『1時間10分』 byデボラ・ミトニック

 

 これから述べる話は全て真実ですが、クライアントの名前は仮名にしています。

 先日、一人の母親が電話をかけてきて、次の事を私に語りました。『“ジェニファー”は社会的に無能になってしまって何年も働いていません。彼女はこの20年の間にのべ3年以上も病院に入っていました。そしてその間、毎週精神科医の所へ心理療法に通っています。彼女がもっとも長く入院していたのは4ヶ月間です。

 彼女は、1回のレイプ、2回の暴行、そして殺人未遂の被害者です。それからトラブルややっかい事を長引かせるたくさんの出来事を子供の頃に体験しています。彼女は現在6種類の向精神薬を飲んでいます。』

 彼女の母親は、既に私達が会うように段取りをとっていたので、ジェニファーは自己紹介の電話をしてきました。私が電話に出て「こんにちは」と言う前にすでに彼女はすすり泣いていました。彼女は私の所から少々離れた所に住んでいたので電話によるセッションを求めました。しかし彼女があまりに取り乱していたので、悩み事の詳細を話せませんでした。ですから、私が知っていたのは彼女の母親が話してくれた事だけです。

 彼女は助けを求める事に必死なようだったので、私は応じることに決め、セッションを開始したのです。私は手短かにタッピング・ポイントを彼女に教えました。私達は、“これら全ての感情”に対してタッピングをしました。

 私は暗闇を手探りするようにワークしていました。タップしている間、ジェニファーが何を思い出しているのか分からないのです。そして、彼女のため息が聞こえた時、どんな事に対してリラックスしたのか分かりませんでしたが、私達が2人共うまくやっているのだと分かったのです。

 “これら全ての感情”(リマインダー・フレーズ--訳者)に対して4ラウンド行なった後、彼女は「今まで何をこんなに恐れて生きてきたのか思い起こすのが難しくなりました」と言いました。確かに私は彼女に対して良かったと思いましたが、まだ彼女がどんな悪魔と格闘してきたのか具体的に聞くほど馬鹿ではありませんでした。

 その後、彼女が肩が凝っていると言ったので、“肩を凝らせる感情”についてタップしました。その事について2ラウンド行ない、彼女は「肩がリラックスしました。緊張が無くなりました」と報告しました。(このラウンドでどんな感情的な問題が処理されたのかなと私は思いましたが、それについては尋ねませんでした)

 「自分は今までいつも不安状態にありました」と彼女は語りました。私は彼女に“先行きの不安”についてタップしてもらうことにしました。そして、その為の言葉を彼女に教えました。これは、私が思っていたよりも重要だったはずです。何故なら彼女は泣いて泣いて話す事が出来なかったからです。そこで私は彼女の代りに最初のフレーズを言いました。『例えあなたが、この先行きの不安を持っているとしても、あなたは心から完全にあなた自身を受け入れます。』 私がこのセットアップフレーズを言っている間、手の横(空手チョップポイント--訳者)をタップしただけで、彼女はリラックスし始めました。彼女のため息が聞こえましたが、万一に備えて私達は更に5ラウンド続けました。それから彼女は「もうこれ以上泣きたくなくなりました。私が最後に全く不安を感じなかった時はいつだったか思い出せません。今は恐怖を感じません。顔がリラックスして、声も穏やかになりました。タバコも吸いたいとは思いません。」と言いました。

 今や彼女は完全に、このプロセスに引き込まれていました。彼女は“自分の体の中のフラッシュバック”を経験したと報告しました。そこで、私達は彼女の体のある場所で経験している特定のフラッシュバックの記憶に対してタップを行ないました。この暴行事件の1つに由来する体のフラッシュバックは、通常SUD(主観的不快指数)は10なのですが、全てのタッピングを行なった後、彼女はこの一般的には強烈な経験を、とても僅かな不快感を覚えながらも私に語ることが出来、自分がそのように話せた事に驚いていました。1ラウンドのタッピングの後、彼女は「消えてしまいました。何年もそこにあったフラッシュバックは消えてしまいました。」と言いました。私は本当に消えたかテストすることにしました。それはまだ確かにSUDで3を示していました。(まだ消えてはいなかったのです)そこで“3で止まっている”事をタップしました。そして彼女は自然に、フラッシュバックをまだ少し保ち続けていた自分自身を許したのです。彼女は言いました。「私が一番最近この事についての感情が10以下だったはもう何年も前の事です。これは本当に素晴らしいです!」彼女はとても満足してように思えたので、私はそのままにしておきました。(私はその暴行に関する詳細やフラッシュバックの理由も何も知りません。私が分かっているのは、EFTが彼女が今まで経験してきたどんなトーク・セラピーでも成し得なかった方法で彼女を助けたのだという事だけです)

 ジェニファーは、いつも自分の生命の危機を抱いていたと語りました。彼女は“高級なセキュリティシステム”を購入しましたが、それでもまだ眠っている間に殺されるのではないかと心配していたのです。「自分の生命の危険」について2ラウンドのタッピングを行ない、彼女はもう危険を感じなくなったと語りました。

・・・・・・

 私は毎回セッションの最後にクライアントに、私と共にワークをして最も有効だった事とあまり有効ではなかった事は何か聞くようにしています。この質問をジェニファーにした時、彼女は有効でなかった事など皆無で、一番彼女に役立ったのは私が選択したアファメーション(セットアップ、リマインダー・フレーズ--訳者)だったと語りました。彼女は、私が直観的に彼女の為に作ったアファメーションを繰り返しながら手の横の部分をタップしている時に、彼女の感情が大きくシフトしたのだと言いました。

 この最初のセッションの翌日、私は彼女と話をしました。彼女は、「本当に気分が良いです!私を殺す人がいないかどうか一度もバックミラーを見ることも無かったです。自分の家で全く安全だと感じたのはここ数年で初めての事です。そして今日、この数年で初めて外出して働くことが出来ました。私はずっと家に閉じこもっていたのです。私は4年間ピアノを弾いていませんでしたが、今日弾くことが出来、曲を作るのを又始めました。私は不安を感じず、タバコも欲しいと思わずにピアノの椅子に腰掛けることが出来ました。」と語りました。

 それから彼女は「あなたと共にワークしたいと思っている事の12のリストを作ったのですが、いつ又お話し出来ますか?」と言いました。それからずっと彼女は笑っていました。
 
 彼女はこの何年間で初めて希望を持ったのです。

 このセッションに費やした時間は、1時間10分でした。

デボラ・ミトニック



原典 
http://www.emofree.com/trauma/anhour.htm


デボラ・ミトニック

DEBORAH G. MITNICK, LCSW-C
http://www.trauma-tir.com
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資料提供:EFT web site (www.emofree.com)
翻訳:kuni