4. 靫(うつぼ)の東に北御堂 阿波座の東に南御堂
いずれも参詣数多き 一向宗の掛所なり
5. 新町過ぎて四橋の 風景一目に見え渡る
線路もここは交叉点 水は十字に流れたり
6. それより東に佐屋野橋 心斎・三休・長堀の
橋々過ぎて板屋橋 末吉橋こそ終点よ
7. 長堀過ぐれば北堀江 下車して人の詣ずるは
其名も尊き阿弥陀池 天台宗の御寺なり
8. 見物四時に賑わうは 道頓堀の五芝居
乗客日夜絶えざるは 出で入る汽車の湊町
9. 大阪相撲の大場所も 難波市場も程近く
新川橋のほとりには 黄檗(おうばく)著名の鉄眼寺
10. 大阪付近に聞こえたる 住吉・浜寺・和歌の浦
見に行く人の乗り下るる 処は難波の停車場
11. 今宮恵比寿に参詣の 老若群集す恵比寿町
はや終点と呼ばわれて 下車して名所を見廻らん
12. 安井・ 清水・ 一心寺 歴史を語る茶臼山
四天王寺の空遠く 仰げば五重の塔高し
13. また電車にて立ち帰る 西長堀の変圧所
ここは特種の軌条にて ダイヤモンドの名もしるし
14. 宇和島・富田屋・問屋橋 白髪・鰹座打ち過ぎて
玉造橋の南には 土佐の稲荷の社あり
15. 御代の栄えの色深き 松代・千代崎・身禊橋
天満天神御旅所は あれよと誰も伏し拝む
16. 築港行きもにぎわしく ゆけば九条の発電所
行く手に響く体操の 声は市岡中学校
17. 磯路まぢかく来たれども 波は音せぬ夕凪や
さす朝潮の心地よく 浮かぶ千船の帆は白し
18. 三条過ぎて行く程に 大阪湾の海見えて
はや築港の桟橋に 止まる電車の速やかさ
19. 天保二年の春の頃 全市の川の土砂を
積みたて築きたる天保山 灯明台の名も高し
20. 今は明治の聖代に 海上一里埋め立てて
港作りし大工事 茅渟(ちぬ)の浦風身に清し
21. 今日半日の隙を得て 広き市内を縦横に
巡るは御代の御恵ぞ 唯それ電車の恩得ぞ
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