鉄道唱歌 信州編 (薫志堂/32番〜62番・御代田〜新潟)


32. 晴れ渡りつる空たかく 浅間(あさま)の山に噴く煙
たなびく雲のごとくにて 恵もふかき御代田駅(みよだえき)
33. 小諸(こもろ)田中・大屋(たなか・おおや)をも 過ぎて(つむぎ)の産地なる
上田(うえだ)は四通八達の 家居ならびし(ちまた)なり
34. 進みつ行きて坂城町(さかしろちょう) 田毎(たごと)にうつる月影や
鏡にうかぶ更科(さらしな)姨捨山(おばすてやま)は彼処なり
35. 千曲川原(ちくまかわら)の鉄橋を ()えて篠ノ井停車場(しののいすてーしょん)
やがて汽車路も通じなば 行く松本(まつもと)へ一瞬時
36. 彼方にかすむ広き野は 川中島(かわなかじま)の古戦場
頃は永禄(とり)の年 重九(ちょうく)の月の残んの世
37. はや着きにけり長野市街(ながのまち) 如来のひかる善光寺(ぜんこうじ)
此に隣れる城山(じょうやま)瞰下(かんか)す景色明媚なり
38. (いぬい)に立てる戸隠(とがくし)の 北に高きは妙高山(みょうこうさん)
黒姫山(くろひめさん)と相つづき 谷間をかざる地震(ない)の滝
39. 牟礼・柏原(むれ・かしわばら)あとにして 斑尾山(まだらおさん)の此方なる
芙蓉(ふよう)の湖のさざなみに 山影くだく夏げしき
40. 仰げば峯は雲に入り 瞰下(かんか)す谷は幾千尋(いくせんじん)
めぐりめぐりて大田切(おおたぎり) ここの先には中田切(なかだきり)
41. むかしの道は九十九折(つづらおり) 下りては上がりまた下り
旅人なやむ阻道(そばみち)を 夢路に越すぞうれしけり
42. 田口・関山・新井(たぐち・せきやま・あらい)をも 過ぎて着きけり高田町(たかだちょう)
朔風(さくふう)さむく雪ふれば 市街(まち)を埋めて銀世界
43. 梅や(あんず)や桃の花 桜の花も春来れば
同じき時に咲きみだれ かざる彩りおもしろし
44. はや直江津(なおえつ)に着きぬれば (たつみ)にそびゆる春日山(かすがやま)
むかし築きし城跡は 越の将軍不識庵
45. 麓の寺は林泉寺 上杉世々の香華院(こうげいん)
北にあたれる国分村(こくぶむら) 名のみ残れる国分の址
46. 東をながるる荒川は 船の往来も自在にて
物価は恒に輻輳(ふくそう)し 商業もさかりなり
47. 東を指せる鉄道の 終わるところは新潟(にいがた)
いざや北越鉄道に 乗換なして進ままし
48. 春日新田(かすがしんでん)あとにして 男波女波(おなみめなみ)をながめつつ
はや柿崎(かきざき)に着きければ 真宗始祖の親鸞(しんらん)
49. (しゃく)をとどめて名もしるき 今ものこれる浄福寺
扇屋敷の旧址へ いずれも道は遠からじ
50. 行手にあたる鉢崎(はちざき)の 此方彼方の磯づたい
風にひらける波の花 散りては雪と見まがいぬ
51. 潜りつ抜けつ過ぎにけり 八つのトンネル出つ入りつ
忽ち闇となれるかと 思えばはやも茜さす
52. 海の面のまばゆさに 背きて走る東には
高く峙つ米山(よねやま)の 薬師如来は名にたかし
53. 海と別るる柏崎(かしわばら) 東と西の渋海川(しぶめがわ)
来りむかえる来迎寺 小千谷片貝与板など
54. 絹織物の産地へは ゆきかう人の跡絶えず
信濃川辺(しなのかわべ)長岡(ながおか)や 景色すずしき遠見台
55. 齢を祝う長生橋(ちょうせいきょう) 高くかかりて虹に似て
下を走れる蒸気船 吐ける煙は雲と見ゆ
56. 戊辰(ぼしん)の役にたたかいし 高安寺坂かしこぞと
指さしつつも三条(さんじょう)に やがて車はとどまりぬ
57. 古来つたえし七不思議 その一つにぞ数えたる
如法寺村の燃ゆる井戸 名は遠近(おちこち)に聞こえたり
58. ひらけ行く世ともろともに 瓦斯(がす)てふ燃ゆるものなれど
(ことわり)せめていみじくも 知らぬ人こそなかりけり
59. 加茂・矢代田(かも・やしろだ)も夢の間に 新津(にいづ)の彼方秋葉山(あきばさん)
その(いただき)に噴き沸ける 池の(みぎは)は冬知らず
60. 信濃川(しなのかわ)なる此方にぞ 駅を据えたる沼垂(ぬったり)
水を隔つる新潟市(にいがたし) 此処は五港の一なり
61. 出つ入りつの百船は ゆきかう様も勇ましく
川の(めぐ)れる白山の 常磐が岡の公園地
62. 晴るる眺の日和山 沖をはしれる真帆片帆
淡くかすめる佐渡島(さどがしま) あかぬ景色ぞうれしけり

1番〜31番はこちら



ご意見や誤字・脱字のご指摘はメール、または掲示板までお願いします
home