鉄道唱歌 関西・参宮・南海編 (1番〜30番・網島〜伊勢〜加茂)


1. 汽車をたよりに思い立つ 伊勢や大和の国めぐり
網島いでて関西の 線路を旅路の始にて
2. 造幣局の朝ざくら 桜の宮の夕すずみ
名残を跡に見かえれば 城の天守も霞ゆく
3. 咲くや菜種の放出(はなてん)も 過ぎて徳庵住の道
窓より近き生駒山 手に取る如く聳えたる
4. 四条畷に仰ぎみる 小楠公の宮どころ
ながれも清き菊水の 旗風いまも香らせて
5. 心の花も桜井の 父の遺訓を身にしめて
引きは返さぬ武士(もののふ)の 戦死のあとは此土地よ
6. 飯盛山をあとにして 星田すぎれば津田の里
倉治の桃の色ふかく 源氏の滝の音たかし
7. 柞(ははそ)の森と歌によむ 祝園すぎて新木津の
左は京都右は奈良 奈良は帰りに残さまし
8. 京都の道に名を得たる 駅は玉水宇治木幡
佐々木四郎の先陣に 知られし川もわたるなり
9. 共仁(くに)の都の跡と聞く 加茂を出づれば左には
木津川しろく流れたり 晒せる布の如くにて
10. 川のかなたにながめゆく 笠置の山は元寇の
宮居の跡と聞くからに ふるは涙か村雨か
11. 水をはなれて六丈の 高さをわたる鉄の橋
すぎればここぞ大河原 河原の岩のけしきよさ
12. 上野は伊賀の都会の地 春はここより汽車おりて
影もおぼろの月ヶ瀬に 梅みる人の数おおし
13. 月は姨捨須磨明石 花はみよしの嵐山
天下一つの梅林と きこえし名所は此山ぞ
14. 伊賀焼いづる佐那具の地 芭蕉うまれし柘植の駅
線路左にわかるれば 迷わぬ道は草津まで
15. 鈴鹿の山のトンネルを くぐれば早も伊勢の国
筆捨山の風景を 見よや関より汽車おりて
16. 愛知逢坂鈴鹿とて 三つの関と呼ばれたる
昔の跡は知らねども 関の地蔵は寺ふるし
17. 巌にあそぶ亀山の 左は尾張名古屋線
道にすぎゆく四日市 舟の煙や絶えざらん
18. 万古の焼と蛤の その名知られし桑名町
日も長島の西東 揖斐と木曽の川長し
19. 亀山城をあとにして 一身田も夢のまに
走ればきたる津の町は 参宮鉄道起点の地
20. 町の社に祭らるる 神は結城の宗広と
きこえし南朝忠義の士 まもるか今も君が代を
21. 阿漕が浦に引く網の 名も高茶屋の雲出川
わたりながらも眺めやる 桃のさかりやいかならん
22. 木綿産地の松坂は 本居翁の墳墓の地
国学界の泰斗にて あおがぬ人はよもあらじ
23. 田丸の駅に程ちかき 斎宮村は斎王の
むかし下りて此国に 住ませ給いし御所の跡
24. 轟きわたる宮川の 土手に桜の花ざかり
雲か霞か白雪か におわぬ色の波もなし
25. 伊勢の外宮のおはします 山田に汽車は着きにけり
参詣いそげ吾友よ 五十鈴の川に御祓して
26. 五十鈴の川の宇治橋を わたればここぞ天照す
皇大神の宮どころ 千木たかりしてたち給う
27. 神路の山の木々あおく 御裳裾川の水きよし
御威は尽きじ千代かけて いづる朝日ともろともに
28. 伊勢と志摩とにまたがりて 雲居にたてる朝熊山
のぼれば富士の高嶺まで 語り答えるばかりにて
29. 下りは道を踏みかえて 見るや二見の二つ岩
画に見しままの姿にて 立つもなつかし海原に
30. 今ぞめでたく参宮に すまして跡に立ちかえる
汽車は加茂より乗りかえて 奈良の都をめぐりみん

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