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☆6x86,6x86L 80/100/110/120/133/150
発表:1995年(Cyrix)
コードネーム:M1
ソケット5
コア電圧:3.3V or 3.52V or 2.8V(6x86L)
I/O電圧:3.3V or 3.52V
プロセス長:0.35μm
集積密度:不明
L1-Cache:16kBytes(Unified)
L2-Cache:n/a
TOWNS対応:不可
下駄:不要
ソケット5に対応した世界初の互換CPU、それがCyrixの6x86である。Pentium級互換CPUという点ではNexgenに先を越されてしまったものの、Pentiumとのピン互換を達成することによって、より現実的な選択肢としてマーケットに浸透することに成功した。その性能もなかなかの物で、現在に至るもなおこのCPUを超える演算能力を持つx86互換CPUは現れていない。しかし、ずば抜けた整数演算能力に比べ浮動小数点演算ユニット(FPU)はあまりに貧弱と言わざるを得なかった。高性能x87互換FPUメーカーとして名を馳せた同社ではあるが、こと6x86に関しては完全に駄作であると言って良いだろう。しかし、限られた資源(シリコンウェハー)の中でintelに対しての明確なアドバンテージを持つには、削るところはバッサリ切り落としてでも基本となる整数演算能力を高めることが肝要であったのだろう。intel製品よりも安価でなければ売れることのない互換製品においては、こういったマーケティング的戦略により商品の性能が左右されることもあり得るのだ。
さて、6x86というCPUのスペックについてもう少し深く掘り下げてみる事にしよう。この6x86はいわゆるCISCと呼ばれる分類に属するCPUである。その複雑怪奇さにおいて極限を極め「究極のCISC」とも呼ばれるPentiumをも上回る複雑さであり、本当の意味での「究極のx86プロセッサ」と言って良いだろう。
そして、その複雑さはキャッシュ周りにも現れている。第5世代以降のx86アーキテクチャの中では唯一、ユニファイドタイプのL1キャッシュメモリを有している。ユニファイドとはその名の通り、一つのキャッシュでコード用キャッシュとデータ用キャッシュを共用することができるタイプの物を指す。つまりハーバードタイプのものよりも効率的にキャッシュメモリを使うことが出来るため、高いキャッシュヒット性能、ひいては高い演算性能を発揮することが可能である。逆に言うとPentiumはキャッシュが16kバイトあると言っても16kバイトのプログラムがそのままキャッシュに収まるとは限らないのだ。この様に優れた性能を持つユニファイドキャッシュではあるが、反面回路が非常に複雑になるという欠点を持っている。つまり、6x86は高クロック化にはとことん向いていないCPUという事になる。
そもそも、他社が軒並みハーバードタイプで足並みを揃えた理由は、プロセッサの高クロック化と無縁ではない。RISC風命令変換実行に関しても同様だ。多少実行効率が落ちても構わない、その代わりに動作クロックを可能な限り向上させていこう、という時代の流れの中にあって、ひたすら実行効率にこだわったCyrixの姿は孤高の戦士のようであり、見るものの心を打たずにはおかない。Cyrixには熱狂的とも言えるマニアが多数存在することでも有名であるが、この辺のストイックな企業姿勢に惹かれるのも分からない話ではないだろう。
話は変わるが、皆さんは6x86の動作周波数のバリエーションをご存じだろうか?実は我々が普段目にしている6x86のクロックはPR(ピーレート)値の事なのである。一般消費者を騙くらかすという意味では非常に有効な手段ではあるが、正直言って私はあまり好きではない。PR表記は何も6x86に始まったことではないのだが、低いクロックの製品をより高クロックに見せかけるという使い方をしたのは、この6x86が最初である。さらに、CyrixはPR表記であることをいい事に、110MHzなどという摩訶不思議なクロックの製品を出してみたり、ベースクロックの規定値を75MHzにしてみたりと、まさにやりたい放題。高クロック化を諦め、真の実力勝負で挑んだ割にはセコイ展開である。
それではその他の特徴についてざっと上げてみることにしよう。
まずは電源周りについて。このCPUはそれこそ「バカ」みたいに電気を食う。あの時代に30Wもの電力を消費するCPUを作り、しかもそれを本当に売っていたというのだからあきれて物が言えない。このCPUが原因で焼け死んだマザーボードは決して少なくないだろう。さしものCyrixも少々やりすぎたと思ったのか、後に低消費電力版である6x86Lを発表するのだが、これもまた泣かず飛ばずに終わってしまうことになる。
次にリニアバーストモード。これはメモリアクセス速度を向上させる為の手法である。しかし、チップセットとBIOS側での対応が必要な為、殆ど普及していない。さらに、リニアバーストに対応した互換チップセットよりも、インテル製チップセットで普通に使用した方が速いとあっては、全く使う意味がない機能といえるだろう。
そして最後の特徴は、Windowsからは486として見えるという点である。大した問題では無いようにも思えるが、中にはPentium以降でないとインストールさえさせて貰えないアプリケーションも存在したため、かなり深刻な問題になっていたようだ。世界最速のCPUが「遅い」事を理由にインストールを拒否されるというのも、何とも皮肉な話ではある。
随分と長い前振りになってしまったが、最後にTOWNS用CPUという観点でこの6x86を見てみることにしたい。しかし残念なことに、このCPUはTOWNSではマトモに動作することはない。それが「TOWNSにおける6x86というCPU」について言える全てである。それ以上でもそれ以下でもない。実際に試したことは無いので正確なことは言えないが、ユニファイドタイプのL1キャッシュ周りがTOWNSとの相性問題を引き起こしているのだろう。Pentium搭載型ピュアTOWNSは、良く言えば非常に素直に、悪く言えば無難に設計されている。数あるPentium互換CPUの中で完全動作しなかったCPUは、後にも先にもこの6x86アーキテクチャのプロセッサだけである。こんなにも素直なTOWNSですら動かないのであれば、それはもうCPUの方に原因があると言わざるを得ないだろう。
それでも諦めきれないと言うCyrixフリークなTOWNSユーザー諸子、DOSならある程度動くことも予想されるのでダイブしてみるのも良いだろう。お薦めはしないが・・・。
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