鉄道唱歌 北陸編 (37番〜72番・柏崎〜新潟《佐渡》直江津〜米原)


37. 安田(やすだ) 北條(きたじょう) 来迎寺(らいこうじ) 宮内(みやうち)すぎて長岡(ながおか)
町は名だたる繁華(はんか)の地 製油の(けむり)そらにみつ
38. 汽車の窓より西北(にしきた)に ゆくゆく望む弥彦山(やひこやま)
宮は国幣中社(こくへいちゅうしゃ)にて 参拝男女四時たえず
39. 弥彦(やひこ)にゆくは三条(さんじょう)に おりよと人はおしえたり
吾身(わがみ)は何も祈らねど 祈るは君が御代(きみがみよ)のため
40. 加茂(かも)には加茂の宮(かものみや)ありて 木の間の鳥居いと清く
矢代田駅(やしろだえき)の近くには 金津(かなづ)の滝の音たかし
41. 十一年の御幸(みゆき)の日 かたじけなくも御車(みぐるま)
とどめ(たま)いし松かげは 今この里にさかえたり
42. もみじは新津(にいつ) 秋葉山(あきばやま) 桜は亀田(かめだ) 通心寺(つうしんじ)
わするな手荷物傘鞄 はやここなるぞ沼垂(ぬったり)
43. おりればわたる信濃川(しなのがわ) かかれる橋は万代(ばんだい)
名も君が代とときはにて 長さは四百数十間
44. 川のかなたは新潟市(にいがたし) 舟ゆく水の便(たたり)よく
わたせる橋をかぞえれば およそ二百もありとかや
45. 春は白山公園地(はくさんこうえんち) 一つににおう梅桜(うめさくら)
夏は涼しき日和山(ひよりやま) 鯛つる舟も目の前に
46. 汽船の煙海をそめ 商家の軒は日をおおう
げにも五港の一つにて 戸数万余の大都会
47. 新潟港(にいがたこう)を船出して 海上わずか十八里
佐渡(さど)に名高き鉱山(こうざん)を 見てかえらんも益あらん
48. 佐渡(さど)には真野(まの)の山ふかく 順徳院(じゅんとくいん)御陵(ごりょう)あり
松ふく風は身にしみて (たもと)しぼらぬ人もなし
49. 波路やすけく直江津(なおえつ)に かえりてきけば越中(えっちゅう)
伏木(ふしき)にかよう汽船あり いざのりかえて渡海せん
50. 富山(とやま)越中繁華(えっちゅうはんか)の地 ここよりおこる鉄道は
加賀越前(かがえちぜん)をつらぬきて 東海道(とうかいどう)にであうなり
51. 薬に名ある富山市(とやまし)神通川(じんつうがわ)の東岸
はるかに望む立山(たてやま)は 直立九千九百尺
52. 商業繁華の高岡(たかおか)を すぎて福岡(ふくおか) 石動(いするぎ)
つぎに(きた)るは津幡駅(つばたえき) 七尾(ななお)にゆかば乗りかえよ
53. 加賀越中(かがえっちゅう)の境なる 倶利伽藍山(くりからやま)義仲(よしなか)
五百の牛に火をつけて 平家(へいけ)攻めたる古戦場
54. 津幡(つばた) 七尾(ななお)のその間 すぎゆく駅は八九箇所
邑智(おうち)の潟の青波に さおさす舟もうらやまし
55. 七尾(ななお)能登(のと)の一都会 入海ひろく舟おおし
ちかき和倉(わくら)の温泉は 町きよらかに客たえず
56. 津幡(つばだ)にかえり乗りかえて ゆけば金沢(かなざわ)ステーション
百万石の城下とて さすが賑わう町のさま
57. 名も兼六(けんろく)の公園は 水戸(みと) 岡山(おかやま)と諸共に
かぞえられたる我が国の 三公園の其一つ
58. 柳みどりに花赤く おちくる滝の水白し
雲にそびゆる銅像は 西南役(せいなんえき)の記念碑よ
59. 第九師団も県庁も 皆此町に集まりて
海の外までひびきたる その産物は九谷焼(くたにやき)
60. 松任(まつとう) 美川(みかわ)うちすぎて わたる手取(てとり)の川上に
雪を常磐(ときわ)白山(はくさん)は 雲間にたかくそびえたり
61. 小松(こまつ)の北におとたかく ながるる水は安宅川(あたかがわ)
安宅の関(あたかのせき)は何くぞと 問わば嵐やこたえらん
62. おりたく柴の動橋(いぶりはし) 武士が帯びたる大聖寺(だいしょうじ)
こころ細呂木(ほそろぎ)すぎゆけば いろはの金津(かなつ)むかえたり
63. 三国港(みくにみなと)の海に入る 日野川(ひのがわ)こえて福井駅(ふくいえき)
ここに織り出す羽二重(はぶたえ)は 輸入の高も数千万
64. 大土呂(おおどろ) 鯖江(さばえ)あとにして 武生(たけふ) 鯖波(さばなみ)はしりゆく
汽車は今こそ今庄(いまじょう)に つきて(ひうち)の城も見つ
65. 海のながめのたぐいなき 杉津(すいづ)をいでてトンネルに
入ればあやしやいつのまに 日はくれはてて闇なるぞ
66. 敦賀(つるが)はげにも良き港 おりて見てこん名どころを
気比の松原(けひのまつばら) 気比の海(けひのうみ) 官幣大社気比の宮(かんぺいたいしゃけひのみや)
67. 身を勤王にたおしたる 耕雲斎(こううんさい)の碑をとえば
松の木かげを指さして あれと子供はおしえたり
68. 疋田(ひきだ) 柳瀬(やながせ) 中ノ郷(なかのごう) すぎゆく窓に仰ぎみる
山は近江(おうみ)賤ヶ岳(しずがたけ) 七本鎗の名も高し
69. 豊太閤(ほうたいこう)の名をとめし (くつわ)の森は木之本(きのもと)
地蔵と共に人ぞしる 汽車の進みよ待てしばし
70. 縮緬産地(ちりめんさんち)長浜(ながはま)に いでて見渡す琵琶の海(びわのうみ)
大津(おおつ)にかよう小蒸気は 煙ふきたて人をまつ
71. 駅夫の声におどろけば 眠はさめて米原(まいばら)
つきたる汽車の速かさ みかえる伊吹(いぶき)雲ふかし
72. おもえば汽車のできてより 狭くなりたる国の内
いでし上野(うえの)の道かえて いざやかえらん新橋(しんばし)

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