鉄道唱歌 東海道編 (1番〜33番・東京〜名古屋)


1. 汽笛一声新橋を はや我汽車は離れたり
愛宕の山に入りのこる 月を旅路の友として
2. 右は高輪泉岳寺 四十七士の墓どころ
雪は消えても消えのこる 名は千載(せんざい)の後までの
3. 窓より近く品川の 台場も見えて波白く
海のあなたにうすがすむ 山は上総(かずさ)か房州(ぼうしゅう)か
4. 梅に名を得し大森の すぐれば早も川崎の
大師河原は程ちかし いそげや電気の道すぐに
5. 鶴見神奈川あとにして ゆけば横浜ステーション
湊(みなと)見れば百船(ももふね)の 煙は空をこがすまで
6. 横須賀ゆきは乗換と 呼ばれておるる大船の
つぎは鎌倉鶴ヶ岡 源氏の古跡や訪ね見ん
7. 八幡宮の石段に 立てる一木の大鴨脚樹(おおいちょう)
別当公暁(くぎょう)のかくれしと 歴史にあるは此陰よ
8. ここに開きし頼朝が 幕府のあとは何かたぞ
松風さむく日は暮れて こたえぬ石碑は苔あおし
9. 北は円覚建長寺 南は大仏星月夜
片瀬 腰越 江ノ島も ただ半日の道ぞかし
10. 汽車より逗子をながめつつ はや横須賀に着きにけり
見よやドックに集まりし わが軍艦の壮大を
11. 支線をあとに立ちかえり わたる相模の馬入川
海水浴に名を得たる 大磯みえて波すずし
12. 国府津おるれば馬車ありて 酒匂(さかわ)小田原とおからず
箱根八里の山道も あれ見よ雲の間より
13. いでてはくぐるトンネルの 前後は山北 小山駅
今もわすれぬ鉄橋の 下ゆく水のおもしろさ
14. はるかにみえし富士の嶺は はや我そばに来りたり
雪の冠 雲の帯 いつもけだかき姿にて
15. ここぞ御殿場夏ならば われも登山をこころみん
高さは一万数千尺 十三州もただ一目
16. 三島は近年ひらけたる 豆相線路のわかれみち
駅には此地の名を得たる 官幣大社の宮居あり
17. 沼津の海に聞こえたる 里は牛伏 我入道
春は花咲く桃のころ 夏はすずしき海のそば
18. 鳥の羽音におどろきし 平家の話は昔にて
今は汽車ゆく富士川を 下るは身延の帰り船
19. 世に名も高き興津鯛 鐘の音ひびく清見寺(せいけんじ)
清水につづく江尻より ゆけば程なき久能山
20.三保の松原 田子の浦 さかさにうつる富士の嶺を
波にながむる船人は 夏も冬とや思うらん
21. 駿州一の大都会 静岡いでて安部川を
わたればここぞ宇津の谷の 山きりぬきし洞の道
22. 鞘より抜けておのずから 草薙はらいし御剣の
御威(みいつ)は千代に燃ゆる火の 焼津の原はここなれや
23. 春咲く花の藤枝も すぎて島田の大井川
むかしは人を肩にのせ わたりし話も夢のあと
24. いつしか又も闇となる 世界は夜かトンネルか
小夜の中山 夜泣石 問えども知らぬよその空
25. 掛川 袋井 中泉 いつしかあとに早なりて
さかまき来る天龍の 川瀬の波に雪ぞちる
26. この水上にありと聞く 諏訪の湖水の冬げしき
雪と氷の懸け橋を わたるは神か里人か
27. 琴ひく風の浜松も 菜種に蝶の舞坂も
うしろに走る愉快さを うたかた磯の波のこえ
28. 煙を水に横たえて わたる浜名の橋の上
たもと涼しく吹く風に 夏ものこらずなりにけり
29. 右は入海しずかにて 空には富士の雪しろし
左は遠州灘ちかく 山なす波ぞ砕けちる
30. 豊橋おりて乗る汽車は これぞ豊川稲荷道
東海道にてすぐれたる 海のながめは蒲郡
31. 見よや徳川家康の おこりし土地の岡崎を
矢矧(やはぎ)の橋に残れるは 藤吉郎のものがたり
32. 鳴海しぼりの産地なる 鳴海に近き大高を
下りておよそ一里半 ゆけば昔の桶狭間
33. めぐみ熱田の御やしろは 三種の神器の一つなる
その草薙の神つるぎ あおげや同胞四千万

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