鉄道唱歌 信州編 (尚栄堂編/大宮〜高崎〜直江津〜新潟)


碓氷(うすい)の西の軽井沢(かるいざわ) 海を抜くこと四千尺
四面に山を(めぐら)して 夏の暑さも知らぬなり
御代田・小諸(みよだ・こもろ)を後にして 田中・大屋(たなか・おおや)上田駅(うえだえき)
真田(さなだ)が城のその趾は さびしき月ぞまもるなる
坂城(さかしろ)出でて西向けば 姨捨山(おばすてやま)に照る月の
田毎(たごと)にうつる秋の夜も 思い知られておもしろし
屋代(やしろ)の里の東北(ひがしきた) 千曲隔てて一里半
松代町(まつしろまち)ときこえしは 象山翁(しょうざんおう)の故郷なり
千曲(ちくま)に近き篠ノ井(しののい)を 過ぎれば鉄橋犀川(さいかわ)
かかりて昔し甲越(こうえつ)の 両将久しく戦いし
川中島(かわなかじま)戦場(いくさば)は 遠く右手にひろがれり
さして語らう(ひま)もなく 急ぐ車に影かくる
日本最古の仏像を 安置せるてふ善光寺(ぜんこうじ)
争いまいる老若の おりてつどえる長野駅(ながのえき)
左に戸隠山(とがくしやま)を見て 着くは豊野(とよの)停車場(すてーしょん)
秋の錦をさながらに 映せる水は琵琶(びわ)の海
いと怖ろしき地獄谷 針の山さへきこゆれど
暑さ忘るる温泉に 楽しく遊ぶ人もあり
牟礼・柏原(むれ・かしわばら)打ち過ぎて 野尻(のじり)()るき芙蓉(ふよう)の湖
(さか)さに映る小富士山(こふじやま) 棹さす波に雪ぞ散る
関川(せきかわ)越えてわけ行けば 田口・関山・新井駅(たぐち・せきやま・あらいえき)
北越(ほくえつ)一の大雪と 世に響く名の高田町(たかだまち)
西に見ゆるは春日山(かすがやま) 上杉氏(うえすぎ)の旧城趾
秋の霜夜に月影を かすめて行くや雁の声
窓より近く直江津(なおえつ)(みなと)も見えて風さむく
(かね)てかくとは聞きぬれど たつ波高し(いそ)の上
右に見ゆるは佐渡島(さどがしま) 左に見ゆるは能登(のと)の国
雲にやあらん山にやと 問えど答えぬ海人(あま)が船
北越線(ほくえつせん)に乗り替えて 春日新田(かすがしんでん)出でぬれば
五つの駅の其の次は 柏崎(かしわざき)にいたるなり
北条(ほうじょう)近くなるままに ゆるぎなき世の不動滝
流れて落つる三層の 下は玉ちる鯖石川(さばいがわ)
いはう君が代長岡(ながおか)に 沿いて流るる信濃川(しなのがわ)
草生津町(くさうづまち)にかけたるは 長生橋(ちょうせいばし)と世に呼ばる
左手にたてる弥彦山(やひこさん) 麓に祭る御社は
越後(えちご)の国の一の宮 弥彦神社(やひこじんじゃ)と知られたり
山の西北一帯は 北越(ほくえつ)一と言い(はや)
有明浦(ありあけうら)の好き景色 眺望(ながめ)は何時も厭きざらん
三条(さんじょう)過ぎて一ノ木戸 加茂(かも)矢代田・新津駅(やしろだ・にいづえき)
五泉町(ごせんまち)とは袴地(はかまじ)に 其名もしるき小都会
越後(えちご)に名高き七不思議 その一つなる火の井戸は
蒲原郡(かんはらぐん)頸城郡(くびきぐん) いたるところに地をうがち
瓦斯(がす)をよばひて燈火(ともしび)に 用いることぞ其の上は
燃ゆる水なり燃ゆる土 と不思議にもかぞへしが
いや開け行く大御代(おおみよ)の 深きめぐみのしるしには
これぞ石油石炭と 知りてあやしむものもなし
ここに北越線(ほくえつせん)つきて 外国人と貿易の
五港の中のその一つ 新潟市(にいがたし)とは川ひとえ
万代橋(ばんだいばし)のこなたなる 沼垂駅(ぬったりえき)につきにけり
見渡す前は佐渡島(さどがしま) 黄金白銀掘り出す
人の労苦は如何ならん 便船あらばわたり行き
順徳院(じゅんとくいん)の御あとを たずねまつらんかしこくも




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