お昼の忙しい時間帯に、
商品整理をしていると、懐かしい男女の会話が聞こえてきた。
男「あっ」
女「あっ」
男「久しぶりだね。」
女「そうね」
男はスーツ姿。女のほうは職場の制服姿だ。
その二人は、今から8年ほど前、夜中によく二人で来ていた。
深夜3時
深夜のコンビニの雑誌コーナーでよく座り読みをしていたカップルだった。
小一時間雑誌を読むと、男はかならず暖かいコーヒーを買い、女の方は紅茶を買っていた。
そして、店の外で小一時間座りこんで話をしていたカップルだった。
空が少しだけ薄明るくなった頃、二人は帰っていく。
そんな光景が半年ほど続いていた。
8年前のちょうど今くらいの時期。
気がつくと来なくなっていた。
10代の頃の2ヶ月3ヶ月というのは、案外長いもので、遊び方も、溜まる場所も定期的にかわるもんだ。
何かがあってあの二人は別れてしまったのかもしれないし、引っ越したのかもしれない。
そこのあたりは、店員の僕にはよくわからないが、彼らが来なくなってからというもの深夜のその時間外は、何だかもの寂しい感じさえしていた。
店内で話していたのは、その二人だった。
あれから8年。
男「元気にやってる?」
女「まぁ元気よ。ひさしぶりね。」
男「もう何年ぶり?」
女「8年くらいになるんじゃない?」
男「そっかー、8年かー。」
女「うん。8年よ。実はね、私、先週離婚したの」
男「え?そうなの?結婚してたんだ。」
女「うん。そうなの。7年目の破局。」
男「7年って??そっか、じゃぁ、あれからすぐに結婚したんだね。」
女「娘ももう7歳になったの」
男「そう・・・なんだ。」
女「暴力夫でね。もうイヤと思ってやっと別れたんだ。」
男「大変だったね。」
女「あなたは?」
男「俺? 俺は去年結婚したよ。」
女「そっか。」
男「あ、今、何してんの?」
女「今?ここの近くのサラ金の事務員やってるの。今月からだけどね。」
男「そっかー。」
女「子供も養わなきゃいけないから、何でも仕事しないとね。」
男「そうか、一人で養ってるんだね。それは大変だ。」
女「あなたは?」
男「あぁ、俺もこの近くの会社で会社員やってるよ。」
女「そう、、なんだ。」
そして、二人にしばらくの沈黙が流れ、
女「そろそろ行かないと。 じゃぁ、、ね。」
男「うん、、じゃぁ。」
そして二人は別々に帰っていった。
たった8年という短い時間に、いろいろと人生が変わっていったんだな。
この店で、朝まで過ごした日々も、きっと彼らの一生忘れられない思い出なのかもしれない。
そんな二人だけの甘酸っぱい心のアルバムを、僕は、ほんの少しだけかいま見たような気がした。
女にとってその男は、そして、男にとってその女は人生の分岐駅だったに違いない。
そして、二人は思い出のその駅に、再び立ち止まることなく後にした。
それから その時間帯に、あの男女は二度と来ることはなかった。