2000年

3月31日

有珠山が噴火した。職場では「メジロファームは大丈夫か?」「高橋農場は?」などの会話が飛び交う。(注:私の会社では競馬や競走馬関連のデータ整備や印刷物作成をしている)

「音の輪」で一緒にSaxを吹いている大学生のA君がついに自分のバリトンサックスを買うというので、楽器の選定に付き合うことにした。夕刻、仕事を終わらせた後、週末の渋谷の人渦をかいくぐって楽器店へと急ぐ。選定人は「音の輪」もそうだがフロート(私の所属団体)でも一緒に活動しているM氏。アマチュアながら、Saxの腕前と選定眼に関しては信頼がおける。予定よりかなり遅れてM氏到着、7時40分より選定作業開始。セルマーの新品のバリトンサックスが5本並んだ様は壮観だ。

選定の手順は
5本をまずざっと吹いて、1本を仮に選択 →
選んだ1本の本体に、5本それぞれのネックを付けて吹いてみて、最も良いネックを1本選択 →
選んだ1本のネックで、改めて5本の本体を吹き比べる。2本選び出し、最後は購入者本人が吹き比べて決定
というもの。
続いてマウスピースの選定。セルマーのE、D、C**など6本の中から1本。全て選び終わった時には9時半を回っていた。店を開けておいてくれたO氏に感謝。

選定に立ち会った皆で、楽器店の前の洋麺屋五右衛門でメシを食って解散。M氏は白ワインをがぶがぶ飲んでいた。

3月29日

都響第507回定期演奏会を聴く。朝比奈隆氏(91歳!)の客演のため、発売即売り切れた話題の演奏会。曲目はブルックナーの5番。(サントリーホール)
厳かさと暖かさの備わったよい演奏で、普段は苦手なブルックナーだが1時間半を集中して聴き通すことができた。ここ何年か1シーズンに一度は聴いている朝比奈と都響の演奏の中ではベストの出来だったと思う。終演後は猛烈な拍手とブラヴォーが止まらず、オケのメンバーが退場した後に朝比奈一人をステージに呼び返して拍手を浴びせる、おなじみの光景。あと何回こういう光景が見られることだろう…
それにしても朝比奈隆、元気だ。指揮者というのは我々凡人とは違う種族なのだろうか?「指揮者について」という件はそのうちコラムを1篇書いてみたいと思っている。

今回の演奏会を最後に定年退職する3人の楽員に、終演後の拍手の中花束が渡されていた。私にとっては、首席フルートの湯川和雄氏が退団、というのがなんといっても感慨深い。あの強烈な個性と味わいある音は目をつぶっていても「あ、今日は湯川さんがトップだ」と分かったものだ。不安定な演奏の時もあったけど、都響の音は湯川氏と共にあったような気がしている。
最新情報によると湯川氏の後任は寺本義明氏だそうだ。寺本氏といえば、京都大学の出身(音大には行っていない)ながら1988年の日本管打楽器コンクールでぶっちぎりの第1位(2位なし)を受賞した名手である。一時、N響に入るという噂もあったのだが、結局都響に来ることになったのは都響ファンとしては率直に嬉しい。

3月25日

休日。夕方は都立小山台高校(私の家から徒歩5分)の吹奏楽演奏会を聴きに出る。(きゅりあん)
いや〜、若い。若いです。もう、その一言ですね。結構楽しめました。私と同年代くらいのOB連中も何人か助っ人で出演しているのが楽しい。ちなみに私はOBではありません。昔OBだったこともあったが(1行謎)。
高校生だけ〜プロ(エマーノン・ブラスアンサンブル)のゲストステージ〜現役、OB、ゲストの合同という3部構成だったが、第3部に至って爆発的に音が鳴ってきた。音に方向性を与えてやることが子供たちにのびのび吹かせるコツだということか。

3月24日

都響の第506回定期演奏会。一昨日の公開リハーサルの本番である。(東京文化会館)

・シベリウス/ヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン:チー・ユン)
・R.シュトラウス/家庭交響曲

