OP Fisheye Nikkor 10mm F5.6。このレンズは、撮影に必要だから買ったというより、はっきり言って欲しいから買ったという単純な動機で買ったレンズです。20年ほど前(1980年)に販売終了し、現在では新品で入手することができないので中古で探しはじめました。ニッコールクラブの会報(2000年春号)によると発売は1968年で、12年近い長い期間発売されていたにもかかわらず、生産数量は1000本にも満たないらしく、欲しいと思って探しはじめてから10ヶ月ほどかかってつい最近(2000年9月)に新宿で行われた中古市で入手しました。値段ははっきり言って今まで買ったレンズの中で一番高かったです。でも、シリアルからすると最初期のレンズにもかかわらず、非常に奇麗で、元箱まで付いていたのですから、非常に嬉しかったです。しかも同じ日にもう一本他の店でも売られていましたが、こちらは外見はぼろぼろで箱等は無いのに、私の買ったのより倍くらいの値段が付いていました。本数の少ないレンズだけに相場が無いのでしょうか?

 このレンズが欲しいと思った動機はAi Fisheye Nikkor 8mm F2.8Sを買ったことが引き金になっています。OP Fisheye Nikkor 10mm F5.6もAi Fisheye Nikkor 8mm F2.8Sどちらのレンズも画角が180度の円周魚眼レンズです。それではどうして2本必要なのでしょうか?いくら欲しかったからといって同じようなレンズ(しかも高価な)を2本も買うわけはありません。一般的な魚眼レンズはニコンのも他社のも全て等距離射影方式を採用しています。しかし、このOP Fisheye Nikkor 10mm F5.6は正射影方式が採用されています。レンズの名前についているOPは正射影方式(Orthographic Projection)の略なのです。正射影方式の魚眼レンズはこのレンズが世界初です。

 等距離射影方式と正射影方式の違いは右の図を見てください。等距離射影は光線の入射する角度と像高(画面中央からの距離)が比例(像高=入射角)するように写ります。一方、等射影はそのまま投影(像高=cos入射角)するように写ります。実際の写りでは画面中央の被写体が正射影方式の方が等距離射影方式に比べて大きく写ります。

 このレンズにはもう一つ世界初のものがあります。それは、一眼レフ用交換レンズで世界で初めて非球面レンズが採用されたことです。正射影方式を達成するためには、非球面レンズの採用が必要だったようです。非球面は一番前面に採用されています。そしてぱっと見るだけで明らかに非球面レンズと分かります。これほど分かりやすい非球面レンズは他には無いと言ってもいいんじゃないでしょうか?これを見ていると吸い込まれそうな感じがして非常に美しいです。見ているだけで非常に満足しています。

 使い勝手ですが、古いレンズでしかも特殊用途レンズですが、なかなか使いやすいです。写真を見ても分かるように、このレンズにはピントリングがありません。それでも、絞り開放(F5.6)で無限から50cm程度までピントが合います。これはスナップを撮るときに大変便利です。これ以外にもスナップに便利だと思ったのは、比較的軽量で振り回しやすい点と、このレンズは前ダマがほとんど出っぱっていないので前玉に傷をつける心配が少ない点です。一般的な全周魚眼レンズは前玉がかなり出っぱっているうえに、フードが使えないので結構気を使います。

 使いにくい点は、やっぱりミラーアップして使うレンズだということです。この為に外付けファインダー(DF-1)を用いますが、このファインダーはやはりミラーアップして使う等距離射影方式の全周魚眼レンズと共用になっています。この為、このファインダーは等距離射影方式で見えます。しかも画角が180度ではなく160度しかありません。つまりこのレンズ特有の描写を撮影時にまったく確認できないのです。これは、せっかくの特殊な写りをする一眼レフ用のレンズとしては面白みにかけています。それを除いても、このファインダーはあくまでも目安です。なにしろ画角が広いので、被写体だけでなく、カメラ本体やレンズまで見えてしまうのですから。

 実際の写りですが、まだ買ったばかりということであまり撮影していないのですが、一枚載せておきます(左の写真をクリックすると大きな写真が見れます)。古いレンズなので単層幕コーティングですが、太陽がガラスに反射して直接入っていますがフレアーは出ていません。発色もこの当時のレンズとしては素晴らしいのではないでしょうか?赤の発色なんかはニッコールレンズとは思えないくらいよい気がします。