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【中国英雄伝】 第12号
「第12話 藺相如伝2 〜藺相如登場〜」
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「どうして、藺相如が使者として適任なのか?」
「実は、かつて私が罪を犯して、ひそかに燕(えん)の国へ逃亡しようとくわ
だてたことがございます」
「そのようなことがあったな」
「はい、すると、家来の相如が私をこう言って引き止めたのです。『ご主君はど
うして燕王を知っているのですか?』と」
「ふむ」
「そこで、私はこう答えました。『かつて私が大王のお供をして、燕王と国境で
会った折り、燕王は私の手を握って、願わくは友人として交わりたいと言っ
たことがあり、だから私は燕の国に行こうと思うのだ』と」
「それで、相如は何と答えたのだ?」
「彼はこう言いました。『ご主君、それは誤解されています。燕の国は弱く、趙
の国は強い。だから、燕王としては趙王に寵愛されているからこそ、ご主君
と友人として交わりたいと言ったまでのこと。今、趙王の寵愛を失ったご主
君が燕に出奔しても、燕は趙を恐れてご主君をかくまらないどころか、きっ
とご主君を縛って趙に送るでしょう』と」
「なるほど」
「さらに彼はこう続けました。『ここは、いっそ肌を脱いで処刑台に伏し、趙王
に罪を請われたらいかがでしょうか? そうすれば、幸いに許されるかもし
れません』と」
「だから、お前はあのようなことをしたのだな。あのときにはあまりにも潔い
態度にわしもお前を許したのだが、そうか、全ては相如の策だったのか」
「はい、そうなのです。そして、私は大王に許されました。それ以来、私は藺
相如のことを、ひそかに勇気があり、智謀もある者と心得ました。だから、
彼を使者に任じられれば、きっと使命を果たすと思います。
「うむ、そうだな。では、すぐに藺相如を呼んで来てくれ」
「かしこまりました」
こうして、王は藺相如を呼び、引見して話をした。
「秦王は15城をもって、わが和氏の璧と交換したいと言ってきている。璧を
やったほうがいいだろうか。藺相如よ、お前はどう思う?」
「秦は強く、趙は残念ながら弱いです。我々としては与えないわけにはいかな
いでしょう」
「そうか。しかし、璧をやって、城をもらえなかったらどうする?」
「秦が城を代償として璧を求めているのに、聴きいれなければ非は趙にありま
す。しかし、趙が璧を与えたのに、代償の城をくれなければ非は秦にありま
す。この二策を比べるに、やはり秦の主張を聴きいれて、非を秦に負わせた
ほうが得策でしょう」
「分かった。そこで、誰か使いに適した者はいるだろうか?」
「王よ、もし、どうしても適当な者がいないのであれば、どうか私に璧を預け
て使いさせていただきたいと思います。」
「そうか、では頼むぞ」
「かしこまりました。もし、城が趙の手に入れば、璧を秦に置いてきますが、
もしも手に入らないならば、私は璧を全うして趙に送り届けてみせます」
こうして趙王は、藺相如を遣わし、璧を捧げて西のかた秦に入国させた。
●参考文献:「史記」筑摩世界文学大系7 小竹文夫 小竹武夫訳