6. 西にそびゆる富士の嶺 朝日にまばゆくさす影は
雪に照り沿い輝きて 画にもかかまく景色なり
7. 奥州線に乗換の
大宮あとに馳せ出でば
彼方にしげる
一叢の 松の林にしたたれる
8. 緑をこめし其の中に 鎮まりませる
御社は
武蔵の国の一の宮
氷川神社とよび奉る
9.
上尾・桶川打ちすぎて 雁にゆかりの
鴻巣や
古来名だかき
勝願寺 千歳を過ぎし寺かとや
10.
吹上あとに
熊谷は 連生法師
直実の
あわれとどむる古跡に 袖しぼるこそ悲しけれ
11. 西にかすめる
秩父山 山の此方の
満福寺
昔をしのぶ
重忠の 墳墓いとど苔むせり
12.
深谷にとなる
岡部には
衆生済度の普済寺や
ここに遺れる六弥太の 古跡訪ふも哀なり
13. いつしか着ける
本庄の 眺もきよき
小倉山
名残を惜しむ
勅使河原 はや
上野に入りにけり
14.
新町よりはひつじさる
神流の川の
水上に
怪岩奇岩たちならぶ 珠をもくだき雪ぞとぶ
15. 右に聳ゆる
赤城山 見つつ着きたる
倉賀野や
多胡に
碑見て行けん 友にはなしの土産にも
16.
佐野の船橋いづこぞと 古歌をたづねて跡とへど
きしる車の音に消され 名も
高崎に着きにける
17. 若葉しげれる公園や
頼政神社神さびて
代々の藩主の菩提寺は 松に名だかき大信寺
18. 西に分るる鉄道は 製糸に其の名知られたる
富岡過ぎて
下仁田へ 走れば二十一
哩
19. 鉄道馬車は
渋川へ 山路たどれば
伊香保の湯
榛名の湖に影したす 小富士の姿やさしけれ
20. 汽車路東に分るれば
前橋市へは十五分
伊勢崎・桐生束の間に いにし面影のこしたる
21.
足利黌は今もなお めぐみをのこす其の本は
二千余年のそのむかし
小野篁なりとや
22. 水や逆賊
蹶起の地 その跡だにも見分けねど
同じき祖の
新田氏 今もかがやく
金山を
23.
佐野や
栃木を過ぎぬれば 奥州線の
小山駅
やがて支線を立ちもどり 再びきたる
高崎市
24.
飯塚過ぎて彼方には
榛名の峰は雲を衝き
見渡すかぎり一帯の
桑園いとど繁りたり
25. 飼養のさかる
安中に 送られつつも
磯部駅
夙にきこえし鉱泉は 土地の名たかきしるしなり
26. 西に
魏峩たる
妙義山 三つの
巓いやたかく
中にもたかき白雲峰 夏の景色やよからまし
27. 沿いて遡るは
碓氷川 右と左の山ちかく
松井田あとに
横川や 過ぎる線路は上り坂
28. そも此の山は
上野と
信濃の国の境なる
碓氷峠の
阻路に 築きなしたる鉄道は
29. 常闇なせるトンネルを 過ぎつる数は二十六
上りはつれば
軽井沢 過ぎ来し方を眺むれば
30.
小碓の
皇子のよぎられて 姫をしたへるまごころの
吾嬬はやとのたまひし 古跡はいずこ此のあたり
31. ここは紅葉の名勝地 秋の錦をさらす時
夕陽てりそいてかやけば 眺望もいと増すとかや
ご意見や誤字・脱字のご指摘はメール、または掲示板までお願いします
home