第18話 桶狭間の合戦1〜序章〜

 「尾張国平定祝着至極でございます」

 「うむ」

 「これでやっと一安心できますな」

 「申し上げます!」

 「何だ」

 「駿河の今川義元、鳴海に侵入しました!」

 「何? 真か!」

 「はっ、確かにございます」

 (これはおおごとになるぞ)

 「いかがいたしますか?」

 「うむ、鳴海の城の防御を固めると同時に、水野、山口、柘植、真木、判は丹
  下の古屋敷をとりでにするのだ」

 「はっ!」

 「善照寺には佐久間右衛門尉、左京助、南中島には梶原」

 「かしこまって候!」

 「丸根山には佐久間大学、鷲津山には玄蕃、飯尾」

 「ははっ!」

 「特に丸根、鷲津の両砦は、鳴海、大高を分断する重要な役目。最も厳しいい
  くさになるが頼むぞ!」

 「お任せくだされ!」

 「それでは、皆の者頼むぞ!」

 「かしこまりました!」

 ………………………………

 永禄三年(1560)五月十七日。

 「お館様! 今川義元、沓懸に着陣!」

 「そうか」

 「お館様! 丸根、鷲津の佐久間殿と玄蕃殿から使者が参りました!」

 「うむ、ここへ通せ」

 「はっ」

 「状況はどうだ?」

 「今川方は明日十八日夜にも大高の城へ兵糧を入れ、援軍が来ないよう、十九
  日朝、潮の干満を考慮し、必ず丸根、鷲津両砦を奪いとりにかかるに違いあ
  りません!」

 「そうか、ご苦労、しばし休め」

 「はっ」

 「お館様、いかがいたすおつもりか」

 「うむ」

 「お館様!」

 「まぁ、急くな」

 「何を悠長な! 今川はすぐそこまで来ておるのですぞ!」

 「それよりも米の出来具合はどうだ」

 「今はそのような世間話をしている場合ではござらん。一体どうするおつもり
  か!」

 「もう夜も更けたことだから、みな帰宅せよ」

 「な、なんですと!」

 「この一大事に何も決めずに帰れとは!」

 「お館様、ご指示を!」

 「さぁ、もう帰るがいい」

 「!!」

 …………………………………

 「お館様のあの態度は何だ!」

 「運勢が傾くときは日ごろの知恵もくもるというが、こういうことをいうので
  あろうよ」

 「ふん、まったくもってふがいない限りだ」

 「ふぅ、これで織田家もおしまいか…」

 ……………………………………

 十九日明け方

 「お館様! 佐久間殿、玄蕃殿から注進!」
 
 「どうした」

 「丸根、鷲津ともに敵が攻めかかってきた模様!」

 「そうか」

 すっくと立ち上がり、

 「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり。一度生を得て滅せ
  ぬ者のあるべきか」

 敦盛を舞う信長。

 「法螺貝(ほらがい)を吹け! 武具を寄こせ!」

 「はっ!」

 ブォォォォォォォォォォ

 カチャカチャカチャ

 「めし!」

 「はっ!」

 立ったままめしをくらう信長。

 「岩室、長谷川、佐脇、山口、賀藤!」

 「こちらに!」

 「目指すは熱田神宮! 遅れるなよ!」

 「かしこまって候!」

 「いざ、出陣!」

 「おぉ!」

 主従6騎、熱田までの三里(12キロ)をあっという間に駆け抜けた。

 <参考文献>
 ニュートンプレス:信長公記(太田牛一:原著 榊原潤:訳)
 角川ソフィア文庫:信長公記(奥野高広、岩沢愿彦 校注)
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 【キリのコメント18】 

 *このページは信長公記との違いや、さらに詳細な説明が書かれています。
  お時間に余裕がございましたら、ご覧ください。

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