マブチモーター FA-130の機械的時定数

1)
プラモデル作りに熱中したことのある人なら誰でも馴染みの
あるマブチモーター

私も小学校4年の時に夏休みに自由研究として
なぜモーターは回るのか、マブチモーターを分解して
レポートしてクラスで発表したことがある

電磁石と永久磁石の吸引と反発をブラシで切り替えつつなんて
少年雑誌で見た事を発表しただけだったが・・・

さらに5年生になって、モーターに豆電球をつなぎ回転軸に
ゴムの車輪を差し込んで壁でこすって回すと
発電して豆電球が光った! あの驚きは今も忘れられない

そして年月は過ぎ、プラモデルともマブチモーターともすっかり
ご無沙汰の日が続いていたのですが
初めてモーターの理論の入門書を何冊か買って一から
勉強してみました

直流モーターの最も簡単な無負荷時の等価回路は
-------------------------------
Vを与える電圧
Rはモーター内部のコイルの直流抵抗やブラシの接触抵抗
などの合算値
ωは回転の角速度
Ke・ωは角速度に比例する逆起電力
Keはその比例定数=逆起電力係数:単位は[V・s/rad]
Iは流れ込む電流
Tはトルク
Jは回転子(あれば負荷のも合わせる)の慣性モーメント
-------------------------------
として3個の連立方程式
 V=R・I+Ke・ω :回路の電圧の釣り合い
 T=Ke・I     :電流に比例するトルク(電気系と力学系を結ぶ式)
 T=J・(dω/dt) :運動方程式


これらからT とI を消去して
V=(J・R/Ke)・(dω/dt)+Ke・ω
さらにLaplace変換してs領域でも同じ文字で表記する
V=(J・R/Ke)・sω+Ke・ω
よって
ω/V=(1/Ke)/{(J・R/Ke/Ke)・s+1}
ここで機械的時定数:Tm=J・R/Ke/Ke と置いて
ω/V=(1/Ke)/(Tm・s+1) ---(m1)

電気系で言えばVを入力、ωを出力とする1次LPFの伝達関数である

そこでこの伝達関数に現れるパラメータTm
を測定で調べようとして苦労する話が以下である

2)
まじめに回転数を測るなんて一度もやったことも無いし
どうやって回転数を正確に測るのかと悩んでうろついていると
日本橋のデジットフォトインターラプタ100円で売っていた
2001年7月初め) これはオムロンEE-SJ5でした

下の緑の基板である。右の灰色の枠はタミヤのプーリーセット
   タミヤ 楽しい工作シリーズNO.121
   プーリーユニットセット(500円程度)
に入っていたモーターボックスと黒の軸受けをうまく切り出したもの
基板と枠組を接着剤で結合して作った

基板の端子は3個あって右が5ボルトの電源端子
真中が出力でプルアップ抵抗1キロオームで右の電源とつなぐ
  注意
  これは自分で抵抗を買って来てハンダ付けします
  1キロオームというのも私の勝手な推測値です
  デジットの基板にはこの部分は有りません!
左がGND

ソフトで用意するのは
いつもの
  http://www.ne.jp/asahi/fa/efu/index.html
  で "efu" さんが公開されているWS (Wave Spectra)を使えばリアルタイム
  で時間軸情報もFFT結果も見れる

  それと
  ノートPCのマイク端子から信号入れてFFT [2]
  も参考にして下さい

  さらに他の項目でも紹介した
  Windows の DOS 窓(コマンドライン)で動く wav ファイルの
  フォーマット変換ツールで
  wav ファイル <---> ヘッダ無しバイナリファイル/ASCII ファイルの
  相互変換が可能というものをケプストラムさんが公開されています
    http://www.cepstrum.co.jp/1wavconv/1wavconv.htm
  今回もこれを利用させてもらいます(感謝!!

  以下の実験ではノートパソコンはバッテリー駆動したほうがノイズ
  が少ない


  さてフォトインターラプタの信号出力がこのままでは5ボルト
  なってしまいノートパソコンの外部マイク入力端子
    東芝 Libretto ff 1050  OS:Windows98
    省電力のプロパティはフルパワーにしたもの
  に入力出来ないので100キロオームと1キロオーム
  百分の一にして入力した(写真には写っていません)


3)

マブチモーター FA-130の外箱には1.5ボルトで無負荷回転時に
8500rpm (revolution per minute)とある

Wave Spectraセンサーの出力を見ると定常回転時の波形は下


1回転ごとに2発パルスが出るようにモーターの軸に”腕”をつけてるので
278.6Hzということは1秒間278.6/2回転
よって1分間278.6/2・60=8358回転
妥当な値と思われる

