
世の中は今、寒い冬です。冷たい北風が吹いて、どこもかしこも、いちめん、雪や氷に閉ざされています。 すると、神さまが、暖かい南風を、そよそよと、吹かせておよこしになります。 氷も雪も、たちまち、とけ始めます。 どんな堅い氷でも、どんな深い雪でも、暖かい春の風には敵わないで、とけてしまいます。 そして、雪の下から、ごらん、芽がでて来ます。 こうして、新しいいのちが、この世に生え出てくるのです。 野原には、花が、いっぱいに開きます。 蝶々さんたちが飛んで来て、みんな、大喜びで、神さまを褒める踊りを踊ります。 小鳥さんたちは、木の上で、さえずり始めます。天の神さまの歌を歌うのです。 春が来たよ 春が来たよ 冷たい氷と雪を 神さまが とかして下さった 氷や雪のように 冷たい心も 神さまは みんな とかしておしまいになるのよ 優しい神さま 愛のお父さま 春が来たよ 春が来たよ ![]() ところが、どこか、日のささない暗い洞穴に、ひとりぼっちのダックさんがいました。 意地悪い心を持った、ダックさん、氷のように冷たい心を持った、ダックさん。 『なんだい。くそ面白くもない。』 と、いつも不平ばかり言っているダックさん。 意地悪ダックさんが、蝶々さんを追いかけ始めました。 花をみんな、わざと踏み潰してしまいます。 ダックさんは、人を困らせるのが、好きなのです。 神さまを、知らない人は、みんなそうなの。 『よして。よして。』 と、みんなが頼んでも、決して止めません。 どこまでも、どこまでも、蝶々さんを追いかけて行きます。 意地悪さんは、かわいそうね。 神さまを知らない人は、お気の毒ね。 ![]() どしーん、と、ダックさんが、古井戸の穴へ、おっこちました。 さあ、大変!どうしましょう! 蝶々さんたちが、覗いています。 『かわいそうなダックさん。 あんな、深い暗い所に、おっこちて さぞ、つらいでしょう。 でも、私たちには、力がなくて、とても、 助けてあげられないわ。』 『力持ちの熊のおじさんに、お願いして、助けていただきましょう。』 そこで、蝶々さんたちは、熊のおじさんのところへ、飛んで行きました。 『おじさん、おじさん。お願いです。起きてください。』 『うるさいな。今はだめだよ。寝てるんだから。』 『大変です。ダックさんが、古井戸の中へおっこちたんです。』 『おや、おや、それはかわいそうに。』 心の優しい熊のおじさんは、むっくり、起き上がりました。 井戸の中では、ダックさんが困って、とうとう泣き出しました。 『僕はみんなを、いじめるから、だれも助けに来てくれないんだ。この中で死んで、僕は地獄へ行くんだろうなぁ。』 そう思って泣いています。 大丈夫だよ、ダックさん。あなたは、神さまが、どんなに優しい方か、知らないのね。 ![]() 目の前に、するすると、一本をの蔦が下がって来ました。 『さあ、これに、しっかりと、つかまり給え。ダック君。』 誰かが言いました。神さまが、言ったのですね。 どんなに困っても、神さまは、きっと、助けに来てくださるのよ。 心配なんかいらないの。神さまを知らない人だけが心配するの。 えんやら、えんやら、 上では、熊さんが、ひっぱっています。 神さまが、熊さん、あなた、助けてあげなさい、と、お命じなったのです。それで、ハイ、と言って、熊さんが、一生懸命、引っ張っているのです。 ダックさんは、こうして、古井戸から出られました。 嬉しいな、青いお空、晴れたお空が、また見られた。 木の上では、神さまの小鳥たちが歌っています。 やさしい神さま 神さま万歳 どんな いけない子でも 神さまから ご覧になると かわいい子供なの 神さまは どんな人でも区別なしに 一人一人を かわいがって下さるの 私たちは 誰もみんな 神さまに かわいがられている 神の子供なの さあ みんなで 優しい神さまの 愛の歌を 歌いましょう ダックさんの心の中の、冷たい氷も、溶けてしまいました。嬉しいな 神さまの 愛が分かって 嬉しいな こんなに たのしいことって ぼく 初めてだ 蝶々さん ごめんね お友達に なってね さあ、どこもかしこも、すっかり春になりました。 楽しい楽しい、神さまの春に、なったのですね。 |
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