鉄道唱歌 信州編 (29番〜56番・上田〜新潟)


29.田毎(たごと)の月は姨捨(おばすて)の 山に限れる奇観にて
田の()に映る其の影は 坂城(さかしろ)の里の光栄なり
30.稲荷(いなり)の山の八幡(はちまん)屋代(やしろ)に近き西方(にし)にあり
境内(けいだい)最とも清ければ 詣でて頼め旅の無事
31.身を篠ノ井(しののい)の井に清め 車を松代町(まつしろまち)に寄せ
()ひや希世の大傑士 象山(しょうざん)翁の墓所(はかどころ)
32.川中島(かわなかじま)犀川(さいかわ)千曲川(ちくまがわ)との中間(なか)にあり
武田上杉(たけだうえすぎ)両雄が 勝負を決せし古戦場
33.長野(ながの)に四方の人々を 深く帰依する善光寺(ぜんこうじ)
霊験(まこと)にあらたとて 参詣絶ゆる暇もなや
34.左方に戸隠庚申(とがくしこうしん)の 山を望めば気も吉田(よしだ)
右方に製糸に名も高き 須坂(すさか)の町を眺めつつ
35.進みて入るや豊野(とよの)駅 駅に間近き琵琶(びわ)の池
手を引き合いて睦まじく 渡りかくるや和合橋
36.牟礼(むれ)を過ぎて柏原(かしわばら) 野尻(のじり)に近き村里に
芙蓉(ふよう)と云いてさかしまに 小富士の写る湖水あり
37.田口(たぐち)に名を得て赤倉(あかくら)は 旅の疲れを癒すべく
関山(せきやま)越せば妙高(みょうこう)高嶺(たかね)は冬の最中(さなか)なる
38.新井(あらい)を立ちて荒川(あらかわ)の あらき流れともろ共に
北国無双の大雪と 音に高田(たかだ)の町に入る
39.此処は頸城(くびき)の大都会 文化の普及いちじるく
空に聳えて棟高き 校舎の状ぞ見事なる
40.窓より望む春日山(かすがやま) 月影最とも清くして
(かり)の声さえさえ渡り (おもかげ)今も変わらねど
41.かわり行きしは直江津(なおえつ)の みなとの風景賑わしく
出船入り船絶え間なく 弥さかへゆく形況(ありさま)
42.北越線(ほくえつせん)に乗りかえて 春日・新田・犀潟(かすが・にった・さいがた)
潟町(かたまち)駅を後にして 甘き柿崎(かきざき)駅に入る
43.鉢崎(はちざき)駅の東方に 米山(よねやま)薬師の霊地あり
この辺一帯難所にて 青梅川に行く汽車は
44.八つの隧道(とんねる)山をぬけ また海岸に荒波を
破りて進む絶景は 筆にも書にも(まま)されず
45.柏崎(かしわざき)は海陸の (しょう)に当たれる一要地
貨物の出入りしげくして 御代もおのづと安田駅(やすだえき)
46.見も北条(ほうじょう)に来て見れば 動きなき世のためしにや
八石山(はちいしやま)山麓(さんろく)に 不動の滝の名所あり
47.塚の山辺を越す客を 迎え入れるや来迎寺
長門の疲れを慰むる 為に休むか宮の内
48.御代長かれと長岡(ながおか)悠久山(ゆうきゅうさん)の絶頂の
招魂社前にぬかづきつ 戦死の忠魂慰めん
49.運を見附(みつけ)の駅を出で 帯織しめて三条(さんじょう)
町に向かえば名に高き 北国無比の繁栄地
50.西に当たりて巍々然(ぎぎぜん)と 雲に(そび)える高山は
越後の国の一の宮 弥彦神社と知られたり
51.一の木戸をも通り越し 加茂・矢代田(かも・やしろだ)を後にして
入るは新津(にいづ)の秋葉山 秋葉の神に神かけて
52.齢を亀田(かめだ)と競いつつ 汽笛の声と諸共に
北越線の終点地 沼垂(ぬったり)駅に着きにけり
53.汽車を降りて川一重 渡り過ぎれば新潟市(にいがたし)
新潟(にいがた)港は北陸の 第一番の大都会
54.百船千船(ももふねちぶね)絶え間なく 出入り貨客の賑わいは
万代橋(ばんだいばし)の名と共に 栄えゆくこそ目出度(めでた)けれ
55.海を隔てて西の空 かすかに見ゆる一碧(いっぺき)
雲か霞か水鳥か 佐渡の島根の山の色
56.順徳院の御陵(みささぎ)(いつ)き奉りて此処にあり
往きて奉りて御心を 安め奉れや国つ民
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