第二章 劇場運動の今日的課題

III.会員数の減少

全国的な会員数の減少は、劇場にとっても大きな問題である。いくつかの劇場が、活動を休止したり、隣り合った劇場と合併したりして姿を消している。また活動している劇場の中でも経済的に苦しくなり、例会の規模や回数を縮小したり、専従事務局を維持できなくなるということがおこっている。
原因としてはいくつかのことが考えられるが、一つには出生率の低下による子どもの数の減少があげられる。子どもの数が減るにつれて、劇場の会員も減るということはある意味やむを得ない問題である。しかし会員数の減少の率は子どもの数の減少の率を上回っており、それ以外にも原因があることを示している。劇場の関係者が口を揃えるのは「子どもが忙しくなってきた」ということである。塾や学校のクラブ、地域のリトルリーグや習い事などが子どもを忙しくさせており、「例会にも参加できない」とやめていくケースは多い。例会だけは参加できても、自主活動まではとても参加できず、子ども自身、劇場への魅力を失い簡単にやめてしまうということもある。更に大きいのは入会者の減少である。子どもが大きくなるにつれての退会は以前からそれなりの数があったが、それを埋めるだけの入会者がいないということが言われている。劇場運動が子どもを持つ親にとって必ずしも魅力あるものではなくなってきたということが言えるだろう。
会員数減少の原因として考えられるものにもう一つ、一般市民の舞台芸術鑑賞機会の増加がある。「子どものために豊かな文化を」として会費を出し合い、舞台芸術の鑑賞機会を作るという活動は、そもそもそうした機会がまれであった時代や地域にとっては大変魅力あるものだった。しかし今日、特に都市部においては芸術産業の発達とともに芸術鑑賞の機会も増加し、必ずしも劇場運動によらなくても、子どもに生の舞台を見せてやることが容易になっている。しかも確実に自分の観たいものだけを選んでみることができる。多少割安ではあっても、劇場を鑑賞団体としてのみとらえるならば、わざわざ入会するメリットに乏しいということになる。
もちろんこうして鑑賞できるのは産業として成り立っている、いわば商業ベースに乗った作品であり、創造団体であって、いわゆる児童演劇というものはほとんど含まれない。児童演劇中心の創造団体の多くは現在においても厳しい経営を迫られているし、公演も学校公演でなければ劇場のような市民が中心となった鑑賞活動に頼らざるを得ない状況がある(資料C参照)。したがって鑑賞機会の増加が即、劇場運動の存在意義を失わせるものとは言えない。しかし、だからこそ劇場は商業演劇鑑賞との違い、自らの存在意義を明確にしてゆく必要がある。少なくとも「子どもに生の舞台を」というキャッチフレーズだけで人を集めることができた時代からは、明らかに変わってきたということが言えよう。


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