地理唱歌 汽車の旅(長野〜直江津〜沼垂/信州・北越線)


第三 長野〜直江津 信州線

無情を告ぐる鐘の音に 吉田・豊野(よしだ・とよの)も夢と過ぎ
つきしは牟礼(むれ)停車場(ステーション) 四方の眺望(ながめ)ぞおもしろき
戸隠山(とがくしやま)屹然(きつぜん)と 怒るが如く(そばだ)ちて
黒姫山(くろひめやま)は優然と 笑うが如く相対す
煙や(なび)柏原(かしわばら) 東へ一里野尻(のじり)
ささ波清き芙蓉湖(ふようこ)や 周囲三里三十町
いざ別れゆく信濃路の 名残とどむる関川(せきかわ)
渡るかなたは田口(たぐち)駅 はや越後路に入りにけり
赤倉(あかくら)温泉名に高く 妙高山(みょうこうさん)を背に負いて
(はるか)に望む北の海 唯一目に見渡さる
関川(せきかわ)つたいめくりゆく (わだち)とどむる関山(せきやま)
片貝川の鉄橋を 渡ればやがて新井(あらい)
県内第二の都会なる 高田(たかだ)の町もとく過ぎて
汽笛の声に驚けば はや直江津(なおえつ)に着きにけり
近来開けし町にして 北海主要の良港ぞ
港内帆柱(ほばしら)林立し 船船常に出入りす
春日山(かすがやま)頭いにしえの 姿はあとも遺らねど
霜夜を照らす月かげに 泣き行く雁や忍ぶらん

第四 直江津〜沼垂 北越線

汽笛一声いさましく はや我が汽車はいでてゆく
春日新田犀潟(かすがしんでんさいがた)や 浜の眺望(ながめ)のおもしろさ
潟町・柿崎(かたまち・かきざき)いつしかに なびく煙と消えゆきて
青海川(あおうみがわ)を打ち渡り つきしはいずこ柏崎(かしわばら)
安田・北条・塚山(やすだ・ほうじょう・つかやま)や 送り迎うる駅と駅
来迎寺内の鐘のこえ いずこの空にひびくらん
宮内(みやうち)すぎて長岡(ながおか)や 西を流るる信濃川(しなのがわ)
流程およそ一百里 本州一の長流ぞ
長生橋(ちょうせいばし)の名も高く 汽船の煙空を焼き
その川上の小千谷(おじや)町 越後(ちぢみ)の名産地
見附・帯織(みつけ・おりおび)いつしかに 煙と消えて三条(さんじょう)
高安・寺坂(たかやす・てらさか)ここはこれ 戊辰(ぼしん)の役の激戦地
一の木戸経て青海(あおうみ)加茂(かも)の社の玉垣に
ぬさをささげて旅人は 行く手の道を祈るらん
矢代田・新津(やしろだ・にいづ)草生水(くさうず)や 火の出づる井と名に高き
越後の国の昔より 七不思議なる里語(さとがたり)
亀田(かめだ)も越えて沼垂(ぬったり)や 北越線のとまりなる
万代橋(ばんだいばし)を限りにて 渡ればここは新潟市(にいがたし)
県内一の大都会 昔は五港の一ときく
港内船舶雲集し 街は商業繁栄す
月影白む有明の 浦回(うらわ)に出でて眺むれば
弥彦神社はるばると 白山森に相対す
万代島(ばんだいじま)柳島(やなぎじま) あかぬ眺望(ながめ)の北の海
白帆のかげもほのぼのと 沖に霞むや佐渡島(さどがしま)




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