4. 九郎判官義経が 敵陣めがけておとしたる
鵯越(ひよどりごえ)やいちのたに 皆この名所の内ぞかし
5. 舞子の松の木の間より まぢかく見ゆる淡路島
夜は岩屋の灯台も 手に取る如く影あかし
6. 明石の浦の風景を 歌によみたる人麿の
社はこれか島がくれ こぎゆく船もおもしろや
7. 加古川おりて旅人の 立ちよる陰は高砂の
松のあらしに伝えくる 鐘も名だかき尾上寺
8. 阿弥陀は寺の音に聞き 姫路は城の名にひびく
ここより支線に乗りかえて ゆけば生野は二時間余
9. 那波の駅から西南 一里はなれて赤穂なり
四十七士が仕えたる 浅野内匠の城のあと
10. 播磨すぐれば焼物の 名に聞く備前の岡山に
これも名物吉備団子 津山へ行くは乗りかえよ
11. 水戸と金沢岡山と 天下に三つの公園地
後楽園も見てゆかん 国へ話のみやげには
12. 霊感今にいちじるく 讃岐の国に鎮座ある
金刀比羅宮に参るには 玉島港より汽船あり
13. 畳おもての備後には 福島町ぞ賑わしき
城の石垣むしのこす 苔に昔の忍ばれて
14. 武士が手に巻く鞆の浦 ここよりゆけば道三里
仙酔島を前にして 煙にぎわう海女の里
15. 浄土西国千光寺 寺の名たかき尾道の
港を窓の下に見て 汽車の眠りもさめにけり
16. 糸崎三原海田市 すぎて今つく広島は
城のかたちもそのままに 今は師団をおかれたり
17. 日清戦争はじまりて かたじけなくも大君の
御旗を進めたまいたる 大本営のありし土地
18. 北には饒津(にぎつ)の公園地 西には宇品の新港
内海波も静かなり 呉軍港は近くして
19. 己斐の松原五日市 いつしか過ぎて厳島
鳥居を前にながめやる 宮島駅につきにけり
20. 汽笛鳴らして客を待つ 汽船に乗れば十五分
早くもここぞ市杵(いちき)島 姫のまします宮どころ
21. 海に出たる廻廊の 板を浮かべてさす汐に
うつる灯籠の火の影は 星か蛍か漁火か
22.毛利元就この島に 城をかまえて君の敵
陶晴賢を誅せしは のこす武臣の鑑(かがみ)なり
23. 岩国川の水上に かかれる橋は算盤の
玉をならべし如くにて 錦帯橋と名づけたり
24. 風に糸よる柳井津の 港にひびく産物は
甘露醤油に柳井縞 からき浮世の塩の味
25. 出船入船たえまなき 商業繁華の三田尻は
山陽線路のおわりにて 馬関に延ばす汽車のみち
26. 少しくあとに立ちかえり 徳山港を船出して
二十里ゆけば豊前なる 門司の港につきにけり
27. 向の岸は馬関にて 海上わずか二十町
瀬戸内海の咽首を しめてあつむる船の数
28. 朝の帆影夕烟 西北さしてゆく船は
鳥も飛ばぬと音にきく 玄界灘やわたるらん
29. 満ち引く汐も早鞆の 瀬戸と呼ばるる此海は
源平両氏の古戦場 壇ノ浦とはこれぞかし
30. 世界にその名いと高き 馬関条約結びたる
春帆楼の跡といて 昔しのぶもおもしろや
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