『ラン・ローラ・ラン』(98年 ドイツ)
2000年3月 記
最近ぼくが見たエンターテイメント系ドイツ映画は、どれも安っぽくて垢抜けない、つまらないものばかりだったので、その影響でこれもあまり期待してなかったんですが、実際に見たら意外におもしろかったです。洗練度はかなり高かったように思えます。これの監督、トム・ティクヴァ(ってゆーかあのスペル”Tykwer”をドイツ語で読むと”テュクヴェア”だと思うんだが。ま、発音しにくいけど。)は、けっこう可能性があるかもしれません。
「もしあそこでああだったら」というあまりにシンプルなアイデアのもとに作られている話なので、二番煎じはトム監督自身にも無理でしょう。
主人公のローラは、かわいいんだかぶさいくなんだか(ポテンテちゃん=ローラ役の女の子ごめんネ。)、どっちともとれそうな、なんとも言えない顔つきをしています(CGで書きやすそう。笑)。眉毛が凛々しいっすねぇ、”賢いドイツ人”って感じっすねぇ。いや、眉毛の凛々しくない賢いドイツ人もいると思いますけどね(笑)。鼻はドイツ人でしょう。頭頂部から撮ってるシーンがあるんですが、額が丸くて鼻がとんがって出ているので、なんだか”矢印”のようでした(笑)。
どこかの雑誌にも書いてあったんですが、ほんとにムダの無い健康的な体つきです。走るのにはうってつけって感じですな。
この映画、カメラワークが良かったように思います。やや高いところからスゥ〜っと降りてきて、向こうから走ってくるローラをとらえるとこなんか良かったっすねぇ。まぁ、どこにでもある撮り方と言われればそれまでですが、私はたいそうお気に召しました。
やはり映画は”movie”とか”motion picture”とか、かつての日本では”活動写真”などと言われていたように、やはり”動き”が大切ですよね。(武監督等の日本映画に多い”不動の動画”というのも捨て難いのですが。)その点でこの映画はよく動きます。映画を映画たらしめている最も重要と思われる、”視覚において語る”という根本的な原則をちゃーんと心得ています。
ローラの髪の色を、目に痛いほど赤くしているのも、なかなかうまいです。
”動き”と関係ありそうな話ですが、この映画の所々に、ぼくの大好きな”電車が走ってるシーン”が出てきます。映画中における”乗り物が動いてるシーン”は大好きです。
『ベルリン天使の詩』や、最近では『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』で有名なヴィム・ヴェンダース監督の作品には、必ず何かしら乗り物のシーンが出てきます。同監督の『都会のアリス』という作品には、飛行機・車・電車・モノレール・船等々、ありとあらゆる乗り物が出てきます。ヴェンさんは”乗り物フェチ”かもしれません。
で、この『ラン〜』でも電車のシーンが何回か出てくるんですが、やはりいいです。いったい何がいいのでしょうか?はっきり言ってわりません。でも、映画内に限らず、普段の現実の世界においても、乗り物が動いてるところを見るのってなんか楽しくありません?(あれ?ぼくだけ?)なんて言うんでしょうか、視覚において時間の経過を感じられるってゆーか、いや、そこまで考えてないかな。
う〜ん、なんなんでしょうねぇ。わかりませんが、とにかくぼくは好きです。
あ、ちなみに、この映画見てわかるドイツネタを一つ。
最初、地下鉄か市電かなんかのシーンが出てきます。あそこでローラの恋人”マニ”が検札の人から逃げるシーンがあります。ってゆーかこれがこの映画の話の全ての発端なんですがね。ああいうのはどうなんでしょうかね、日本の、ぼくが住んでるあたりではあんまり馴染みがないんですが、つまり、ドイツの地下鉄とかには、いわゆる”改札口”みたいなものが無いんです。切符(というより切らないので切符という言い方は違うかもしれませんが)は、一綴りの回数券を買います。で、”自分で”目的地までの値段を調べて、その分の回数券を何枚か払います。日付と時間を刻印する機械があって、それに”自分で”回数券を通して、それで電車に乗り降りします。つまり”セルフサービス”のシステムなんですな。
詳しいことはわからないのですが、”ただ乗り”はいたって簡単らしいです。が、そこはドイツ人です。ただ乗りを実行する人は滅多にいないとか。しかし、たまにはいます(笑)。そこで検札員が登場します。彼らは(といっても検札員は女性がやってることが多いらしいんですが)抜き打ちで突然乗り込んでくるそうです。しかも、車両の前後に一つづつある出入り口に、ドイツ人のデカイ体をフルに活用して立ちふさがるんだそうです。おそろしい話っすね。で、バレると罰金を取られます。が、実は場合によっては、ただ乗りした分の金額より罰金の方が安くなることがあるそうです。
ただまぁ、これはちょっと古い話なので、今は制度が変わってるかも知れませんが。
あとねぇ、これドイツ映画なんで当然ドイツ語なんですが(たまに英語のもあるけど)、単純な言い回しや単語の連発とかが多いんで、ドイツ語勉強してる人にとっては、わかりやすくてとてもいい教材になるかもしんない。少なくとも”袋”というドイツ語は、これ見た人なら大体みんな覚えるんじゃないでしょうか。
最後に舞台になっているベルリンの街の話をしときましょう。
ベルリンは渋いです。モダンです。主観ですが、あまりドイツ的でない感じがします。やっぱWW2で空爆でやられまくったからでしょう。もちろん古い建物とかもありますが、やはり新しいものが目立ちます。(まるでベルリンに行って見てきた事があるかのような言い方をしてますが、行ったことありません。すみません。てれ笑)
この映画でも所々で見受けられますが、2000年4月現在、ベルリンは街全体が工事中です。首都機能移転ってやつですな。だからただでさえ”無機質”なイメージのあるこの街が、ますます無機的な感じです。しかし他ならぬそれが、ベルリンの街の魅力なんじゃーないかと、あたしゃー思うんですがな。
あ、なんで”コメディー映画”なのかと言うと、見ればわかります。展開が笑えます。
あと、ローラがちょっと”ポルターガイスト”入ってます。