12. ここより左右に別れ行く 左の線路は飾磨(しかま)港
右に見ゆるは播但線 生野城崎遠からず
13. 素麺産地の網干より 龍野に通う電車あり
龍野醤油揖保の鮎 室津は近くの良き港
14. 旧藩侯の別荘と 名にも龍野の聚遠亭
枝垂桜の木の間より 一目見らるる播磨灘
15. 那波より近き赤穂城 四十七士の遺跡の地
煙たなびく塩田も 叉おもしろき眺めなり
16. 船坂山は高徳が 後醍醐帝の遷幸と
道に要して奪わんと 義兵あげたる其遺跡
17. 石筆いづる三石を 過ぎて吉永芳嵐園
吉野嵐山兼ね得たる 名にも背かぬ花盛り
18. むかし熊沢蕃山が 岡山藩主に聘せられ
子弟を教え導きし 名も閑谷の閑谷黌(しずたにこう)
19. 瀬戸内すぎて西大寺 北条時頼入道が
手植にしたる名木の 桜は岩間の寺にあり
20. 早くも来ぬる岡山の 後楽園は我国の
三公園の其一つ 園内広く鶴遊ぶ
21. 三十二里の旭川 市を貫て水清く
十七師団も此土地に 置かれて賑わう一都会
22.中国鉄道乗り換えて ゆくには二つの線路あり
作州津山に遊ぶべく 吉備津の宮にも詣ずべし
23. 瀬戸内海を横ぎりて 向かいの岸の四国まで
ゆくには連絡汽船あり 讃岐めぐりも時の間ぞ
24. 金刀比羅宮に参拝し 栗林公園一覧し
屋島に平家が敗軍の 跡とむらうも旅の興
25. 叉岡山に立ち帰り 音に名高き備前焼
もとめてゆけば庭瀬にも 物産畳表あり
26. 玉島駅の南には 躑躅花さく円通寺
寺より見れば面白や 水島灘は目の前に
27. 金神駅には金光社 金光教会本部あり
笹岡附近の名産は 世にも広浜の水蜜桃
28. 天守は残る福山城 阿伏兎の観音鞆の浦
皆遠からぬ名所にて 鞆より出づるは保命酒
29. 尾道ゆけば千光寺 巌の上に寺ありて
見おろす海の小歌島 歌声たえぬ海女小船
30. 糸崎駅の海上を 南に出づる一里半
春は能事の浮き鯛と 呼ばれて名高き見物あり
31. 本郷よりは一里半 臨済宗の仏通寺
境内しずかに奥深く 安芸の高野と人は呼ぶ
32. 河内の駅に見るべきは 深山公園竹林寺
園は水あり遊ぶべく 寺は木深し涼むべし
33. 西条柿の名産地 西条すぎて走り行く
汽車は速くも海田市 日も呉線の乗換場
34. 呉軍港も見たけれど 帰りに残して真直ぐに
ゆけば心も広島市 第五師団の所在の地
35. 大本営を置かれたる 名誉の記念は広島城
西湖をうつして名高きは 浅野別墅の縮景園
36. 二葉公園花さきて 風あたたかに吹く頃は
賑わう饒津(にぎつ)の社まで 散歩に行くにも面白し
37. 日清日露の戦争に 軍隊輸送の大任を
全うしたる宇品港 出で入る汽笛四時絶えず
38. 己斐の松原五日市 おるれば草津の梅林
宮島駅の海上に 立てる鳥居は厳島
39. いつ来て見んと思いつる 一百四十八間の
廻廊浸す夕汐に 浮かべる月もながめたり
40. 是ぞ日本三景の 一つと呼ばるる風景の
浦は七浦豊公の 千畳閣に紅葉谷
41. 縮の産地岩国に かかれる橋は錦帯橋
橋みる人は電車にて 駅よりわずか二里ばかり
42. 神代にては岩尾滝 大畠には瀬戸の景
ながめてゆけば柳井津 街には醤油木綿縞
43. 千年に遺す徳山に 立てるは殉難七士の碑
その勤王の真心に 涙そそがぬ人あらじ
44. 三田尻よりは宮市の 松崎神社に詣ずべく
大道おりて見るべきは 大村兵部大輔の碑
45. 小郡よりは山口に ゆくべく湯田に浴すべし
小野田の次は厚狭の駅 大嶺支線の乗換場
46. 糸根の松原いと早く 埴生も小月も打ちすぎて
長府に桜の名どころと 聞こえし寺は功山寺
47. 景色のよさに誰も皆 来て住吉の一の宮
あわてて手荷物忘るなよ ここぞ終点下関
48 是より海峡打ちへだて 向いは九州門司港
関門連絡船しげく 行き交う汽笛の声たえず
49. 安徳帝の大御霊 まつれる社は赤間宮
平家の亡びし壇ノ浦 今は栄ゆる町つづき
50. 城山公園桜山 夏は涼しき波に散る
小門(おど)の夜焚の篝火を 花かと見るも心地よや
51. 四時の眺望すぐるるは 亀山神社の岡の上
右には彦島巌流島 左に和布刈(めかり)の鼻みえて
52. これより瀬戸を打ち渡り 九州廻りをして来んか
韓国釜山にゆく船も 煙噴き立て客を待つ
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