鉄道唱歌 九州編 (31番〜68番・門司〜八代〜長崎)


31. 門司よりおこる九州の 鉄道線路をはるばると
ゆけば大里の里すぎて ここぞ小倉と人はよぶ
32. これより汽車を乗りかえて 東の浜に沿いゆかば
城野行橋宇島を すぎて中津に至るべし
33. 中津は豊前の繁華の地 頼山陽の筆により
名だくなりし耶馬渓の 見るには道を遠からず
34. 白雲かかる彦山の 右にながめて猶ゆけば
汽車は宇佐にて止まりたり 八幡の宮に詣でこん
35. 歴史を読みて誰も知る 和気清麿が神勅を
請いまつりたる宇佐の宮 あおがぬ人は世にあらじ
36. 小倉に叉も立ちもどり ゆけば折尾の右左
若松線と直方の 道はここにて出あいたり
37. 走る窓より打ち望む 海の景色のおもしろさの
磯に貝ほる少女あり 沖に帆かくる小船あり
38. おとにききたる箱崎の 松かあらぬか一むらの
みどり霞みて見えたるは 八幡の神の宮ならん
39. 天橋立三保の浦 この箱崎を取りそえて
三松原とよばれたる その名も千代の春のいろ
40. 織物産地と知られたる 博多は黒田の城のあと
川をへだてて福岡の 町もまぢかくつづきたり
41. まだ一日とおもいたる 旅路は早くも二日市
下りて見てこん名にききし 宰府の宮の飛梅を
42. 千年のむかし太宰府を おかれしあとは此処
宮に祭れる菅公の 事跡かたらんいざ来れ
43. 醍醐の御代の其はじめ 惜しくも人にそねまれて
身になき罪をおわせられ ついに左遷と定まりぬ
44. 天に泣けども天言わず 地に叫べども地もきかず
涙を呑みて辺土なる ここに月日を送りけり
45. 身は沈めども忘れぬは 海より深き君の恩
かたみの御衣を朝毎に ささげてしぼる袂かな
46. あわれ当時の御心を おもいまつればいかならん
御前の池に鯉を呼ぶ 乙女よ子等よ旅人よ
47. 一時栄えし都府楼の あとをたずねて分け入れば
草葉を渡る春風に なびく菫の三つ五つ
48. 鐘の音きくと菅公の 詩に作られて観音寺
仏も知るや千代までも つきぬ恨みの世がたりは
49. 宰府わかれて鳥栖の駅 長崎ゆきのわかれ道
久留米は有馬の旧城下 水天宮もほどちかし
50. かの西南の戦争に その名ひびきし田原坂
見にゆく人は木葉より おりて道きけ里人に
51. 眠る間もなく熊本の 町に着きたり我汽車は
九州一の大都会 人口五万四千あり
52. 熊本城は西南の 役に名を得し無類の地
細川氏のかたみとて 今はおかるる六師団
53. 町の名所は水前寺 公園きよく池ひろし
宮は紅葉の錦山 寺は法華の本妙寺
54. ほまれの花もさきにおう 花岡山の招魂社
雲か霞か夕ぞらに みゆるは阿蘇の遠煙
55. わたる白川緑川 川尻ゆけば宇土の里
国の名に負う不知火の 見ゆるはここの海と聞く
56. 線路分るる三角港 出で入る船は絶えまなし
松橋すぎて八代と 聞くも心のたのしさよ
57. 南は球磨の川の水 矢よりも早くながれたり
西は天草洋の海 雲かと見ゆる山もなし
58. ふたたびかえる鳥栖の駅 線路を西に乗りかえて
ゆけば間もなく佐賀の町 城にはのこる玉のあと
59. つかれあびる武雄の湯 みやげにするは有田焼
めぐる車輪の早岐より 右にわかるる佐世保道
60. 鎮西一の軍港と その名知られて大村の
湾をしめたる佐世保には 我が鎮守府をおかれたり
61. 南の風をはえと読む 南風崎すぎて川棚の
つぎは彼杵(そのき)か松原の 松ふく風ものどかにて
62. 右にながむる鯛ノ浦 鯛つる船もうかびたる
名も諫早の里ならぬ 旅の心やいさむらん
63. 故郷のたより喜々津とて おちつく人の大草や
春日長与のたのしみも 道尾にこそつきにけれ
64. 千代に八千代の末かけて 栄行く御代は長崎の
港にぎわう百千船 夜は舷灯のうつくしさ
65. 汽車よりおりて旅人の まずは見にゆくは諏訪の山
寺町すぎて居留地に 入ればむかしぞ忍ばるる
66. わが開港を導きし 阿蘭陀船のつどいたる
港はここぞ長崎ぞ 長くわするな国民よ
67. 前は海原はてしなく 外つ国までもつづくらん
あとは鉄道一すじに またたくひまに青森も
68. あしたは花の嵐山 ゆうべは月の筑紫潟
かしこも楽しここもよし いざ見てめぐれ汽車の友




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