和紙

22.ハッピイだっく

挿絵22-1 世の中は今、寒い冬です。
 冷たい北風が吹いて、どこもかしこも、いちめん、雪や氷に閉ざされています。
 すると、神さまが、暖かい南風を、そよそよと、吹かせておよこしになります。
 氷も雪も、たちまち、とけ始めます。
 どんな堅い氷でも、どんな深い雪でも、暖かい春の風には敵わないで、とけてしまいます。
 そして、雪の下から、ごらん、芽がでて来ます。
 こうして、新しいいのちが、この世に生え出てくるのです。
 野原には、花が、いっぱいに開きます。
 蝶々さんたちが飛んで来て、みんな、大喜びで、神さまを褒める踊りを踊ります。
 小鳥さんたちは、木の上で、さえずり始めます。天の神さまの歌を歌うのです。
     春が来たよ
     春が来たよ
     冷たい氷と雪を
     神さまが とかして下さった
     氷や雪のように 冷たい心も
     神さまは みんな とかしておしまいになるのよ
     優しい神さま
     愛のお父さま
     春が来たよ
     春が来たよ挿絵22-2
 ところが、どこか、日のささない暗い洞穴に、ひとりぼっちのダックさんがいました。
 意地悪い心を持った、ダックさん、氷のように冷たい心を持った、ダックさん。
   『なんだい。くそ面白くもない。』
 と、いつも不平ばかり言っているダックさん。
 意地悪ダックさんが、蝶々さんを追いかけ始めました。
 花をみんな、わざと踏み潰してしまいます。
 ダックさんは、人を困らせるのが、好きなのです。
 神さまを、知らない人は、みんなそうなの。
   『よして。よして。』
と、みんなが頼んでも、決して止めません。
 どこまでも、どこまでも、蝶々さんを追いかけて行きます。
 意地悪さんは、かわいそうね。
 神さまを知らない人は、お気の毒ね。挿絵22-3
 どしーん、と、ダックさんが、古井戸の穴へ、おっこちました。
 さあ、大変!どうしましょう!
 蝶々さんたちが、覗いています。
 『かわいそうなダックさん。
 あんな、深い暗い所に、おっこちて
 さぞ、つらいでしょう。
  でも、私たちには、力がなくて、とても、
 助けてあげられないわ。』
 『力持ちの熊のおじさんに、お願いして、助けていただきましょう。』
 そこで、蝶々さんたちは、熊のおじさんのところへ、飛んで行きました。
 『おじさん、おじさん。お願いです。起きてください。』
 『うるさいな。今はだめだよ。寝てるんだから。』
 『大変です。ダックさんが、古井戸の中へおっこちたんです。』
 『おや、おや、それはかわいそうに。』
 心の優しい熊のおじさんは、むっくり、起き上がりました。
 井戸の中では、ダックさんが困って、とうとう泣き出しました。
 『僕はみんなを、いじめるから、だれも助けに来てくれないんだ。この中で死んで、僕は地獄へ行くんだろうなぁ。』
 そう思って泣いています。
 大丈夫だよ、ダックさん。あなたは、神さまが、どんなに優しい方か、知らないのね。挿絵22-4
 目の前に、するすると、一本をの蔦が下がって来ました。
 『さあ、これに、しっかりと、つかまり給え。ダック君。』
 誰かが言いました。神さまが、言ったのですね。
 どんなに困っても、神さまは、きっと、助けに来てくださるのよ。
 心配なんかいらないの。神さまを知らない人だけが心配するの。
    えんやら、えんやら、
 上では、熊さんが、ひっぱっています。
 神さまが、熊さん、あなた、助けてあげなさい、と、お命じなったのです。それで、ハイ、と言って、熊さんが、一生懸命、引っ張っているのです。
 ダックさんは、こうして、古井戸から出られました。
 嬉しいな、青いお空、晴れたお空が、また見られた。
 木の上では、神さまの小鳥たちが歌っています。
 
   やさしい神さま
   神さま万歳
   どんな いけない子でも
   神さまから ご覧になると
   かわいい子供なの
   神さまは どんな人でも区別なしに
   一人一人を かわいがって下さるの
   私たちは 誰もみんな
   神さまに かわいがられている
   神の子供なの
   さあ みんなで 優しい神さまの
   愛の歌を 歌いましょう

挿絵22-5 ダックさんの心の中の、冷たい氷も、溶けてしまいました。

 嬉しいな
 神さまの 愛が分かって
 嬉しいな
 こんなに たのしいことって
 ぼく 初めてだ
 蝶々さん ごめんね
 お友達に なってね

 さあ、どこもかしこも、すっかり春になりました。
 楽しい楽しい、神さまの春に、なったのですね。


←前のお話 目次


和紙