鉄道唱歌 満韓鉄道編 (1番〜30番・馬関(下関)〜)


1.汽笛の響きいさましく 馬関(ばかん)を後に漕ぎ出でて
蹴破る荒波百海里 鶏林八道(けいりんはちどう)いづかたぞ
2.日本海の海戦に 大捷(たいしょう)得たりし対馬沖(つしまおき)
あれよと指さす程もなく 船は釜山(ふさん)に着きにけり
3.釜山(ぷさん)は名だたる港にて 韓国屈指の貿易港
出船入船(でふねいりふね)絶間なく 並ぶ市街の賑わしさ
4.船よりあがりて汽車に乗る 京釜(けいふ)線路の初旅路
ものめずらしき草梁(そうりょう)を 出づればまもなく釜山鎮(ぷさんちん)
5.三百尺の山上に 築き捨てたる残塁は
小西行長千歳(こにしゆきながせんざい)雄図(ゆうと)を示す好記念
6.(いにし)え韓国水軍の 牙営(がえい)おかれし東來府(とうらいふ)
東來(とうらい)温泉梵魚寺(ぼんぎょじ)に 遊ぶ旅客も多からん
7.勿禁(ふっきん)駅の甑城(そうじょう)は 威風草木を(なび)かせて
鬼と呼ばれし清正(きよまさ)が 敵を防ぎし(あと)とかや
8.院堂過ぎて三浪津(さんしんろう) 馬山浦(ばざんぽ)ゆきの分岐点
早くも来ぬる密陽(みつよう)は 人口四千の小都会
9.春秋二期に開かるる 名も大邱(たいきゅう)の大市場
集まる商人一万余 土地の(うるお)いいくばくぞ
10.豊太閤(ほうたいこう)の征韓軍 (しばらく)くここに留まりて
其名を残す和館駅(わかんえき) 偉志(いし)千年に朽ちもせず
11.黄金(こがね)の泉湧くという 商業繁華の金泉(きんせん)
つぎたる駅は秋風嶺(しゅうふうれい) 秋風寒く土地高し
12.京釜線路(けいふせんろ)(なか)ばなる 永洞駅(えいどうえき)の近くには
春は花ちる落花台(らっかだい) 秋は紅葉(もみじ)錦城山(きんじょうだい)
13.深川駅(しんせんえき)に名も響く 夏なお寒き滝の水
太田駅(たいでんえき)の西方に 冬は雪見る鶏籠山(けいろうざん)
14.水美しき錦江(きんこう)の 岸に沿いたる芙江駅(ふこうえき)
米と塩との商業に 旅人つどい市栄ゆ
15.葛巨里(きょかつり) 全義(ぜんぎ) 小井里(しょういり) 天安駅(てんあんえき)の南には
温陽(おんよう)温泉名も高し ()みても見ばや急がずば
16.昔は黒田長政(くろだながまさ)明軍(みんぐん)破りし稷山(しょくざん)
過ぎればここぞ成観府(せいかんふ) 安城川(あんじょうがわ)も遠からず
17.かしこに見ゆる牙山(がざん)まで 過ぎし日清戦役の
面影みゆる苦戦の地 思えば夢か夢ならず
18.米の市場の開かるる 烏山(うざん)をすぎて餅店(ぺいてん)
北に眺むる松原は 韓廷廟(かんていびょう)大皇橋(たいこうきょう)
19.西湖(せいこ)の風景おもしろき 水原(すいげん)過ぎて富谷駅(ふこくえき)
京仁線(けいじんせん)に分るるは 始興(しきょう)の次の永登浦(えいとうほ)
20.仁川港(じんせんこう)に在留の 邦人一万三千余
日露の役の手始に 敵艦沈めし浦なるぞ
21.港の賑わい見物し 要務終わりて余暇あらば
日本公園月尾島(げっぴとう) ついでにそれも行て見ん
22.また本線に立ちかえり 間もなく渡る漢江(かんこう)
韓国五江の其の一つ 水利富めども冬(こお)
23.それより京義鉄道(けいぎてつどう)の 基点に名ある龍山を
過ぎれば来る南大門(なんだいもん) 嬉やここは京城(けいじょう)
24.さすがに名高き韓国の 首府の地なれば盛んにて
東西長さ三十町 (へき)には八つの門高し
25.京城隈無(けいじょうくまな)く一覧し 重ねて乗り込む京義線(きょうぎせん)
駅駅過ぎて大同江 渡ればかなたは平壌府(へいじょうふ)
26.あれ見よ二十七年の 役に立ち見の一隊が
打ち破りたる牡丹台(ぼたんだい) 今なお虚空に(そび)えたり
27.定州宣川新義州(ていしゅうせんせんしんぎしゅう) 前は岸うつ波高き
満韓境の鴨緑江(おうりょくこう) あれなれ川は是かとよ
28.黒木軍隊此の川を 烈風破竹の勢いに
渡して揚げたる(とき)の声 まじるか今も水音に
29.水を後ろに乗りうつる 名も軽便の仮鉄道
起点の駅は安東駅(あんとうえき) 近くの名所は九連城(きゅうれんじょう)
30.数十(すうじゅ)の敵砲分捕(ぶんどり)りて 殆ど全滅せしめたる
血戦著名の蛤蟆塘(こうもうとう) それもここより遠からず

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