第四章 劇場運動の可能性

1.市民一人ひとりのニーズに合わせた活動を選択できる組織であること

これまで劇場は鑑賞活動と自主活動を二本の柱にすえ、全ての会員がそれぞれに関わることが理想とされてきた。しかし実際のところは鑑賞活動だけという会員がかなりの割合を占め、全ての会員に自主活動に関わるべきという理念を共有させることは、逆にそうした人々の劇場離れを生む結果にしかならない。ある程度はどの劇場も柔軟に対応していることではあろうが、多くの劇場では基本的に会員としての関わり方は一通り(毎月定額の会費を納め、全ての活動に「できるだけ」参加しましょうというもの)しか位置づいておらず、システムとしては非常に柔軟性を欠くものといえる。もう一度大本の理念である「子どもに豊かな文化を」というところに立ち返り、それに賛同する人なら誰でも参加できるようなシステム作りが必要だと考える。例えば「三島子ども文化ステーション」などで設けられている賛助会員という制度が一つであろうし、活動への参加の仕方も、鑑賞活動のみの参加、自主活動のみの参加などさまざまな関わり方が位置づけられていてこそ、「子どもと子どもを愛する全ての人が参加できる」組織となりうるのではないだろうか。理念を共有しながら、自分の時間的、経済的余裕や意欲、能力にあわせて関わり方を選択できるような組織のあり方は、より現代的な感覚にも適合しているように思われる。つくり手と受け手が固定化し、会員が二極分化する危険性は確かに否定できないところではあるが、意欲のもてないところで無理に活動をつくってゆくこともできまい。劇場としては関わり方の引き出しを数多くもつことが求められる。さまざまな人がさまざまな形で劇場への関わりを始めるとき、より広がりのある文化活動が生まれるのではないだろうか。
「一人ひとりのニーズに合わせた」というとき、子どもの関わり方も大きな問題である。特に現行の会員制度は基本的に家族単位で入会することになっているため、子ども自身が継続を希望していても、親の都合でやむを得ず退会というケースが往々にしてある。確かに教育機関ではないのだから、子どもだけ預けられてもということはある。しかし子どもの立場からすると、親の都合でそれまでの人間関係から抜けざるを得ないというのは非常に不条理なものに思われるし、地域の子ども集団づくりという劇場の目的からしても困ったことである。子どもだけでも会員となれるようなシステム作りはできないだろうか。少なくとも地域の自主活動においてはできるだけ間口は広く取ることが必要ではないだろうか。地域に住むのは劇場の子どもだけではありえない以上、劇場の子どもだけのコミュニティーにとどまっていては地域全体を変えてゆく力に乏しい。会員外の子どもたちも巻き込むような活動があってこそ、地域のより豊かな文化環境づくりに貢献できるのではないだろうか。


[前ページ]  [目次]  [次ページ]