鉄道唱歌 奥州・盤城線編 (33番〜64番・一ノ関〜《常磐経由》〜上野)


33. 阿部(あべ)貞任(さだとう) 義家(よしいえ)(いくさ)ありし衣川(ころもがわ)
金色堂(こんじきどう)を見る人は ここにておりよ平泉(ひらいずみ)
34. すぎゆく駅は七つ八つ 山おもしろく野は広し
北上川(きたかみがわ)を右にして つくは(いず)くぞ盛岡市(もりおかし)
35. 羽二重(はぶたえ)おりと鉄瓶(てつびん)は 市の名産と知られたり
岩手(いわて)の山の(みね)よりも 南部(なんぶ)の馬の名ぞ高き
36. 好摩(こうま) 川口(かわぐち) 沼宮内(ぬまくない) 中山(なかやま) 小鳥谷(こずや)一ノ戸(いちのへ)
すぎゆくままに変わりゆく 土地の言葉もおもしろや
37. 尻内(しりうち)こせば打ちむれて 遊ぶ野馬の古間木(ふるまき)
今日ぞ始めて陸奥(みちのく)の 海とは(これ)かあの船は
38. 野辺地(のへじ)の湾の左手に 立てる岬は夏泊(なつどまり)
とまらぬ汽車のすすみよく 八甲田山(はっこうださん)も迎えたり
39. 渚に近き湯野島(ゆのしま)を 見つつくぐれるトンネルの
先は野内(のない)浦町(うらまち)か 浦の景色の晴れやかさ
40. 勇む笛の音いそぐ人 汽車は着きけり青森(あおもり)
むかしは陸路二十日道(はつかみち) 今は鉄道一昼夜
41. 津軽(つがる)瀬戸(せと)を中にして 函館(はこだて)までは二十四里
ゆきかう船の煙にも 国のさかえは知られけり
42. 汽車のりかえて弘前(ひろさき)に あそぶも旅の楽しみよ
店にならぶは津軽塗(つがるぬり) 空に立てるは津軽富士(つがるふじ)
43. 帰りは線路の道かえて 海づたい進まんと
仙台(せんだい)すぎて馬市の 岩沼(いわぬま)よりぞ分かれゆく
44. 道は磐城(いわき)をつらぬきて 常陸(ひたち)にかかる磐城線(いわきせん)
ながめはてなき海原は 亜米利加(あめりか)までやつづくらん
45. 海にしばらく別れゆく 小田(おだ)の緑の中村(なかむら)
陶器産地と()ねて聞く 相馬(そうま)の町をひかえたり
46. 中村(なかむら)いでて打ちわたる 川は真野川(まのがわ) 新田川(にったがわ)
原の町(はらのまち)より歩行して 妙見(みょうけん)もうでやこころみん
47. 浪江(なみえ)なみうつ稲の穂の 長塚(ながつか)すぎて(ゆたか)なる
里の富岡(とみおか) 木戸(きど) 広野(ひろの) 広き海原みつつゆく
48. しばしばくぐるトンネルを 出でてはながむる浦の波
岩には休む(かもめ)あり 沖には渡る白帆(しらほ)あり
49. 君が八千代の久ノ浜ひさのはま 木奴美ヶ浦(こぬみがうら)の波ちかく
おさまる国の平町(たいらまち) 並びが岡のけしきよし
50. (つづら) 湯本(ゆもと)をあとにして ゆくや(いずみ)の駅の(そば)
しるべの札の文字みれば 小名浜(おなはま)までは道一里
51. 道もせに散る花よりも 世に(こう)ばかし名を留めし
八幡太郎(はちまんたろう)が歌のあと 勿来(なこそ)の関も見てゆかん
52. 関本(せきもと)おりて平潟(ひらかた)の 港にやどる人もあり
岩の中道ふみわけて 磯うつ波も聞きがてら
53. あえて別れて別れては またあう海と磯の松
磯原(いそはら)すぎて高萩(たかはぎ)に 仮るや旅寝の高枕
54. 助川(すけがわ)さして潮あびに ゆけや下孫(しもまご)孫も子も
駅夫の声におどろけば いつしか水戸(みと)は来りたり
55. 三家の中の勤王(きんのう)の その名知られし水戸(みと)の藩
わするな義公(ぎこう)(えら)びたる 大日本史のその(いさお)
56. 文武(ぶんぶ)の道を(ひろ)めたる 弘道館(こうどうかん)の跡とえば
残る千本(ちもと)梅が香(うめがか)は 雪の下よりにおうなり
57. つれだつ旅の友部(ともべ)より 別るる道は小山線(おやません)
石岡(いしおか)よりは歌によむ 志筑(しづく)田井(たい)も程ちかし
58. 間もなく来る土浦(つちうら)の 岸を浸せる水海(みずうみ)
霞ヶ浦(かすみがうら)の名も広く 汽船の笛の音たえず
59. 雲井の空に耳二つ 立てたる(こま)(ごと)くにて
みゆる高嶺(たかね)男体(なんたい)女体(にょたい)そびゆる筑波山(つくばやま)
60. 峰にのぼれば地図一つ ひろげし如く見えわたる
常陸(ひたち)の国のここかしこ 利根(とね)のながれの末までも
61. 松戸(まつど)をおりて国府の台(こうのだい) ゆけば一里に足らぬ道
真間(まこ)手児名(てこな)が跡という 寺も入江にのこるなり
62. 車輪のめぐり(すみやか)千住大橋(せんじゅおおはし)右にみて
(たまき)の橋の限りなく ふたたびもどる田端駅(たばたえき)
63. 昔は鬼の住家(すみか)とて 人のおそれし陸奥(みちのく)
はてまでゆきて時の間に かえる事こそめでたけれ
64. いわえ人々鉄道の ひらけし時に逢える身を
上野の山もひびくまで 鉄道唱歌の声立てて

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