小出俊夫の研究
このページでは、私が研究していることについて、少しずつ公開していこうと思います。また、個人的備忘録としても使おうと思っています。
小出俊夫の目指す研究
「じゃあ結局、あなたは何のために研究をしているの?」
と、研究に行き詰まったり悩んだりするたびに、自分自身に問いかけることにしています。「何のため」をいつも問うという作業は、研究者が一番忘れてはならない作業です。なぜなら目的を失った研究はとんでもない方向に暴走する危険があるからです。
現在私が行っている研究の目的は、ネットワーク上で障害が発生したときに速やかに迂回ルートを張ってフローが途切れないようにすること、大量のコンテンツをもっとスムーズに転送できるようにすること、ネットワーク上のトラフィック量を均一に分散させて予測不可能な急激なトラフィックの変動に備えることなどです。
それらの目的を達成するためには、課題となる問題を解くためのアルゴリズムやプロトコルの構築を行う必要があります。単純に思いついたアルゴリズムを用いてもいいのですが、そこで、グラフ理論や、組み合わせ最適化に関する理論や、計算量理論などの数々の理論を駆使し、理論的に保証された、堅固で効率的なアルゴリズムの構築を目指します。また、得られた問題の性質を吟味するうちに、新しい理論を構築することもあります。
すなわち、理論的研究をするのは堅固で効率的なアルゴリズムを構築するためであり、そのアルゴリズムを構築するのはネットワークで起こっている諸問題を解決するためです。では、「ネットワークの諸問題を解決するのは何のため?」なのでしょうか。「儲かるから」というのも確かに一つの理由かもしれません。しかし儲けることが研究の目的であるというのは少し悲しいです。
私が現在行っている研究の目的はすべて、「ネットワークのユーザをハッピーにすること」です。会社のためだけに研究をするつもりはありません。これらの研究は確かに会社に利益をもたらすかもしれませんが、それはユーザが望んでいることだからお金が動いて結果的に利益が出るのであって、本質はネットワークを利用する人々の欲求にあるのです。
しかし、まだまだ「ネットワークのユーザをハッピーにする」という目的は本質的ではないのかもしれません。今後、情報通信ネットワークにおける技術はさらに進歩するとは思いますが、いつまでもそれが世界的に研究すべき対象でありつづけるかというと、それは疑問です。つまりネットワークは本質的ではありません。当たり前の結論になってしまいますが、「世界の人々をハッピーにすること」が本質なんだろう、と思うのです。ネットワークはそのための手段に過ぎません。
まとめると、すなわち「人々をハッピーにする」という大前提を忘れずに高い理想を掲げつつ、まだ誰もやっていない、自分自身もワクワクするような研究が、小出俊夫の目指す研究です。
研究内容概要
| タイセットグラフ理論/タイセットフロー理論 |
タイセットグラフ理論は、グラフ上におけるタイセット(ループにおける枝の集合)の組み合わせに関する理論です。ネットワークに応用すれば、ノード・リンクの障害回避を実現することが可能です。
タイセットフローは、タイセットグラフ理論により構築されたタイセットの組の上に成り立つ理論で、適切な評価関数を設定することにより、フローの問題に帰着できるさまざまなネットワークの問題を解くことができる統一的な理論です。たとえば最大フローや負荷分散に応用することが可能です。 |
| メタ情報配信ネットワーク、MID-Net (マルチホップ無線ネットワーク) |
マルチホップ無線ネットワークが実現すれば、PDAやノートパソコンといった機器がお互いにつながり、目に見えないネットワークができあがります。すでに実現している無線LANのアドホックモードなどとの違いは、直接通信できないデバイス同士が、他のデバイスを経由してデータの送受信が可能である点です。情報発信者が全体のノード数に対して比較的に少ない場合において、効果的に情報をやり取りできるネットワークアーキテクチャ、MID-Netを研究しています。このネットワークを使うと、電磁環境の改善、バッテリー消費の公平化などを図ることができます。 |
| コンテンツ・デリバリー・ネットワーク |
現在インターン中のNEC中央研究所で行っている研究です。人気のあるコンテンツは方々からたくさんのアクセスを受けますが、あまりにアクセスが集中すると、サーバやその近辺のネットワークに負荷がかかり、ユーザが思うようにコンテンツを得ることができなくなってしまいます。そこで人気のある(でそうな)コンテンツをあらかじめ、コンテンツの要求の高そうなエリアにコピーしておくことで、トラフィックを分散させます。そうすることですべてのユーザがストレスなくコンテンツを得ることができるようになります。私はそのネットワークにおけるユーザとサーバの組み合わせ、ユーザ・サーバ間の経路、ミラーリング先の決定などについて理論的見地から研究を行っています。 |
この先研究したいこと、作ってみたいもの、興味のあること
- おじいちゃん・おばあちゃんのための実世界指向インタフェース。お年寄りでも直感的に理解できるインタフェースを作りたい。使っていて気持ちいい、見た目かっこいいインタフェースを。やっぱ、脱デジタル、がテーマかな。
- レゴによる家電のネットワーク化。楽しみながら家電を組み合わせられる。バックボーンはEthernet、ブロックで回線が作れて、無線LANブロックを使って離れたブロックともつながる。時計、カメラ、コンセント、MD、ADSLモデム、電話…などのモジュールがブロックでつなげられて、お互いに「情報(コンテンツ)」、「操作」、「お金」などにより意味的につながる。そのうちAIBOがコンセントブロックにつながった電灯をテレパシーで点けてくれるかも。
- コンピュータサイエンス一般。実はまだまだ未知の部分の多い、この刺激的な分野に取り組みたい。コンピュータにできること、できないこと(アルゴリズム、計算量理論)。進化とはなにか。人間の意識とは何なのか。考えるってどういうとだろう。機械が柔軟な適応能力を得るためには。情報通信ネットワークと人間の脳。複雑系…。ともかくそういったいろんなものをひっくるめた統一的理論的研究。なんだか哲学っぽくなってしまいそう。そもそもここまでくるとコンピュータサイエンスという言葉は適切ではないかも。コンピュータ(というか、数学?)の側面から自然現象の本質に迫ってみたい。
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