれば、見えるモノ、手に取ることができるモノの中にではなく、見えない心の奥底に、人間の本当のおぞましさが(逆説的に捉えれば、人間の愛情が)ある。より直接的なストーリーや映像を使ったおかげで、それまでのリンチ作品以上に、見えないはずの人間のおぞましさが逆に際立って見えている。

Chris Isaak 音楽を担当したのは、リンチ・フィルムではお馴染みのアンジェロ・バダラメンティ。彼の作曲したけだるくも緊張感漂う音楽と、前述のプレスリーを初めとするロックンロール・ナンバーが程よくミックスされている。ニコ・ケイの歌うプレスリーも聴きモノだが、以前les colonnesで紹介したクリス・アイザックも要チェック。静かに、だけど熱くブルージに奏でられる彼のリゾネイター・ギターはこの映画と見事なまでにマッチしている。劇中挿入曲 "Wicked Game" "Blue Spanish Sky" は彼のオリジナル・アルバム "Wicked Game" にも収録されているので、興味を持った方はこちらもぜひ聴いてみてほしい。

 さて、一見Un Cafe Cremeにミスマッチなこの "Wild At Heart" を何故取り上げたのか。それは、この映画を90年代の内にぜひ観ておいて欲しいという気持ちはもちろん、実は僕がこういうロックンロール・ムービーが大好きだったりするからでもある。「Yeah、ハニー、Un Cafe Cremeと一緒にミレニアムに向かって突っ走ろうぜ、レッツ・ゴー、ベイビィ !」

 

 

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