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©Toshio Koide 2001 (August, 16th) マルチホップ無線ネットワークにおけるルーティングプロトコルの研究小出 俊夫 (創価大学大学院 工学研究科) 1. はじめにこのページでは、小出俊夫が大学院で研究している研究内容の概要を示します。技術的な内容はかなり省略しています。 近年の携帯電話の爆発的普及により、「場所」に制約されず、電波の届く範囲内で、どこでもインターネットに接続することができるようになってきました。また、携帯電話やPHSの「位置情報」を用いたアプリケーションが増加してきています。例えば最寄の基地局の緯度経度情報を元にして、サーバに蓄えられた地域密着型の情報(天気、交通情報、レストランやホテル検索など)を取得し表示するという例はすでに実現されています。また、位置情報を用いた救急サービス、無事故を支援するシステム等、いろいろな応用例が考えられています。 そこで、本研究では、各種の「位置情報を用いた」アプリケーションの実現を、より理想的な形で行えるようなシステムを提案し実現することを目標としています。 例えば、地域情報の配信の例を考えます。現在では、地域情報を専用サーバに登録しておき、ユーザが情報を知りたいときにサーバにアクセスすると、携帯端末の緯度経度情報が送信され、その地域の情報が検索されてダウンロード、表示されます。 しかしこれはいかにも携帯電話会社が「うちの回線を使ってください」と言わんばかりのシステムになっており、実際の通信回線上のデータの動きではなく、肝心の「情報」の動きを追ってみればわかるように、「地域」→「サーバ」→「地域」と、わざわざ遠回りさせられているという構図になっています。 絶対にこういうシステムでなければならないのでしょうか。その地域毎での「自主的な情報の配信」はできないのでしょうか。それをできるようにするためには、携帯電話やPHSとは違う、第二の無線ネットワークが必要になります。 本研究の目標は、実はもう一つあります。それは、「課金の心配のないモバイル接続」です。「無線による草の根ネットワークが容易に構築可能となる環境の提供を!」これが、第二の目標です。誰でも自由にインターネットに「無料」で接続できる!そんな夢のような世界が実現できたらすばらしいと思いませんか。 この二つの目標を同時に実現できる技術、それを考えるのが、小出俊夫の研究です。 2. マルチホップ無線ネットワークそれが実現できるのは、どうやら「マルチホップ無線ネットワーク」しかなさそうです。これは一般的に使われている技術用語ではないので、簡単に定義しておくと、「各ノードがルータの機能を持ちデータを転送することができ、直接的に通信できないノード同士も、間にはさまれたノードを経由して通信が可能な無線ネットワーク」のことです。 すなわち、目に見える「通信回線」というものを全く使用せずに通信が行えるネットワーク、と考えると良いかもしれません。しかし、いくらなんでもそれで日本全体をカバーしようというのは大変です。中継が何十何百となってくると、データの転送はかなり難しくなってきます。ですから、大体、十数回程度の中継が行われるような規模のネットワークとして考えると良いでしょう。距離にすると、大体1〜3kmぐらいの範囲です。 また、もちろん電話回線を使っているわけではないので、料金は一切かかりません。イメージとしては、トランシーバで伝言ゲームをやっているような感じです。地域情報の配信には、このようなネットワークがもってこいだと考えます。わざわざ専用のサーバをおく必要はなく、それぞれの商店等が自主的にそのネットワークに参加して情報を流すだけで、「無料で」情報のやり取りができるようになるのです。 さらに、そのネットワークの中の「誰か」が、インターネットに接続したとしましょう。すると、そのネットワークはインターネットへ接続されたことになります。その「誰か」が料金を負担するだけで、そのネットワークの人々はみんな無料でインターネットにつなぐことができるようになるのです。 3. 問題点今すぐにでもこのようなネットワークを作れるような気がしてしまいますが、実際にはものすごくたくさんの問題点があります。 まず、移動端末は「どうやって相手を探すのか」という問題があります。携帯電話ならば、中央のサーバに誰がどこにいるという情報を常にもっているので、電話をかけることができます。しかし今まで話してきたようなネットワークには「サーバ」がありません。つまり誰がどこにいるという情報は分からないということです。 さらに、実際にこのネットワークが稼動し始めた時の問題があります。これは技術的な問題ではありません。中央集権的なサーバが存在しないということは、誰がどのような情報をやり取りしているのか全く分からないということです。また、良いことでも悪いことでも、何らかの応用例が考え出されたら、それが普及するのを食い止める手段がないということです。 このネットワークを作るのは、携帯電話会社などではなくて、各個人個人だからです。みんながいい人であるという前提でネットワークを作っていくと大変なことになります。