<第44話 ある愛の物語3〜サホビメの死〜>

 「いまだ!」

 兵たちが赤子を受け取ると同時にサホビメの髪の毛をつかんだ!

 「あっ!」

 しかし、サホビメの髪の毛は抜け落ちてしまった。
 それならと、手に巻いてある玉の緒をつかもうとする。
 
 ブチッ

 しかし、手に巻いた玉の緒が切れてしまった。
 
 さらに、サホビメの服をつかもうとする兵士たち。

 「ややっ!」

 なんと、サホビメが着ていた服は触った瞬間に破れてしまった!

 こうして、御子を受け取ることはできたが、サホビメを捕まえることはできな
 かった。

 「どうだった?」

 「申し訳ございません。任務に失敗いたしました」

 「なぜだ!」

 「皇后様の髪は自然に落ち、手に巻かれていた玉の緒もすぐに切れ、着ていた
  ものもたやすく破れてしまい、つかまえることもかなわず、御子だけしかつ
  かまえることはできませんでした。」

 「…そうか。」

 しかし、ヒメを連れ戻すことができなかった垂仁天皇は、悔しさと恨めしさの
 あまり、玉作りの人々を憎んで、彼らの土地をみな取り上げてしまった。

 「ヒメ! 聞こえていたら返事をしてほしい。すべての子の名は、必ず母親が
  名づけるものである。この子の名前は何とすればいいのか?」

 「今、この子は火が稲城を焼くときに火の中で生まれました。だからその御子
  の名はホムチワケノミコ(本牟智和気御子)と名づけましょう」

 「どうやって育てればいいのか?」

 「乳母をつけ、産湯を使わせる役の大湯坐(おおゆえ)、若湯坐(わかゆえ)を
  定めてお育て申し上げてください」

 「そなたが結び固めてくれた私の衣の下紐は、一体誰が解いてくれるのか?」

 「丹波のヒコタタスミチノスイノ王の娘の、エヒメ・オトヒメは、貞節な女性
  ですから、この者をお使いください」

 どうしても皇后が戻って来ないのが分かった天皇は、ついに命令を下した。

 「稲城に火を放て!」

 「ははっ!」

 「…ヒメよ」

 こうして、サホビメも燃えさかる稲城の中で兄、サホビコに従って亡くなった。
 
 <参考文献>
 講談社学術文庫:古事記(上)全訳注(次田真幸)

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 【キリのコメント44】

 *このページは古事記との違いや、さらに詳細な説明が書かれています。
  お時間に余裕がございましたら、ご覧くださいませ。 

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