
| 大空を白い鳩さんたちが、飛んでいました。どこへ飛んで行くのでしょう。天国へ向かって飛んで行くのです。鳩さんたちは、神さまを信じた鳩さんたちでした。さて下界には、賑やかな街や、美しい花の咲き乱れた野原などが、あちこち見えます。とても楽しそうです。 でも、天国を目指す鳥たちは、そんなものに、わき目を振ってはいられません。大事な、天国行きという目的を、忘れてしまったら大変だからです。 一番あとから、飛んでいた若い鳩がいました。鳩は無我夢中で飛んでいましたが。まだ、世の中というものを知りませんでした。 『下の世界は、楽しそうだなぁ。先輩たちの話では、あそこは見掛けだけは楽しそうだが、本当はちっとも楽しい所じゃないんだそうだ。でも、本当かしら。いっぺん下りて見たい気がするなぁ。』 |
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前をゆく先輩たちは、それを見て、心配して話し始めました。『おい、ごらんよ。あの子の心は、天国へ向かないで、下界の色々な楽しみに向き始めたよ。天国の群れを離れて、はぐれて行ってしまうんじゃないかしら。』 『心配するな。行きたいと思う心になったときは、どう止めたって、止めきれるもんじゃない。そっとしておいて、かげで、お祈りしよう。たとえ一ぺんくらい、はぐれても、神さまがきっとまた、ひき戻して下さるよ。』 |
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やがて、若い鳩さんは、とうとう我慢が出来なくなって、群れを離れ、美しい下界にひかれて降りて行きました。下界の鳩たちは、大変気楽な鳩たちでした。よそ者の鳩さんを親切に迎えて、すぐに友だちになってくれました。 ここは、いろいろなものがたくさんあって、お金持ちの世界でした。木にも草にも、おいしい果物が、うなるほど成っていて、食べ切れない程でした。そして、あたり一面には、花が咲き乱れ、本当に美しいところでした。 白い鳩さんは、いろいろなものがあまり沢山なので、うれしさに、ぽうっとしてしまって、外の事には何にも忘れてしまいました。 つぎの朝、白鳩さんは早くから、お友達に起こされました。 『さあ君、まず、ボスの所にご挨拶に行かなけりゃいけないよ。』 『ポスってなんだ。』 『ここの親分のことさ。私たちみんなの世話を、いろいろ見てくれる偉い人だよ。』 『私たちみんなの世話を、見てくれるのは、天の神様じゃないの。』 『寝言を言うなよ。ここには、神さまなんかいないんだ。ポスのご機嫌を損ねると、困ったことになるよ。』 そこで、白鳩さんは、しぶしぶボスの所へ連れられて行きました。 『これが、今度、私たちの仲間に入った白鳩です。どうかよろしくお願いします。』 お友達が言いました。白鳩さんは頭を下げました。ボスは高い所に立って、胸を張っていました。高い所にいるのが得意そうでした。 『威張っているな。エスさまなら、あんなに威張ったりしないな。高いところになんか上がらないな。下りてきてぼくたちの世話をしてくださるくらいだ。やっぱり神さまの方が偉いな。』 と、白鳩さんは思いました。 |
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| (マタイ20の28) | |
| さて、ここでは鳩さんたちは、みんな沢山働かなければなりませんでした。 『僕は、働くのは嫌いじゃないさ。だが、ここでは、見ていると、みんな食べるために働いているだけだな。食べる楽しみのためにだけ、働いたってつまらないな。やっぱり、天国の人たちの仕事の方がいいなぁ、神さまのために働けるんだもの。』 白い鳩さんは、思いました。 ある朝、鳩さんたちの間で、大騒ぎが始まりました。 『一体、どうしたのですか。何をそんなに、こわがって逃げるんですか?』何も知らない白鳩さんは聞きました。 『大変だ、大変だ。死神がやってくる。あれにつかまると、誰でも、死ななきゃならないんだ。』 そういって、一羽も残らず逃げ出しました。 逃げ遅れた一羽がいました。悲しそうに鳴いて助けを求めていました。病気で弱っていて、死から逃げる力がないのです。 『かわいそうに・・・。あの鳩さんは、死神とかに、捕まりそうだ。どうして、みんな、放って逃げるんです。僕が助けに行こう。』 白い鳩さんが、引き返そうとしますと、友だちが止めました。 『駄目なんです。誰が行ったって、死ぬと決まった者を、死神の手から助けだすことは、出来ないのです。かわいそうでも、見殺しにする外ないのです。無駄なことは、およしなさい。』 その時、黒い鷲の姿をした死神が、さっと舞い降りて来て、助けを呼んでいる病気の鳩を一つかみにしました。かわいそうな鳩さんは、死んでしまいました。死神は、死んだ魂を、どこかへさらって行ってしまいました。 下界の鳩たちは、集まってきて、墓を立て、死んだ仲間を弔いました。花や、食べ物が供えられ、遺された子供たちは泣きました。友達や、近所の人も、貰い泣きをしました。お墓の上では、詩人が弔いの歌を歌っています。 なんて悲しい、なんて悲しいことだろう。愛する人と別れ、だれもが、死んでゆかねばならない。 さだめよ、暗いさだめよ。 だが、悲しみをこらえて、生きて行こう。 悲しみを心にいだき、悲しみを口に歌って、生きて行こう。 ああ、それはなんと美しいことだろう! と、詩人はうたいます。 天国のことを知っている白鳩さんは、とうとう、黙っていられなくなって来ました。 『みなさん、その悲しい死から、逃れるみちを、僕、知っています。エスさまという人を信じるんです。エスさまは、神さまのお子さまで、私たちの罪の身代わりになって、十字架で、いったん死んで下さった方です。エスさまを信じると、神さまがその人の罪を許して下さいます。罪のために、私たちは死神の奴隷になっているんです。でも、神さまから罪を許していただけば、もう、死神には負けません。みなさん、エスさまを信じればいいんです。本当です。』 けれど、それを聞いた下界の鳩たちは、疑わしそうに頭を振りながら、みんな行ってしまいました。 『この下界には、なるほど、色々なものがあるし、きれいだし、見掛けは、素晴らしいけれど・・・』 と、白鳩さんは考えました。 ![]() 『やっぱり、先輩たちの言った通りだ。中身は、ちっとも素敵じゃないな。天国の人たちの世界とは、まるで違うな。天のお父さまの神さまを、知らないから、みんな、やさしい心が分からない。お友だちのためなら、死んでもいいと思うような心が、どこにもない。上に立つ人は、威張っていて、冷たいし、下の人も、心から上の人を慕うような心がない。みんな、お互い同士、心と心が、そっぽを向いていて、まるで冷ややかだ。自分が、死神の奴隷になっているんだもの、とてもそんな、人を思いやる余裕なんかある筈がない。やっぱり僕は、こんな所には住めないな。僕は間違っていた。』 そこで、若い白鳩さんは、これまでの貴重な体験を、しっかり胸に抱いて、天に向かって、また、飛び立ちました。そして、おくれながらも、外の、天国の鳩さんたちの後を追って、天国めがけて、今は、まっしぐらに飛び続けて行きました。 |
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| (行伝4の12) |
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