第三章 新しい展開

II.和歌山西子ども劇場の取り組み

和歌山県和歌山市にある和歌山西子ども劇場では1993年から1998年にかけての急速な会員数の減少(900人から470人へほとんど半減した)を受けて、新しい組織作りに取り組んでいる。これまであった劇場の活動をあらためて整理し、それぞれのもつ意義を再検討しながら、組織的にもより活発な活動をつくってゆくことをめざしての改革を行っている。
その一つが、二本の柱の一つとされながらもややもすると軽く見られがちであった自主活動の見直しである。和歌山西子ども劇場ではこれを「遊び、創造表現活動」と名付け、その意義を再確認するとともに、より重要な活動として位置づけなおしている。
「子ども劇場が目的と掲げる“子どもたちの豊かな成長を創り出すこと”を実現していく上で、生の舞台芸術鑑賞はひとつの柱となります。もうひとつの柱に今、充実が求められる活動として、子どもたち自身が生活の中で、異なる世代とのコミュニケーションを発展させ自らを表現し多様な価値との葛藤を経験する場『遊び・創造活動』があります。ますますエスカレートする子どもたちの問題行動。破壊衝動・攻撃衝動をコントロールする力の弱さが指摘されていますが、これは心を豊かに育てる体験以外には解決できないと考えます。遊びや表現創造活動の中で『ハラハラ・ドキドキ・ワクワク・ハッ?!・ホッ・シューン』と心が動く体験をすることが、生の舞台芸術との出会いやいろんな人との出会いと重なりあって“生きる力”を根源から活性化させ子どもたちの豊かな成長を保障することにつながるのです。」(和歌山西子ども劇場第15回全国大会資料より抜粋)

具体的には鑑賞例会を年3回に減らし、中身の充実を図るとともに、「遊び創造活動」に予算をとることや、子どもの発達のみちすじをふまえた活動を、そのそれぞれに専任スタッフを置き、専門家のアドバイスを受けながら行ってゆくということが提案されている。子ども年齢、学年に応じてどのような活動が必要か、それによって何が得られるのかということを体系化し、そこにこれまで自主活動として行ってきた子どもキャンプや中学生交流会などの行事を位置づけることで(例えば中学生ならどのような活動が必要か、それに対して劇場ではどんなことをしてゆこうとしているか、ということを各成長段階ごとにまとめている)、より外に向かってアピールできるものになっている。
「やりたいものがやっている活動」「やってみなくてはそのよさはわからない活動」といわれがちだった自主活動だが、「遊び・創造表現活動」として体系化することでより客観的な評価をしやすくなり、活動の重要性も明確化されていることは注目すべきことである。これまでの劇場の中では、何かにつけて個々の実感や、体験談として語られることが多く、それは会内では共有され、わかりやすいものであっても、なかなか外に向かっては伝わりにくいものだったということが否定できないからである。
もうひとつが運営体制の改革である。これまでの運営委員会方式のいきづまりがここでも背景にある。運営委員の負担が大きく、会議にもなかなか集まれない。すると自分で納得していないのに結果だけが降りてくることになり、これが人の動きを行き詰まらせているという反省があった。運営委員会を地域の会員の声をすくうブロック代表者会議と、実際に活動を企画しつくってゆくスタッフ会議とに分け、より活動をつくることに集中して、フットワークの軽い組織へと改正した。また、スタッフ会議のメンバーには月1,2万の保障をし、さらにここに青年も加わることで、より活発に活動しうる体制ができたという。金銭的保障と青年層の関わりという点は、これからの劇場運動にとっても重要なキーワードとなるのではないだろうか。


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