第四章 劇場運動の可能性

2.一定の金銭的保障を確保することと、経営の視点をもつこと

劇場のなかでこれまで一定の金銭的保障をされてきたのは、専従事務局(ほとんどは月10万円程度)と運営委員(月1万円前後)である。しかしこれも「好きでやっていることだから」ということできちんと位置づけられていなかったり、予算的に成り立たないとして劇場によってはあまり保障されてこなかった。市民運動であるからには、無償で行うのは当たり前という思いこみもあったかもしれない。実際こうした無償の活動によって劇場運動がこれまで支えられてきたことは確かだが、組織のなかで一定責任を持って運営を進める人に対しては、やはりその責任に対して何らかの保障があってしかるべきではないかと考える。もちろん無償で活動する人が無責任だというわけではないが、お互いに「無償」であることに甘えてしまうという側面がありはしないだろうか。また、青年を活動の中に位置づけるとき、その活動に対して何らかの保障があるということは(もちろん一般のアルバイト並の保障などできはしないが)、全くの「ボランティア」である場合に比べて、活動に対するモチベーションも変わってくると思われる。
同じ理由で専従事務局に対してはそれを職業として成り立たせてゆくことを目指すべきである。現在劇場の事務局に補償されている金額は、そのほとんどはフルタイムの労働への対価とは成りえず、配偶者が別に仕事を持っている、もしくは家族をもっていない人でなくてはとてもやっていけないものである。全国の劇場の事務局のほとんどが女性であるということはその表れであるといえよう。しかしこれからの社会において、市民がより自分らしく、文化的に生きることを目指すとき、多少収入は低くとも理想をもって活動できる職業が用意されているということは非常に大きな意義をもつ。劇場の事務局という「職業」はその先駆けとなりうるのではないだろうか。
もうひとつ劇場運動のなかでこれまで決定的に欠けていたのが「経営」の視点ではなかったか。専門家がおらず、やむを得ないことと言えるかもしれないが、長期的視野に立って会員数の動向を見極め、収入に応じて活動方針を立てるということはあまりなされてこなかった。どちらかといえばその一年一年の行き当たりばったり的な運営であったところが多かったようである。最近の急速な劇場運動の縮小傾向にはこうした長期プランをもった経営の視点の欠如も原因の一つに数えられるだろう。


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