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終わりに 劇場運動のこれから
終わりに 劇場運動のこれから 「劇場の一番の魅力は何ですか」という質問に対して、長年劇場運動にかかわってこられたあるお母さんは次のように話してくれた。「一番よいと思えることは、活動をやっていく中でさまざまな人との出会いがあり、その中で子どもも自分もかわってゆくのがわかること。大人にとっても自分が変わってゆくことを実感できるのは劇場のほかにはないと思う。」劇場運動に中心となって携わる人たちに話を聞いていて感心させられることは、その人たちの旺盛な学習意欲であり、子どもを取り巻く社会を見る目の鋭さであり、人とのつながりづくりの上手さである。活発な劇場には必ずこうした核となる人の存在がある。逆にいうならば劇場運動があったからこそこうした人々が育ってきたということである。市民がより豊かに表現・学習・交流すること、より文化的に生きることを目指すであろうこれからの社会において、このように自ら課題を設定し、学習し、行動する「自立した市民」を育ててきた劇場運動は市民にとっての自己実現のひとつの表れでもあるといえよう。「劇場は民主主義の学校」といわれることがあるが、(大人も子どもも)一人一人を大事にしながら、互いのかかわりの中で活動を創ってゆくことを通じて、自立した市民が育ち、市民文化が成熟してゆくことは、より文化的な社会を創ってゆく上で欠かせないステップではないだろうか。 1989年に国連で採択された「子どもの権利条約」には、その第31条で次のように規定している。 「1締約国は、子どもが、休息しかつ余暇をもつ権利、その年齢にふさわしい遊びおよびレクリエーション的活動を行う権利、ならびに文化的生活および芸術に自由に参加する権利を認める。 2締約国は、子どもが文化的および芸術的生活に十分に参加する権利を尊重しかつ促進し、ならびに、文化的、芸術的、レクリエーション的および余暇的活動のための適当かつ平等な機会の提供を奨励する。」(国際教育法研究会訳)(増山均『子どもの文化権と文化的参加』1995 p18) 「子どもの文化権」とも呼べるこの規定はわが国においても到底達成されたとはいいがたい。子どもが芸術、文化、余暇、遊び等の活動に参加する権利を明記したこの規定を現実のものとすることは、これからの市民と行政の努力にかかっている。30年以上にわたり「子どもの文化」に取り組みつづけてきた子ども劇場・おやこ劇場運動の実践と経験の積み重ねが今こそ必要とされているのではないだろうか。ここでの「文化」とは芸術のみならず教育、行政、まちづくり、人のつながりなど非常に幅広いものを含んでいる。運動を進めてくる中で成果として積み上げられたもの、課題として残されたもの、新しい試みとしての取り組み、その一つ一つから行政も、他の市民運動も、研究者も数多くの教訓や研究を引き出すことができよう。これからの社会の中で劇場の果たすべき役割は大きい。 |