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一台の、何気ないワープロ意外と近かった、有名企業高校1,2年になったときのこと。我が家でワープロを買うということになった。何気なくNECのワープロを買ったが、こいつが僕の考え方を変えさせてしまうとは、その時は思ってもいなかった。 その中に入っていたユーザー登録の葉書とは別に、しばらく使ってみてから感想を書いて送ってくれ、という葉書も入っていた。僕は感想というより、日頃つかっていて使いにくいなーと思うことを文句つけて、3ページぐらいの紙に書いた。でもそれではあまりに失礼だ、と思ったから「こう改善してください」とそれに2枚ぐらい付け足して書き、封筒に入れて出した。 別に何も見返りは期待していなかったが、何と販売推進部の課長直々に返事が来たのだ。はっきり言って、びびった。NECなどという大企業になると、さすがに返事など返ってこないと思っていた。この時ほどNECが身近な存在として認識できたことは無かった。 手紙のやり取りは続き、ついにそして、また同じように改善すべき事を書いて送った。そしたら、また返事が返ってきた。テレホンカードもいただいた。やっていて、とてもやりがいがあった。 そうこうしてある日のこと。「直接会ってお話を伺いたい」と手紙が来たのだ。飛び上がってしまった。手が震えた。でも僕は話があまりうまくないし、しかもあまりにいきなりの話だったから、なんとなく断ってしまった。しかし数ヶ月後、このチャンスを逃すわけにはいかないと、僕から「会っていろいろ話がしたい」と手紙を送ったところ、直接電話をくださって、「すぐにでも来てください」とのこと。友達を連れて、行くこととなった。 高校生だって、やればできる!この事を通して、高校生だってやる気さえあれば、大手企業に認められることだってありえるんだということを学びとった。無理だと思わずやってみる、この事は僕にとって、今でもすごい自信となって存在している。まさに真剣は不可能を可能にするのだ。 そうして、NECのワープロ販売推進部に行くことになった。でも、前のK課長は、つい最近別のところに移られたそうだ。以下は、そのときに話されたことを書いたものだ。別に録音をしたわけでも無いのに、ここまで鮮明に覚えられるものか、と自分でびっくりするぐらいだった。 「製品開発などをしている人達は、与えられた仕様書どおりに自分のプログラムだけを作るからとても視野が狭くて、ある人の担当した箇所のプログラムは飛び抜けていいんだけど、他のある人の担当した箇所のプログラムは悪いとかなるでしょ。そうすると商品全体としてのバランスはとても悪くなっちゃうんだよね。」 「これからは、広い視野で物事を見ていかなくてはならない。実はK課長はもともとはすごく固い方で、僕なんかの意見に耳を傾けてもくれなかった。でも、営業にうつってから、仕事柄だんだん性格が砕けてきて、だんだん聞いてくれるようになったんだよ。そこに小出くんの意見に目を通されて、それで、ものすごく会いたがっていたし、絶対に話す場を設けなさいと言っていた。そんな方が他の所へ行ってしまって、かなりの損失だったと思います。」 「これからは、このように、いろんな人と話していく事が大切だと思う。やっぱり内側の方にいると、どうも正しい見方が出来ないのではないか、と思うんだよね。本屋でいろんな雑誌を見るんだけど、時々女性誌にも目を通すんですよ。なんか怪しい人に思われちゃうけど、表紙に『これからはマルチメディアの時代だ』なんて書いてあると、そーっと見てね、いろんな人の考えを得たりするんですよ。立ち読みして、本屋のおじさんにも目付けられちゃってるけど、本屋を図書館代わりに使っているんですよ。」 「自分は開発の部に入ったとき、紫外線で消去できるROMを毎日毎日、消去、消去、の作業を一日中繰り返したんだよ。一日で何万個という数になる。自分はこんなことをするために入ったんじゃない!と思ったけど、文句も言わずに良く頑張ったよなー。2年ぐらいたって、先輩からプログラムを作ることをいい渡された。とても小さいプログラムだったけど、すごく嬉しかったよ。いろんな切り口から見て、『もう絶対バグはない』というところまで仕上げた。そして、だんだん大きなプログラムを作るようになったんだけど、一つだけバグがあって、売り出される直前に発見されたんだよ。もう、こっぴどくしかられたよ。そのときに先輩が言われた言葉『作り終えたときのバグは一つかも知れないが、それが売り出されると、何百万個というバグになる』は、自分の教訓のようになってるね。今でも。」 「自分の作ったのがはいっているワープロが、たくさんトラックに積まれて運ばれていくのをみると、とても嬉しい。また、店で友達とかに、『ここは自分が作ったんだぜ!』とか言えるのが、すごく嬉しい。ある日、女子高校生ぐらいの子が、『やっと買った!』というような顔をして、笑みを浮かべて、自分の作った文豪をかかえて向かってくるのを見たとき、自分の子供のように抱きしめたくなったよ。文豪に『ずっとかわいがわられて大切に使われろよ』と言いたくなったね。」 「NECは、『完璧な形』でないと売り出さない。例えば、衛星を打ち上げて、『羽が開きませんでした』では、どうにもならないというような物を作ってきた会社だから、100%大丈夫という形にならないと売り出さない。