注目のR.シュトラウスは熱演。一昨日は1階席だったので音がダンゴ状態で聞こえてきたが、今日は3階なので隅々までくっきり聞こえる。金管が気持ちよさそうに吹きまくっていたのが印象的で、やり過ぎてバランスを逸したり音が割れたりの箇所があった。吹きやすい指揮なのだろう。あれだけ細かい練習をつけながらチマチマした演奏にならないところがさすが高関健だ。
この曲にはサックスが4本使われているが(ソプラノ、アルト、バリトン、バス)、音量の大きいところしか出番がないので実際には見事なほど聞こえない。今日は見たところソプラノが宗貞啓二、アルト彦坂真一郎、バリトン大森義基の各氏。バスは誰だろう? それにしても報われない仕事だなあと思う。
前プロ・シベリウスのソリストは韓国の若い女性。CDも何枚か出しているようだ。なかなかの美人だが気の強そうな感じで、演奏もそんなふうだった。

3月22日

都響の公開リハーサル入場の抽選が当たったので、会社を前半休して行ってきた。(東京文化会館、11:30〜12:30)

曲はR.シュトラウス『家庭交響曲』。今日は2日めの練習のようで、明日もう1日練習をして24日が本番。プロのオーケストラとしては普通のスケジュールなんだそうだ。2〜300人のお客さんが1階席の後方に座った。

11時半ぴったりにチューニングのAが鳴る。指揮者の高関健登場。小柄でポッチャリ型の体躯の上にドラえもんみたいな顔が乗っているという、絵に描いたようなトッチャン坊やなのだが、いつも実に整った見事な音楽を聴かせてくれる人だ。さてどんな練習をするんだろうか。スタートは「77番」から。第3楽章の途中だ。
驚いたのは実に頻繁に止めること。そのたびに、いかにも音楽家、って感じのよく通る美声でオケに注文が出る。「ここはクレッシェンドでお願いします」「ホルン、1・2番もう少し固く下さい、3・4番の2分音符はピアノで結構です」「2拍めは少〜しテヌート気味で、ふわっという感じで次に入りますんでよろしく」などと。舞台が遠いのでよく聞きとれないが、あるパート相手に何か言ってはそこだけをやり直させる。「ヴィオラだけ」、「弦楽器だけ」、「木管楽器だけ」とか。まるでアマチュア相手の練習のようだ。アマチュアと違うのは「個人レベルではちゃんと弾けている」ってことか。(この違いが決定的なのだが)
結局最後まで到達することはできず、「今できなかった部分は午後にやりましょう」と言って、最後の15分で第4楽章を通して終わった。当然、まだ合奏していない部分というのもあるのだが、そこだって一応、ソツなく弾けていることは弾けている。それはそうだろう、プロなのだから。
それにしても、何も言わなくてもとりあえずちゃんと弾ける集団を相手に、あれだけ細かい練習をすれば、良い演奏になる訳だ、と納得したのだった。24日の本番が楽しみになってきた。

結局、練習でやらなければいけないことにプロもアマチュアも変わりはない、ということか。

それにしてもこの『家庭交響曲』という曲、1903年の作曲だそうだが、実になんとも強力な曲で、フィナーレのドシャメシャさ加減なんかほとんど『華麗なる舞曲』状態だ。こんな曲が100年も前に作られていたことを考えると、『フェスティバル・バリエーション』程度でびっくり仰天していた吹奏楽の世界なんて実にカワイイものだ、と思う…

3月18日

よく晴れた暖かい土曜日、音の輪の第3回の練習。午後2時から8時まで、1時間の休憩をはさんでびっしり合奏。
みんな、まだまださらい込みが足りない。何よりまずそれぞれが「個」を確立して合奏に臨むことが必要と思われる。音の輪はそこらの普通のバンドとは違うんだぞ。

#印象的な言葉。もう亡くなられたが、ある著名なプロの指揮者が練習中に言ったこと

 「ここは戦場なんだから、命をかけろ!」

 そう、合奏とは、兵士にとっての戦場なのだ。
 だからこそ我々は、細心かつ最善の準備のもと、武器(楽器)を携えてそこに臨むのだ。違うのか?

