以前からその不思議な名前はCDショップに行く度気にはなっていた。エンゾ・エンゾ。でも、初めて彼女をを意識したのは以前触れた『パリでかくれんぼ』で歌っている姿を観て。お世辞にもうまいとは言えない歌を披露する共演者の中、1人プロの歌い手の彼女が混じっていて目がいかないわけがない。とはいうものの、映画を観ている間はもちろん大好きなマリアンヌ・ドニクールに釘付け。ところが、観終わった後、エンゾ・エンゾの歌が耳から離れない。彼女の歌声が頭の中をぐるぐると回ってる。で、CDショップで『パリでかくれんぼ』のサントラを探すもなんとリリースされていない ! というわけで、劇中で歌われていた曲が収録されている彼女の2ndアルバムを手にすることになる。
僕が聴いたのはこちらの方が後なのだが、これが1stアルバム "Enzo Enzo"。ロシアの血を引くパリジェンヌの彼女のスマートな顔だちと物憂気な眼差し。ショートカットのヘアスタイルと半開きの唇。「どうせオシャレなフレンチポップだろう」とタカをくくていた僕の予想は見事に外れた。ワールドミュージック発祥の地、パリならではの無国籍サウンド。シャンソン、ポップ・フランセーズをベースにしながらもエキゾチックな12曲が並んでいる。1stアルバムに対する心地よい適度な期待と緊張感。そんな彼女の新鮮な心意気が伝わってくるような気がする。一口にエキゾチックといっても、その表情は多彩。でも彼女のクールさはしっかり保たれていて、なかなか聴かせる1枚。
2ndアルバムにして僕が最初に買った1枚 "Deux"。ジャズテイストの濃い、大人っぽい作品。上記の1stも素晴らしいが、このアルバムの完成度はそれをはるかに上回る。『パリでかくれんぼ』で歌われていた "Les Naufrages Volontaires"(『夢見る漂流者』)、"Reves De Compagnie"(『レーヴ・ド・コンパニー』)、"Une Chanson A La Cole"(『シャンソン・ア・ラ・コール』)は必聴。映画のように、席数の少ない小さなライヴハウスでこんな曲を生で聴けたらと思う。夜中に部屋や車の中で独りで聴くのもお勧め。
97年にリリースされた3枚目にしてオリジナルアルバムとしては最新の "Oui"。それまでどちらかというと、その鋭さを見せ続けていた彼女が、少し優しくなったというか大人になったというか(って、この頃既に30半ば過ぎのはずだが)、アルバムを通して柔らかさが心地よい作品に仕上がっている。正直フランス語の歌詞は理解し難いので正確なところは分からないが、音を聴く限りではアルバム全体を通してのストーリー性が強くなっているというか、いわゆるコンセプトアルバム的作りになっている。
99年にはそのストーリー性をより強調したステージの模様をおさめたライヴアルバム "Enfin Seuls!" をリリース。アコースティック・バンドを従えてのステージは、彼女の「上手さ」をより印象づけた。それにしても、3rdアルバムのリリース以降、日本では彼女の情報が少ないこともあってこのアルバム以外の活動状況は不明。次のアルバムはいつ届くことやら……と思っていたところにビックニュース。フランスで間もなく彼女のニューアルバムがリリースされる。なんと来週、10月16日 ! これは楽しみ。次はいったいどんな曲を聴かせてくれるのか、どんな表情を見せてくれるのか。早く日本にも輸入されることを祈りつつ、期待して待ちましょ。
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