278.6Hzということは1/278.6≒3.6ミリ秒毎にパルスが出ている

さきに書いたモーター伝達関数へステップ入力::V=V0/sを与えると
ω=(V0/Ke)/{s(Tm・s+1)}
右辺を部分分数に展開して
ω=(V0/Ke){1/s-1/(s+1/Tm)}
これを逆Laplace変換し時間領域でも同じ変数名を用いて
ω=(V0/Ke){1-exp(-t/Tm)}
これは時刻tでの回転の角速度を与える

ここで t=Tmとおくと
ω1=(V0/Ke){1-exp(-1.0)}≒0.63・(V0/Ke) ---(m2)
さらに充分に時間が経ったとして t→∞とすると
ω2=(V0/Ke) ---(m3)

これら式(m2)、(m3)と
定常状態では3.6ミリ秒毎
にパルスが出ているから
t=Tmでは
3.6/0.63≒5.7ミリ秒毎にパルスが出ていることになる

Wave Spectraはファイルに取りこんだ信号をWAV fileとして
(デフォルト名はrec.wav)保存出来るので
c:\motorに保存する設定にしておき

まずサンプリング速度:11025sample/secで
Wave Spectraを起動してからマブチモーターFA-130を
単四アルカリ電池(一本)につないで(ステップ入力?)回転させて

からWave Spectraを止める

次ぎにケプストラムさんが公開されている
wav2txt.exeもwavconv.cfgなどと共にc:\motorに置いてあれば
DOS窓でc:\motorへ行って
wav2txt -a -d -i -o rec.wav motor.csv
 オプションの
 -a  は、ファイルの先頭にサンプリングに関する情報を書く
 -d  は、二つの数字をカンマで区切るため
 -i  は、ミリ秒単位で時間軸情報を1列目に書く
 -o は、同じファイル名への上書きを許可するもの
とすればエクセルで見れるファイル motor.csv が出来ている
第1列がミリ秒単位の時間
第2列がフォトインターラプターのパルス出力

ここからは手動でエクセルファイルを前から見ていって
モーターがスタートしたポイントを探して(マクロでも出来るだろうが)
ちょいと細工して散布図表示したのが下

パルス列の一番右あたりの時間間隔は約3.6ミリ秒
それで時間間隔が約5.7ミリ秒位になるところを探す

次ぎに
パルストレインが始まる位置だがフォトインターラプターの
腕の位置が最初どこにあったかに依存する概略値だが得られる
   手で電池をケースに押し込んでスタートさせてるので
   チャタリングもあるかも知れない


そして両者の差=50ミリ秒こそが
かなり荒っぽいがマブチモーター FA-130
機械的時定数である



4)
小学校4年以来のマブチモーターについての考察でありました

エラい哲学者の言葉に
「馴染みだからと言って良く知っているとは限らない」
というのがあるそうです

かつて馴染みだったマブチモーターについて今回は
小学校4年の時よりは、ましなレポートが書けただろうか?

以上2001年7月11日  まずは”荒書き”を記す


2001年7月21日
内部抵抗が高いかもしれないと思い
単四アルカリ電池(一本)を止めて直流アンプ出力で駆動すると
機械的時定数は約37ミリ秒から46ミリ秒であった

2001年8月2日
重要な追記
もう少しモーター方程式の精度を上げて置かないとあとで困ることが
判ったので
3個の連立方程式
 V=R・I+Ke・ω :回路の電圧の釣り合い
 T=Ke・I     :電流に比例するトルク(電気系と力学系を結ぶ式)
 J・(dω/dt)=-D・ω+T :運動方程式
    Dは角速度ωに比例する減衰をあたえるので粘性摩擦項などと言う
をLaplace変換して解いて

    粘性摩擦の無い時の機械的時定数:Tm=
J・R/Ke/Ke
    粘性摩擦項:D=Ke・Ke/Rd
 と置き換えて
ω/V=(1/Ke)/(Tm・s+1+R/Rd) ---(a1)

さらにQ=1+R/Rdとしてこれで右辺の分母分子を割ると
ω/V=1/(Q・Ke)/{ (Tm/Q)・s+1}---(a1)
を得る

従って上記7/11の議論で得られた結果は
Keの変わりにQ・Ke
Tmの変わりにTm/Q
とすれば正しいことになる

例えば
ω=(V0/Ke){1-exp(-t/Tm)}
は精密化すると
ω=(V0/Ke/Q)[ 1-exp{-t/(Tm/Q) } ]
   Rd=Ke/Ke/D
   Q=1+R/Rd
となる

上の実験で得られていたのはTm/Qであった

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