2003年

9月15日

残暑が続く。というか、夏がロクに暑くなかったせいで、やっと梅雨が開けて夏が来た、って気分。
またちょっと間が空いてしまった。秋は案の定忙しいです。

某とめちゃん氏に譲ってもらったチケットで、ダニエル・ハーディング指揮のマーラー・チェンバー・オーケストラを聴く(横浜みなとみらいホール)。オール・ベートーヴェン・プロ(アテネの廃墟序曲、梯剛之:ピアノでコンチェルト1番、『英雄』)。爽快きわまりない演奏だった。オケメンバーも指揮者(まだ30そこそこ)も若いけれど、「稚い」って感じが全然ないんだもんな。オーボエのトップは日本人の女の子だった(ちょっと前の日本音楽コンクールで1位だったので名前を覚えていた)。ビィーンと通る音のする、なかなか素晴らしいプレイヤーだ。オーボエはやっぱり外国のオケで揉まれないと上手くならないのかな。
梯くんのピアノ、聴くのは何度めかな。音色は本当に美しいけど、昔に比べたらちょっとフツーの演奏になったかも。

終演後は同じ建物内の練習室に顔を出す。実は「なめら〜か」の某カルテットチームが、朝から晩まで部屋を取ってデザンクロの四重奏曲の特練中なのだ。結局まる3時間くらい絞ってきた。
問題は、やはり音の総体としてのイメージだ。楽譜を配ってからは相当経つ訳だし、それなりにさらってはいるのだろうが、全体的なイメージ無しに音符だけさらってるから、時間をかけている割には説得力のある音楽が出て来ないのね。
あと、何か今まで出来なかったことが出来るようになった時、ワーイ出来たぞと喜んで、そこで努力や練習を止めてしまうのがもっと問題だな。本当の練習とはその先、一度出来たことをいかに繰り返して定着させていくかにあると思うんだけど。

マルセル・ミュールの新しい復刻盤が出た(グリーンドア音楽出版)。曲目的には既に内外で復刻が出回っているのものばかりだが、これは日本のSPレコード・コレクターの大御所であるクリストファー・N・野澤氏直々の監修により、「蓄音機の王者、米ヴィクトローラ社製の『クレデンザ』を使用」した復刻、というのがウリのようで、今までの復刻盤より格段によい音質なのだそうだ。へぇー。なんだかよくわからないけど、とりあえず「ハハーッ、恐れ入りました」という感じだが。
で、聴いてみたのだが。…
うーむ、SPというのはこういう音で、こういう音こそが素晴らしいのだ、と思う人は、やっぱりいるんだろうな。いわば「骨董品」としての美しさ、というか。古めかしい品物を丁寧に丁寧に磨き上げて、いかにも「ヴィンテージ、」という重厚さと格調を出して、ほの暗い照明の下、麗々しく家の一番奥の床の間に飾っておく、みたいな。そういう雰囲気を狙った復刻なのだとしたら、それは確かに成功していると思う。

だけど、Sax吹きである私にとってマルセル・ミュールというのは、「生きている」存在なのだ。自分が迷ったり壁に突き当たったりした時に、立ち戻って規範とすべきものであって、決して「骨董品」ではないのだ。

東芝EMIの「ギャルドの芸術」に含まれる復刻原盤の持ち主である木下さんが、東芝の復刻の音に不満だからと、わざわざ御自分で最善のセッティングでCD-Rに落としてくださった盤を持っているが、これは凄い音がする。ノイズは多いけれど、本当にすぐそこでミュールが吹いているかのような、実に鮮明きわまりない音だ。例えばイベールのコンチェルティーノ・ダ・カメラ。内外で何種類も復刻されている(今回のグリーンドア盤にも入っている)音源だが、(実際に私自身がオーケストラと一緒にコンチェルトの舞台上に立った時に感じたような)弦楽器の胴の振動が身体に直接伝わる感じをも見事に捉えている。どんなデジタルの新録音も及ばない質のリアルさだ。SPの原盤にはこんなに凄い音が入っているのか、と驚いたものだった。だったらそれをそのとおり復刻すればいいと思うのだが、そのような復刻盤って無いんだよね。不思議。今回のグリーンドア盤、聴く前は結構期待していたけれどなぁ…

9月4日

秋シーズン開幕のN響定期を聴いた(NHKホール)。

いつものように1520円で当日券を買って入る。ユンディ・リ効果か、客入りは結構良い。指揮は阪哲朗。1968年生まれだそうだ(若い!)。しかし何実に物凄く良い演奏会だった。今日聴きに来た人は得をしたというものだ。正確で、模範的に安定していて、それでいて音は中部ヨーロッパの雰囲気満点で、しかも若々しく勢いがある。N響というオーケストラの良いところがこれだけ全て出ていたというのは珍しい(オーケストラも人間もそうだが、長所と短所は表裏一体なので、何かを表現する上で良いところばかりを表出するというのは実は難しいのだ)。シューマンはサヴァリッシュ/ドレスデンの在りし日の名盤の雰囲気すら感じるところがあったし、あの平凡なショパンの伴奏パートの何と精緻で音楽的なことだったか(こういう定石だけのオケパートがこれだけ巧く弾けるというのは、いかにN響というオケの基礎力が高いかということなんだろうけど)。ユンディ・リのピアノも良かった。初めて聴いたのだが、こういうポッと出の人気者というのはどうしても色眼鏡で見てしまいがちだけど、なかなかどうして音色も美しいし、歌いまわしも見事なものだし、華もあるし、良いじゃないか。若い女の子に人気があるのも頷けるというものだ。

そういえば休憩時間、地下の自動販売機コーナーに行ったら、販売機の前の行列の中にピアニストのK山M稚恵さんがいらして、我が眼を疑ってしまった。ステージの上ではずいぶん大きな印象だけど、実際は結構小柄で、(ちょいとトウの立った)フツーのお姉さんって雰囲気で、周りの人も全然気がついていないようだった。何を買うんだろうと思って見ていたらグレープ100%ジュースだったというのがまた渋い。

9月1日

「なめら〜か」の合宿に行ってきた。

合宿。いい響きですねぇ。夏は暑くて嫌いだし、音楽を聴く気も失せるけれど、会社を「夏休み」と称して大手を振って何日も休んで楽器の練習に行けるというのは、この季節ならではの嬉しさだ。列車や車に乗っていて、青い大きな山々が聳えているのが目の前に迫ってくると、「今年もまた!」という高揚した気分になってくる。
休みとなると楽器を提げて山間地へと向かう、そんな夏という季節を、もう25回以上も過ごしてきた。人間は皆、海彦か山彦どちらかの子孫だというけれど、私は間違いなく山彦だろうなと思う。

夏の終わりのよく晴れた中央道を、助手席に乗っけてもらって西に向かって走りながら、志賀高原で開催していたセルマーのSaxキャンプや、小淵沢近くの富士見高原でのヤマハの八ヶ岳Saxセミナーに毎年参加していた、80年代半ばから90年代初めの頃を思い出していた。あの頃は楽しかったなあ。毎日毎日何かしら新しいことが起こって、自分が成長していることが確かに実感できるような、目まぐるしいばかりに刺激的で面白い日々だった。
たぶん、今でも自分の周りでそういう新鮮で刺激的な出来事は日々起こっているんだろうとは思う。ただ、それを受け止めるだけの感性というものが、40を過ぎてしまった今はもはや往時とは違うわけで。…

向こうで携帯が壊れたので、帰ってから機種変更してきた。D-251iS。カメラ付きだ。携帯を使い始めてまる7年を超えるベテランユーザーの筈なのだが、これでやっと3台めなのだった。