八戸童話会 創作童話集 おとぎの森No.4 より




優秀作品 「勘助山へのみちしるべ」 東野とくお


昔むかし、みちのくの南部の国に大久保という村があったず。

村にぁ「大山」という日本一低くて広いひろい山があったず。

山にぁ七つのわき水が流れふもとにぁ牛や馬の牧場があり、ホタルがたくさんとんでいだったず。

その山の北側の一角ぁ勘助爺さんのもちものだったず。

勘助爺さんは山が好きですきで、田畑仕事のない日にぁ朝暗いうちから日が暮れるまで山で過ごしたず。勘助爺さんは、山のことや天気のことなんどにくわしくて、村人達は、よく農業の相談に山を訪ねだず。爺さんは腰ぁ曲がって、草木の陰でなかなか見つからない時もあったず。

大久保村ぁ、海にも近く、恵まれた平和な村だったずが、土地の中に固いところがあり、井戸を掘ることができながったず

やさしい勘助爺さんは、自分の山のわき水のあたりを手入れして、井戸のない人たちにつかわせだず。

おいしい水で、たちまち評判になり、水のお陰で家ぶるまいが出来るようになったず。冬の八皿だのえんぶり宿ではソリで水を運んだず。

村中に利用され、よろこばれていだす。

しかし、ある年、ひどい雨降りぁ続いだず。

この山のわき水の小川も土砂が流れ、洪水になったず。

その年ぁたくさんいだ源氏ボタルも流されだらしく、ぜんぜん飛ばなかったず。

田や畑も小川の氾濫で不作になり、お盆まつりもでぎながったず。

村想いの勘助爺さんは、早速村人にはたらきかけて、わき水の辺りを整備したり、川筋に杉を植え付け、小川には源氏ボタルのために水高菜ををうえだず。

水高菜ぁどんどん殖えで、山を出て、牛や馬が水をのむ沼の方まで生えだず。

この水高菜ぁカワニナという貝の大好物だったず。

そして、カワニナは源氏ボタルの餌になるず。

再び、ホタルが飛びかう村となったず。

源氏ボタルばかりでなぐ、平家ボタルや姫ボタルも飛んで、村の人達ぁ、なんもかんも喜んだず。

勘助爺さんもうれしくなり、わき水場の上に龍神様をおまつりし、川筋にみちしるべをたでだず。

村のお百姓さんには、山を持たない人達もあったずが、勘助爺さんは、その人達に自由に山を使わせたず。

村の人達は何時でも、杭でも手柴や農具の柄などの木を刈ることが出来たず。

また、山のすそを切り払い、家畜を放牧したり、牛や馬に餌の草を刈ることも出来たず。

しかし、まだ、ある年の夏の日に天気ぁ急に変わって、大嵐になったず。

夜になって、嵐ぁおさまったずども、勘助爺さんが山から戻ってこながたず。

心配した家族は爺さんを捜しに行こうとしたが、村人達は、

「勘助爺さんは山に詳しいから、何処かに避難しているんだから、闇夜の山ぁあぶないがら、朝になってがら、村のもんみんなでさがすがら。」ととめられだす。

そう言われても、お婆さんは心配で、休んでもいられながったず。

縁側に座り、山の方だけ見つめでいだす。

何時までも見でらっきゃ、山の麓に光が見えだず。

その光は細く転々と連なり、山から出て村にのびお婆さんのまわりまで来たず。

「あ!蛍!ほたる!ホタルだ。」

と、お婆さんが叫んだず。

その光の帯は、山の勘助爺さんへの案内をするようだったず。

家族と村の人々は、

「勘助爺さん!勘助爺さん!」

と叫びながら、ホタルの光にひかれて、山を登り、沢を下り、川上に進んだず。

やがて、ホタルの光で辺り一面明るい所があり、草の上に爺さんの杖があったず。

「さぁ、勘助爺さんの杖があったどぅ。」

と叫んだら、みんなで明るい方に寄ってきたず。

「近くにいるんだがら、捜せさがせ。」

と声を掛け合ったず。

するど、小川の側の杉の大木にホタルの大群が光っていだず。

みんなで杉の木に近づいだず。勘助爺さんが杉の根元に倒れでいだず。

傷つきながら、荒らしの中を歩いて、行き倒れになったのだったず。

村人に抱えられで家に無事にかえるごどがでぎだず。

元気になった勘助爺さんに、ホタルに助けられたことを話して、みんなで喜んだず。

それから今も、山は勘助山、沢は勘助沢、川は勘助川と呼ばれているず。

お陰で、勘助川には洪水もなく、源氏蛍・平家蛍・姫蛍ばかりでなぐ、ほがの蛍も飛び交って、地域の憩いの場となり、ホタルまつりまで出来でいるず。

勘助川は大久保川・三島川・清水川と合流して、白銀の海に流れでいるず。

むかし有名な「鯨橋」という鯨の骨で造られた橋が掛かった川だったず。

どっとはらい。



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