和紙

5.鯨

挿絵5-1 広い広い海の中に、鯨さんたちがいました。
 鯨さんたちは、天の神様の事が、良くわかっていました。
 お母さんの鯨は、坊やの鯨に、
 『坊や。この広い海は、神さまがお造りなったのよ。
私たちも、みんな、天の神さまが造って下さったの。だから、私たちは、天の神さまのおっしゃる事を、良く守って、いまに、天国へ行くのよ。』
そう言って、教えていました。
 お空には、太陽が、キラキラ輝いています。
 鯨さんたちは、
 『あの太陽も、神さまが、お作りになったんだよ。大空も、神さまのものだよ。あそこには、天国があるんだよ。』
そう言って、みんな、天国へ行く日を楽しみにしていました。
 海の中には、ところどころに、奇麗な島があります。
 そこには、バナナだの、やしの実だの、それから、奇麗な鳥だの、いろいろな良いものがあります。
 それは、みんな、神さまのものです。神さまが、「なかよくみんなで、分けるんだよ。」と、おっしゃって、私たちみんなに、下さったのです。
 鯨さんたちは、ちゃんと、それを知っています。
 ところが、神さまを信じない人たちが来て、
 『この島は、私たちの国のものだぞ。」
 『いや、私たちの国のだ。』
 挿絵5-2そう言って、島の取りっこをして、喧嘩が始まりました。恐ろしい戦争が始まったのです。
 でも、どの島も、本当は、神さまの島なのです。誰のものでもありません。
 穏やかだった海は、戦場になりました。沢山の軍艦が大砲を撃ちあい、空には戦闘機や爆撃機が飛び交い、すさまじい戦場になりました。
 鯨たちは、びっくりして、海に潜りました。
 『まあ、なんて、恐ろしい人たちでしょう!』
 戦争の罰で、沢山の船が沈みました。沢山の人が死にました。死骸は深い海の底へ、沈みました。海底には、死骸が散らばっています。
挿絵5-3 鯨さんたちは、それを見て、
 『まあ、なんという惨いことだろう!この人たちは、こうやって、殺し合いをして、みんな、地獄へ落ちて行く。神の子のエスさまは、この人たちを天国入れてくださろうとして、代わりに十字架に架かって下さった。この人たちはそれを、ウソだ、ウソだと、言いはって、悪いことを止めないで、地獄へ落ちて行く。なんという愚かなことだろう!』
と、思いました。
 心の優しい鯨さんたちは、死者のために、お祈りをしました。
 『エスさま、こうやって悪いことをして、その報いで、地獄へ落ちて行きます。でも、かわいそうです。エスさま、どうか、この人たちの悪い魂を、助けて上げてください。地獄から、助けて上げてください。』
 戦争はわりました。そして、海は、もとの静けさを取り戻しました。鯨さんたちは喜んで、
 『よかったね。こんなに静かな海になって。
あの人たちも、もう、懲りて、天の神さまのことを思い出すでしょう。そして、もう、二度と、喧嘩はしないでしょう。』
そう言って、仲良く泳ぎ回っていました。
 すると、ある日、どこからか、沢山の大きな船が来ました。そして、大砲をどどん、どどん、と撃って、鯨さんたちを追い掛け始めました。捕鯨船です。
 鯨さんたちは、びっくりして、逃げ回りました。
 沢山の鯨さんが、殺されました。
 殺された鯨たちの血で、海が真っ赤になりました。
 お父さんや、お母さんや、お兄さんの鯨が、殺されて、船に積まれてしまいました。そして、捕鯨船団は、帰って行きました。
 『ああ、私たちの大事な仲間を殺して、あのお船が、持って行ってしまった。』挿絵5-4
残った鯨さんたちは、涙を流しながら、見送りました。
 『でも、我慢しましょう。あの船の人たちは、戦争で、お国が貧乏になって、食べるものがなくなって、仕方なしに私たちをとりに来たんだね。かわいそうな人たちね。許してあげましょう。』
 やさしい鯨さんたちは、恨んだりしませんでした。
 また、静かな海に戻りました。
 夜が来て、大きなお月さまが昇りました。
 『よかったね。静かになって。』
と、鯨さんたちは、喜び合いました。
 『もう、悪いことは、これっきりで、おしまいでしょう。
あの人たちも、今度こそ、悪いことをやめて、みんな、エスさまの子供になったでしょう。そうすれば、私たちのお父さんやお母さんが、食べられたことも、我慢できるわ。』
鯨さんたちは、そう思いました。
挿絵5-5 ところが、ある日、島の上で、
       どかーん、
と、今までに、聞いたこともないような、大きな爆発が起こりました。恐ろしい原子爆弾が、爆発したのです。島は、原子爆弾の実験場になったのです。次の戦争の準備が、そろそろ、始まったのです。
爆発のために、沢山の魚が、殺されました。鯨の仲間も、沢山、死にました。
 『まあ、なんということでしょう!また、こんなにたくさん、私たちの大事な仲間が、殺されてしまった。
人間たちは、まだ、懲りないで、喧嘩を始めようと、思っているのかしら。
 なんという、愚かな人間たちでしょう!』
そう言って、鯨さんたちは、悲しみました。
 鯨さんたちは、みんなそろって、天を仰いで、天の神さまに向かってお祈りをしました。
 『天のお父さま、エスさま。早くこの世界に、神の子供を沢山、造って下さい。そして、悪いものの手から、この世界を救いだしてください。』
そう言って、お祈りをしました。
(ロマ8の19)


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