仙丈ヶ岳紀行(秋の山)

 

1 機会

 眼下に広がるミニチュアの街並みや川面をこよなく愛し、そこに、心の安らぎと明日への活力を求める私にとって、予想外の出来事が起こることとなった。
 「ミニチュアの街並みも良いが、一度は眼下に雲海を眺めて見ろよ。」4人の山登りのベテラン(1人は清楚な女性、3人は逞しくも優しい男性)に、日本酒とウイスキーを前にした断れない環境で誘われて、仙丈ヶ岳(3,032.7m)に登ることに同意してしまった。

2 動機

 元々、筋力と体力のないことには絶対の自信を抱く私にとって、重い荷物を背負い、たぶん、喘ぎながら登ることとなる3,000m級の山々は、可憐で、清清しくキュートな世界を愛する私の最も苦手とするものであり、遠い異次元の世界であるとともに、この4人が、山小屋に泊まる人々ではなく、テントを張らざるをもっては山登りではないと考える本格派の人々であることから、同意はしたものの「困ったな」が真意ではあったが、愚かしい意地と、優しいお勧めにあい、結局初心者向け?の仙丈ヶ岳に挑戦することとなった。

3 装備品(個別用意)

 新米1人とベテラン4人のため、共通装備はベテラン4人が分担用意し、私は個別用意品だけを用意すればよいこととしてくれた。
 その用意品を次に掲げ、初心者の参考にしたいと思う。

品  目

品  目

品  目

品  目

着替え

洗面具

13

ちり紙

19

タオル

帽子

軍手

14

サンダル

20

雨合羽

時計

スパッツ

15

ザックカバー

21

シュラフ

テントマット

10

食器

16

ライター

22

水筒

ヘッドランプ

11

予備電池

17

新聞紙

23

筆記具

セーター

12

トレパン

18

ビニール袋

24

下山用着替え

 * 特記事項
 (1)雨合羽は安い物を買わないこと
 (2)記載していないが、「杖」が非常に役立った。
 (3)シュラフは、私の場合は寒がりなのでかなりな寒さに耐えるものにした。

4 装備費(個別用意関係)

 装備品はわかっても、実際、どの程度の費用が掛るかは現実問題として重要であるので、私の場合を次に掲げることとする。

                                (単位:円)

品  目

費 用

品  目

費 用

軽登山靴

17,500

ヘッドランプ

  2,070 

雨合羽

16,800

ロングソックス 

  1,800 

シュラフ

15,000

水筒 

  1,450 

ニッカポッカ

  8,240

コップ 

  1,300 

杖 

  4,200

食器

  1,200 

アンダーウェア1枚 

  2,800

スプーン、フォーク 

    310

スパッツ 

  2,790

 

  

ショートソックス2枚

  2,600

    計

78,060

* 特記事項
(1)ザック、ザックカバー、テントマットは借り受けた。
(2)一度きりと考えるならシュラフも借りることをお勧めする。
(3)水筒は、重量、嵩張り等を考慮して金属製でないものにした。(ただし、使い勝手は良くなかった。)
(4)仮に(1)や消費税を含め個別用意品をすべて整えると
約10万円となる。

5 登山計画

(1)1日目 21時静岡発(車) 0時広河原着(テント泊) 
(2)2日目 6時50分広河原発(バス) 7時15分北沢峠着(出発8時)
       12時30分仙丈ヶ岳着  夜 仙丈小屋付近(テント泊)
(3)3日目 8時仙丈小屋付近発 11時15分北沢峠発(バス) 12時30分広河原発

2日目 北沢峠(登り口 標高約2,000m)にて

2日目 馬の背ヒュッテ間近の分岐点から甲斐駒ガ岳を眺める

2日目 仙丈ヶ岳頂上にて(その1)

 

2日目 仙丈ヶ岳頂上にて(その2)仙丈小屋を見下ろす)

2日目 仙丈ヶ岳頂上にて(その3)

 

2日目 仙丈ヶ岳頂上にて(その4) 

 

 

6 感想

< お澄まし編 >

(1)仙丈ヶ岳からの眺めは、里山のメルヘンとは異なり心を圧倒する雄大で豪快なものである一方、頂きを自由に飛び回る蝶々
  の舞が神秘性と幽玄さを醸し出すとともに、瞬時にその美しさを覆う怜悧で気侭なガスの発生が過酷な自然を思い起こさせる
  ものであった。
(2)遠く下方に雲海を眺める自分を意識した時、思わず「良くここまできた」と自らに語りかけずにはいられなかった。
(3)山水の冷たさは格別であり、硬水のおいしさは言いようもなかった。
(4)高山植物の群落に会い、生物に多様性と適応力をもたらしさ偉大なるものにしばし感謝した。

< 本音編 >

(1)筋力のない私にとって、約10kgのザックの重みはかなり堪えた。登り始めて30分程で既に肩の痛みには閉口していた。
   ただし、肩当てをするか、もう少しうまく荷物を積み込めばそれほどでもないかもしれないとも思えた。
(2)標高差は実質1,000m程度(里山でも600m、700m程度のところもたくさんある)、時間で4時間半程度のため、
  体力的には余力はあった。
(3)予想に反して、仙丈ヶ岳全体(たぶん)がテントが禁止であったため「藪沢小屋」に泊まることとなった。ここでシュラフ
  を初めて使ったが割と寝心地が良かった。(なお、テントマットも寝心地を考慮して使うものだということを後で知った。)
(4)アウトドア(料理)の達人がいることから、夕食で「餃子」と「目刺し」をごちそうになった。なんとうまかったことか。
(5)翌日(3日目)は雨となった。雨合羽を着て下山した。ビニールの合羽と異なり着心地は良かった。
(6)北沢峠のトイレも準水洗であり、女性でも抵抗がないだろうと思われた。チップ制ではなく、料金をとっても良いと思われ
  た。
(7)良いリーダーに恵まれれば、そしてゆっくり登れば、初心者でも充分3,000m級の山々への登山が可能と思われた。
(8)里山には里山での、そして、3,000m級の山々では3,000m級の山々での、様々な発見が私を待っているような気
  がした。