鉄道唱歌 北陸編 (1番〜36番・上野〜柏崎)


1. 車輪のひびき笛の声 みかえる跡に消えてゆく
上野(うえの)の森の朝月夜(あさつきよ) 田端(たばた)は露もまださむし
2. 見上げる岸は諏訪の台(すわのだい) それにつづきて秋の夜は
道灌山(どうかんやま)の虫のねを ここまで風を送るらん
3. 見よや王子(おうじ)の製紙場 はや窓ちかく(きた)りたり
すきだす紙の年にます 国家の富もいくばくか
4. 春はさくらの飛鳥山(あすかやま) 秋は紅葉(もみじ)の滝の川
運動会の旗たてて かける生徒のいさましさ
5. まもなくきたる赤羽(あかばね)品川(しながわ)ゆきの乗換場(のりかえば)
目白(めじろ) 目黒(めぐろ)の不動にも よれや序で(ついで)の道なれや
6. (わらび)すぎれば浦和(うらわ)にて その公園は調の宮(つきのみや)
埼玉県(さいたまけん)の県庁も 此の地にこそは置かれたれ
7. 大宮(おおみや)おりて八九町(はつくちょう) ゆけば氷川(ひかわ)の公園地
(その)は蛍に名も高く 宮は武蔵(むさし)の一の宮
8. 上尾(あげお) 桶川(おけがわ) 鴻の巣(こうのす)に 近き吉見(よしみ)百穴(ひゃっけつ)
古代穴居(けっきょ)の人のあと 見るも学びの一つなり
9. 吹上(ふきあげ)すぎてながめやる 熊谷(くまがや)土手の花ざかり
次郎直実(じろうなおざね)生まれたる 村の名今につたえたり
10. 深谷(ふかや) 本庄(ほんじょう) 神保原(じんぼはら) 左に雲のあいだより
みゆる秩父(ちちぶ)のふもとなる 大宮(おおみや)までは馬車もあり
11. はや新町(しんまち)倉賀野(くらがの)も またたくひまに行きすぎて
今ぞ上州高崎(たかさき)繁華(はんか)の町につきにける
12. 町の東北前橋(まえばし)へ 汽車にてゆけば十五分
群馬県庁所在の地 上野(こうずけ)一の大都会
13. 若葉紅葉(わかばもみじ)によしときく 伊香保(いかほ)の温泉榛名山(はるなさん)
高崎(たかさき)よりは程近く 避暑にも人のゆくところ
14. みわたすかぎり青々と 若葉波うつ桑畑
山のおくまで養蚕(ようさん)の ひらけしさまの忙しさ
15. 線路わかれて前橋(まえばし)の かたにすすめば織物と
製糸のわざに名も高き 桐生(きりゅう) 足利(あしかが)とおからず
16. 高崎(たかさき)いでて安中(あんなか)の つぎは磯部(いそべ)の温泉場
うしろをゆくは碓氷川(うすいがわ) まえに立てるは妙義山(みょうぎさん)
17. (ほこ)(つるぎ)(のこぎり)か 獅子か猛虎か荒鷲(あらわし)
虚空(こくう)に立てる岩のさま 石門(せきもん)たかく雲をつく
18. あとに見かえる松井田(まついだ)の 松のみどりもかげきえて
はや横川(よこかわ)につきにけり おりよ人々水のみに
19. これより音にききいたる 碓氷峠(うすいとうげ)のアプト式
歯車つけておりのぼり 仕掛(しかけ)は外にたぐいなし
20. くぐるトンネル二十六 ともし火うすく昼くらし
いずれば天地うちはれて 顔ふく風の心地よさ
21. 夏のあつさもわすれゆく 旅のたもとの軽井沢(かるいざわ)
はや信州路(しんしゅうじ)のしるしとて 見ゆる浅間(あさま)の夕煙
22. くだる道には追分(おいわけ)の 原とよばるる広野あり
桔梗(ききょう)かるかや女郎花(おみなえし) 秋の旅路はおもしろや
23. 御代田(みよた) 小諸(ころも)とすぎゆけば 左に来る千曲川(ちくまがわ)
立科山(たてしなやま)をながれ出て 末は越後(えちご)の海に入る
24. 諏訪の湖水をみる人は 大屋(おおや)をおりて和田峠(わだとうげ)
こえれば五里の道ぞかし 山には馬も駕籠(かご)もあり
25. 上田(うえだ)をあとに走りゆく 汽車は坂城(さかき)に早つきぬ
川のかなたにながめやる 山は姨捨月見堂(おばすてつきみどう)
26. 田毎(たごと)の月の風景も 見てゆかましを秋ならば
雲をいただく冠着(かむりぎ)の 山は左にそびえたり
27. 屋代(やしろ) 篠ノ井(しののい)うちすぎて わたる千曲(ちくま)犀川(さいがわ)
間の土地をむかしより 川中島(かわなかじま)と人はよぶ
28. ここに竜虎のたたかいを いどみし二人の英雄も
おもえば今は夢のあと むせぶは水の声ばかり
29. 長野(ながの)に見ゆる大寺(おおてら)は 是ぞしなのの善光寺(ぜんこうじ)
むかし本田(ほんだ)義光(よしみつ)が ひろいし仏なりとかや
30. ここにどとまるひまあらば 戸隠山(とがくしやま)にのぼり見ん
飯綱の原(いずなのはら)のほととぎす なのる初音もききがてら
31. 豊野(とよの)牟礼(むれ)柏原(かしわばら) ゆけば田口(たぐち)早越後(はやえご)
軒まで雪の降りつむと ききし高田(たかだ)はここなれや
32. 雪にしるしの竿(さお)たてて 道のしるしも此あたり
ふぶきの中にうめらるる なやみはいかに冬の旅
33. 港にぎわう直江津(なおえつ)に つきて見そむる海のかお
山のみなれし目には叉 沖の白帆(しらほ)ぞ珍しき
34. 春日新田(かすがしんでん) 犀潟(さいがた)を すぎれば(きた)柿崎(かきざき)
しぶしぶ茶屋は親鸞(しんらん)の 一夜宿りし跡と聞く
35.鉢崎(はちざき)すぎて米山(よねやま)の くぐるトンネル七つ八つ
いづれば広きわたの原 佐渡(さど)の国までくまもなし
36.みわたす空の青海川(おうみがわ) おりては(しお)もあみつべし
石油のいづる柏崎(かしわざき) これより海とわかれゆく

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