終了後は、なんとなく集まった数人で練習場の近所(宮前平)のBigBoyにメシを食いに出る。話に熱中し過ぎていささか長居をし、帰宅は綱渡りの終電リレーで0:55だった。

3月16日

オーケストラアンサンブル金沢の東京公演を聴く。(サントリーホール)
クルト・ワイルの生誕100周年&没後50周年ということで、『三文オペラ』組曲がプログラムされていたのでちょっと興味があったのだが(この曲は私も吹いたことがあるが、2本のサクソフォンを含む管楽アンサンブルの編成である)、フタを開けてみたら林光の編曲による通常のオーケストラ版だった。ちょっとがっかり。岩城宏之の指揮と解釈は少々立派過ぎ。この曲にはもっとせこくて猥雑な感じが欲しいな。でも、いい曲だ。
他に林光/オーケストラのための『トレヌス(哀歌)』(ショスタコーヴィチの緩徐楽章みたいな小品だった)、ピエルネのハープ小協奏曲(ハープ:吉村智子)、ワイル/ヴァイオリンと管楽器のための協奏曲op.12(ヴァイオリン:マイケル・ダウス)。CDで予習した限りではサッパリ訳が分からなかったワイルの協奏曲が一番面白かった、というのが生ならではだ。

2月28日

ウィーン八重奏団来日公演を聴く。(紀尾井ホール)

老舗の味、という感じ。ウェルナー・ヒンクのヴァイオリンもシュミードルのクラも、怪しい箇所が無い訳ではないのだが、それでもウィーン・フィルのメンバーが創り出すこの音楽的感興には、何の不安もなく身心を預けることができる。1968年生まれのホルン奏者ロナルド・ヤネシッツの、ファゴットと完全に溶け合った木管楽器のような音が印象深い。アンコールはお約束ヨハン・シュトラウスの、『アンネン・ポルカ』(シュミードルの弦楽器のようなクラの音がアンサンブルをリードしていた)と『浮気心』。

2月21日

都響(東京都交響楽団)の2月定期Bプログラムを聴く。(サントリーホール)

というなかなか面白いプログラム。指揮はヤン=パスカル・トルトゥリエ。3年前にも都響に来て、目の覚めるような鋭い演奏を聴かせてくれたことがあったので、楽しみにしていたのだが、今回も2/9のAプログラム共々期待に違わぬ素晴らしさだった。トルトゥリエという人は元々ヴァイオリニストなので、旋律線重視の音楽づくりかと思いきや全然違って、端から「リズム」と「音程」をばしばし決めていくという、実に我々吹奏楽育ち人間好みの演奏をしてくれるのだが、といって単に機械的な演奏という訳ではなく、「音色」「ダイナミクス」「ニュアンス」などまでも痛快に決まるべきところに決まっていく。要するに音楽の要素のすべてが極めて高い次元に整理されている指揮者だ。今日の曲目はヒンデミットが特に見事。「うわ〜っ、さすが、やるじゃん」という感じで聴いていた。

Aプロではプロコフィエフの『ロメオとジュリエット』が曲目に入っていて、旧知のサックス吹きF君がエキストラで乗っていたのだが、彼の話では「良い意味でしつこい練習をする人」なんだそうだ。なるほどねェ。

2月20日

淡路島サクソフォン・フェスティバル(淡路・津名町)から帰ってきた。友人の車と、「ひかり」「のぞみ」を乗り継いで5時間。夜の明石海峡大橋の上から望んだ神戸の夜景の美しさに感動。
楽器(今回はソプラノとソプラニーノサックス)と最低限の荷物だけを持って行き慣れない遠い地へ赴くというのは、何か「開拓者」という言葉を思い出させる。何を開拓しに行ったのか、あるいは自分の中の何を開拓するために行ったのか。答えが出るとしたらこれからだ。

淡路ではいろいろな人に会った。フェスティバルの音楽監督である大阪市音楽団の長瀬先生はじめ、普段はネットワーク上での付き合いしかない方々も。でも、各々楽器を持ってそこに臨めば、ここが地球上のどこだなんてことは全然、関係ない。
みんな、いつの日かの再会までお元気で!