とても固い。」 「ペンの付いた試作機を作ったんだけど、それはいままでの形式を無視したものだから、実用としては、使えない。文豪ミニにペンをつけないのは、一つには、ペンをつけるには、そのペンを働かせるBIOSなどを作るわけだけど、それが他のBIOSの命令に悪影響を及ぼさないかということ。そして、手書き入力の文字を認識するのが難しいと言うことがあるから。NECは、実は10年前ぐらいからペン入力は研究してきたんですよ。SHARPよりは、絶対NECのほうが技術があるっ! でも、手書きの文字には一人一人の癖があって、認識するのが難しいということもある。」 「だから、いま一番使いやすい機能としてバーコードを使ったんだ。使い方が分からなくても、バーコードでピッとやれば葉書が作れるし、書式も、設定したら、その書式を一回で読み出す事も出るんだよ。」 「だけど、数年後には、携帯型のペンワープロも、出さざるを得ない状況になるだろうねー。時代は変わってきているし、移り変わりも早いから、昔に出して売れなかった携帯型ワープロも、売れるようになるかも知れない。時代を見極めて、今こそ!というときに出さないと、損をするからね。」 「パソコンはいろいろ対応できるけど、ワープロは、作られたらそこで完結。だからどういう機能をつけるべきかを考えなくちゃいけない。こんな機能もある、こんなこともできる、では、だめ。広い分野で、浅くすると売れるようになる。一点に集中して素晴らしい機能をつけたとしても、使う人の気が変われば、一瞬にして無用の長物になっちゃうでしょ。幅広いニーズに応えていかなくちゃいけない。」 「ワープロを買われる年齢層が一番多いのが、10代20代の若者なんだけど、それに負けじと多いのが、おじいちゃんおばあちゃんなんだよねー。NECのワープロスクールにも、おじいちゃんおばあちゃんが多い。10.5pの字を70代の方に見せて、『見えますか?』というと、『馬鹿にすんじゃない!』と、怒られちゃうんだよ。まだまだ現役です。」 「一つ新しいワープロを開発するのに、何十億もの費用がかかる。3万台売らないと、利益にならない。確実に売れるものを作らなくてはいけない。日立は、WITH MEをだしている。あれはプリンターを別にして、持ち運び出来るようにしてあるけど、どうも人気が無くて、利益はないらしい。NECも昔出したけど、駄目だった。それで日立では、ワープロの開発費用が出ずに、ずっとそのまま。」 「今回出る新製品には、もう結構小出くんの意見が取り入れられてるから、『これたしか、自分が言ったことだよなー』と思ったら、ほとんどそうだからね。期待して待ってて下さい。」 「やっぱり、自分はプログラムの設計をしたい! と、入ってくる人が多いです。でもそうなれる人は本当に一部で、実際は工場で組み立てをやったり、その他の仕事に付く人がほとんどなんです。」 「会社に入ったら、『何で俺がこんな所にいなきゃいけないんだー、オレは回路の設計がしたかったんだー』という風になる人もいる。」 「僕は、情報処理技術者の資格を取るクラブなるものをやっていて、その資格をとったんです。そうしたら、いろんな会社からお誘いがきてね、『うちは会社の近くにマンションも付ける。家賃も払う。どうだ、来てくれないか。』と言われたりしたんですけど、断ったんです。」 「そして、NECの入社面接のときに、『私は、プログラム設計に入りたい。もしそれ以外のところにまわされるんなら、NECには絶対入りません。』と言ったんです。今思うと、凄いこと言ってしまったなと思うんですが、願いが通じたのか、その部に入ることが出来ましてね、嬉しかったです。」 そして、昼食まで食べさせていただいた。やはり田町というだけあって、オフィスが立ち並び、レストランに私服でいるのは僕と友達だけだった...そこでは会社の中で話していた時よりもラフな雰囲気だったので、あまり固い話はしていなかったとおもうが、なかでも気にかかったものだけを書きたいとおもう。 「今は絶対勉強しておいたほうが良いよ。27を過ぎると、なぜかやってることが頭にさっぱり入らなくなってくるんだよー。新しく入ってきた新入社員のほうがバリバリ仕事をこなすようになってきてね、これはいけない! 彼たちの2倍勉強しないと、追い越されてしまう!と思ったよ。でもなぜか頭が鈍くなってきても、なぜか高校時代の楽しい思い出や、趣味で楽しく興味を持ってやったプログラム言語は、今でもはっきり覚えているんだよね。なぜか、忘れない。絶対今のうちに勉強したほうが良いよ。自分は、勉強しないで、損をしたと思ってるから。本当に。」 「大学は、絶対いいとこに行けよ!」 「真空管の時代からトランジスタの時代に移ったとき、トランジスタが理解できなかった人たちがいた。トランジスタからICの時はそんなに居なかったようですけどね。常に挑戦し続けないといけないから、そういう意味でこの世界は厳しいですね。常に挑戦し続けないと、どんどん落ちていってしまう。」 「悩むことはいいことです。」 「自分はA4の紙になにか書いて、それを事務の女の子に渡して『これ打っとけ。おれは忙しいんだ。』とか言って自分はタバコ吸いにいっちゃう人はしばらくすると、全然関係ない会社に行かされてる。」 |
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