犯罪の温床になりかねない、そういうネットワークができてしまうかもしれません。 他にも技術的、倫理的にいろいろな問題があります。これらを解決する方法をいくつも考えていますが、それはここではスペースの関係で省略します。 4. 研究の目的どのようなサービスを実現させるか、どのようにそのサービスを展開していくかは他の人々に任せるとして、小出俊夫の研究の目的は、そのようなネットワークのアーキテクチャを構築することです。 具体的に言うと、そのようなネットワークを実現するのに最適な「移動量」と「電力消費」を考慮したルーティングプロトコルの研究です。 商店などにおかれる固定ノードは、電力の心配がないため、積極的に中継ポイントとして用いることができます。しかし、携帯端末などの移動ノードは、電力に限りがあります。また、非常に移動が激しいという特徴があり、中継機能を持っているにしても、できるだけ中継経路に含めないという必要性があります。 5. 実現後の世界は5.1 地域情報の検索例えば、とてつもなくラーメンを食いたくなって、近くのラーメン屋を知りたくなったとき。現在は、携帯電話などで検索するサービスがありますが、提案する無線ネットワークを使うと、それぞれのラーメン屋「が」無線アクセスポイントを設置し、商店が自分自身で、自分の店の宣伝をすることができます。もちろん、料金は無料です。商店と直接通信するか、間に誰かが挟まって中継してくれるからです。マルチホップ無線ネットワークで、ホップ数(距離に相当)を絞って検索すると、距離を制限して検索することができます。 「看板」による宣伝から、「無線ネットワーク」による宣伝へのシフト!…ができたらいいな。と思います。宣伝にかかる費用が無線の端末を買って置く費用だけでよいとしたら…こんなにいいことはないですね。 現在、これに似たビジネスが考え出されていますが、情報の配信範囲は、全て「アクセスポイントから直接通信できる範囲内だけ」に制限されています。 5.2 無料でインターネットこの無線ネットワークの中で、誰かがインターネットに接続して、データの転送を許可してくれたならば、無線ネットワークに接続している全ての人が、インターネットに接続されたことになります。もちろん、料金はかかりません。 果たして、そのような「インターネットに接続してくれる人」はいるのでしょうか。それを可能にするビジネスモデルを考えると、爆発的に普及するでしょう。ちなみに、僕は3つぐらい考えていて、実現できそうだな…と思っています。 これも、似たようなビジネスが始まっていますが、無料ではないものがほとんどです。また、それぞれのアクセスポイントが直接インターネットに接続しており、「インターネットに接続しないアクセスポイント」のようなものは存在しません。僕が提案するネットワークではそれが許されるので、太陽電池で動くようなアクセスポイントを置いておけば、アクセスポイント同士が無線で通信しあい、ほとんどケーブルのいらないネットワークが出来上がるはずです。敷設費用がほとんどかからないのが、最大の利点です。 5.3 恋人探し冗談で考えたアプリケーションですが、かなりの反響があったので、ここでも書きます。恋人がほしい人は、自分の携帯端末に「恋人がほしい」という設定をしておきます。もちろん、自分の性別も設定しておきます。あとは、街中を歩くだけです。 しばらくして、フラグが立った同士(もちろん異性)の携帯端末が接近すると、反応しあって、女性側には相手の情報が出てくるようになります。女性は相手を「生身の人間」として遠目で確認して、良さそうならインスタントメッセージ(チャット)使ってコンタクトをとったり、メールを書いたり、電話することができます。 本人を実物で見ることができるということ、男性側からはなにもできず、アクションがくるのを待つというところがポイントです。 5.4 交通事故の未然防止まじめな話もあります。この技術を使えば、かなりの交通事故を未然に防止することができます。現在は、電光掲示板による警告や、歩行者を照らすライト付きの横断歩道等で、歩行者の存在、車両の存在を知らせていますが、十分とは言い切れません。 このネットワークを使えば、車側と歩行者側双方への、接近情報の提供をいつでもどこでも行えるようになり、しかも、道路になんらかの情報をもった発信機を埋め込む等して、高度な高齢者や障害者への行動支援が行えるようになります。 また、実際に事故が起こっても、事故車両による追突事故(二次災害)の防止にも役立つと考えられますし、事故と同時に救急センターに通知をしたり、近くを歩いている人に助けを求める緊急情報をブロードキャストするということも考えられます。 5.5 その他そのほかにも色々と応用例は考えられます。会社、会議場内等では、資料配布、名刺交換等が簡単に行えるようになり、家庭内では、一つの携帯端末を「カギ」、「テレビのリモコン」、「エアコンのスイッチ」、「家の電話の子機」などとして利用することができます。考えれば考えるほどいろんなことができそうだ!というのが、このネットワークの面白いところだと思います。 |
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