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 【武田信玄】 創刊号
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 〔第一幕 第一場〕

 甲斐国躑躅が崎館、領主の間
 武田信玄、高坂昌信、真田昌幸登場

 武田信玄「ようやくわしも隠居できるというものだ」

 高坂昌信「お館様にはまだまだこの武田家のために働いてもらいたいと思って
      おりまするが」

 武田信玄「まぁ、そういうな。わしももう53だ。甲斐だけでなく、信濃も支配
      下においた。義信も勝頼も立派な武将に成長した。幸も美しくなっ
      た。この三人にこの国をゆずってわしも残りの余生を楽しく過ごし
      たいと思ったまでよ」

 高坂昌信「しかし、京への上洛はいかがいたすおつもりで…」

 武田信玄「くどい! もう決めたことだ。すぐに義信、勝頼、雪を呼んでこい」

 高坂昌信「…かしこまりました」

 武田信玄「昌幸、お前は上杉景虎と北条氏政をつれてくるのだ」

 真田昌幸「はっ」

 義信、勝頼、雪が高坂昌信とともにやってくる。

 武田義信「父上にはいつまでもご健康であらせられ祝着至極でございます」

 武田勝頼「父上あっての武田家なればこれからも我々をお導きいただければと
      思います」

 武田信玄「うむ、任せておけ。といいたいところだが、わしも年だ。すでに出
      家して仏道に入った身。今度は本当に俗世から身を引こうと思って
      おる」

 武田義信「それは本当でございますか」

 武田勝頼「どうか、お考え直してください」

 武田信玄「もうすでに決めたことだ。そこで、この国をお前たち三人に分けた
      いと思うのだが、それには一つだけ条件がある」

 武田義信「それは何でしょうか?」

 武田勝頼「父上の命なればどのようなことも従いたいと思います」

 武田信玄「わしは国を統治する重責から離れ、お前たち三人の国をそれぞれ回
      り、余生を楽しみたいと思っている。そこで、わしは家臣を100人
      ほど連れ、滞在したいと思うのだが、その際の滞在費をお前たちに
      負担して欲しいのだ。国を与えてしまった後にはわしには収入源が
      ないからな」

 武田義信「そのようなことご心配なさらないでください。父上のためならこの
      義信どのようなことも致す所存なれば、きっと父上にはご不満のな
      い、快適な生活をお約束いたします」

 武田雪(傍白)「雪は何ていえばいいの。ただ心に思うまま話そう」

 武田信玄「うむ、その言葉に偽りがないことを願うぞ。では、領土を分け与え
      る。義信には武田家が代々受け継いできたこの甲斐の国と武田家重
      代の家宝、御旗を授ける」

 武田義信「ありがとうございます。武田家の名誉をさらに広めるよう努力して
      参ります」

 武田信玄「頼んだぞ。では、勝頼、そなたは約束を守ってくれるか?」

 武田勝頼「もちろんでございます。諏訪大明神に誓い約束はお守りいたします。
      兄上に劣らぬ優雅な暮らしができるようこの勝頼全力を傾けます
      る」

 武田雪(傍白)「次はいよいよ私の番。私の正直な気持ちを話せばいいだけ」

 武田信玄「それはうれしいぞ。では、勝頼には信濃国と武田家重代の家宝、楯
      無しを授ける」

 武田勝頼「ありがとうございます。この勝頼身を粉にして働き、父上には何の
      苦労もおかけいたしません」

 武田信玄「うむ、それは頼もしい。さぁ、最後、わしのかわいい雪よ。お前は
      さっきから黙っているが、どうだ、約束は守ってくれるか?」

 武田雪「……」

 武田信玄「ん? どうした、なぜ黙っている?」

 武田雪「私はその約束を守ることができません」

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