
あるお金持ちの別荘に、一匹の家ねずみさんが住んでいました。お金持ちのお勝手や物置には、食べ物が山ほどありましたから、忠太さんは、毎日、食べ飽きるほど、おいしいものを見つけることが出来ました。 近所にも、お金持ちの別荘が並んでいて、そこにも、ねずみさんたちが住んでいました。みんな何にも不自由しないで、楽しく暮らしていました。 忠太さんは、そんなお友達と、時々、天井裏で、宴会をやって、御馳走を食べ楽しく遊びました。 『君たち、向こうのどぶに住んでいる、どぶねずみの事を、知ってるかい?』 宴会の席で、金持ちの鼠さんの一人が言いました。 『ひどい格好して、毎日毎日、下水あさりをやってるよ。まるで乞食だ。それに比べると、私たちは、まるで王様だね。』 『ほんとうだ。あれじゃ生きていても、つまらないだろうなぁ。』 お金持ちのお友だちは、そういって、貧乏な人の噂をしていました。 忠太さんは、御馳走を食べながら、黙って聞いていました。 お金持ちのお勝手から、洗い水が、下水に流れこみます。その下水に、貧乏な、どぶねずみさんが住んでいました。食べ物といっても、ろくな物は落ちていません。大根のしっぽだの、くさった芋だの、お魚のはらわただの、そんな物ばかりでした。 でも、どぶねずみさんは、やさしい目をしていました。汚い着物を着て、よごれた体をしていましたが、心は奇麗でした。天のお父さまを信じていたからです。泥の中に住んでいても、心は天国に住んでいたのです。 ある日、忠太さんの住んでいるおうちでは、朝から人が来て、うちじゅうの道具を運び出していました。引っ越しが始まったのです。食べ物も、みんな、持ってゆきましたを。おしまいに、おうちの人たちも、みんな、どこかへ行ってしまいました。 ガランとした空き家の中で、忠太さんは、しょんぼりとしていました。おなかがすいて来ましたが、食べるものは何もありませんでした。 『そうだ。隣の友だちの所へ行ってみよう。きっと助けてくれるだろう。』 『こんにちは、お隣のお友だち。』 忠太さんは、頼みました。 『余った食べ物があったら、少し分けてくれませんか。私の所では、みんな引っ越して行ってしまったのです。私は、貧乏になりました。』 すると、お金持ちのお友だちはいいました。 『あいにく、私の所では、余ったものがないんです。お隣へ行ってくれませんか』 そのお隣でも、同じでした。 どこへ行っても、ことわられてしまいました。『みんな、親切な友だちだと思っていたのに、本当の友だちじゃなかった。僕はひとりぼっちだ。』 忠太さんは泣きました。 おなかの空いたのが、辛かったのではありません。 友だちに捨てられたのが、悲しかったのです。 すると、『もし、もし』と、誰か呼ぶ声がしました。見ると、それは、みすぼらしい格好をした、どぶねずみさんでした。 『失礼ですが、もしや、おなかがすいて、いるんじゃありませんか。こんなものですが、あがってくれませんか。』 差し出されたものは、粗末な食べ物でした。けれど、おなかの空いた今の忠太さんには、結構な御馳走でした。『心配ありませんよ。』 どぶねずみさんは、にこにこしながら言いました。 『天のお父さまは、やさしいお父さまです。どうして私たちを、ひもじいままで、放って置くものですか。安心して、天のお父さまに、任せていらっしゃい。』 それから、二人は、お友達になる約束をしました。 忠太さんは、貧乏になりました。 お金をなくしましたが、その代わりに、エスさまを見つけました。 おまけに、素晴らしい友だちも、みつけました。 天国の友だちこそ、本当の友達です。神さまを大切にする人は、友だちも大切にします。お金や、いろいろな楽しみを、大切にする人は、友達を大切にしません。 |
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(マタイ22の39) |
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