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広い広い野原がありました。神さまのおつくりなった野原です。そこに、兎さんたちが、住んでいました。兎さんたちは、みんな貧乏でしたけれど、仲良しでした。神さまの下さった草を、仲良く食べていました。だれも欲張る者はいませんでした。
春になると、きれいな花を、神さまが、野原いっぱいに咲かせて下さいました。それは、それは、奇麗でした。天国のように奇麗でした。
花を見ると、兎さんたちは、天国のことを考えました。
『これは、神さまの花だね。神さまが、天国を思い出させるために、私たちに下さったのね。やさしい神さまね。』
そう言って、兎さんたちは喜びました。
『私たちも、今に、やさしいエスさまのいらっしゃる天国へ行くの。天国は、どんなにいい所でしょう。さあ、みんなで踊りましょう。』
兎さんたちは、エスさまの歌をうたいながら、楽しく踊っていました。
『やあ、みなさん、たのしそうですね。』
通りかかった狐さんがいました。狐さんは、りっぱな、お洋服を着て、ピカピカ光るオート三輪車に乗っていました。狐さんは、町のお金持ちの商人でした。
『これは、きれいな花だ。皆さんは、いいですな、こんなお花があって。だけど町へ行くとね、もっときれいな、すてきなものがありますよ。皆さんは知らないでしょう。車に少し持っているから、見せてあげましょう。』
『ほら、これです。』
町の商人は、車の中から、きれいなお洋服だの、お靴だの、手提げだのをとり出しました。
『どうです、すてきでしょう。これを着たり持ったりして、ごらんなさい。お金持ちのお嬢さんのようになりますよ。花よりもきれいになりますよ。』
『だって、わたしたち、みんな、貧乏だもの。そんなもの買えないわ。』
兎さんたちは、悲しそうに言いました。みんなは、狐さんの持っているものが、欲しくて欲しくて、たまらなくなったのです。
『あなた方のお花は、珍しいお花だから、町の市場へ出せば、きっと売れますよ。私にそれを売って下さい。これと、取り替えっこしましょう。』
狐さんがいいました。
兎さんたちは、びっくりしました。天国の花と思っていたのに、この花が、お金になると聞いて、びっくりしてしまいました。
兎さんたちは、急に欲が出てきました。
『この花は、わたしのだよ。』
『ぼくのだよ。』
『いいえ、あたしのよ。』
そう言って、みんな、自分のものにしようと、しはじめました。
でも、本当は、みんな、天の神さまのものなんです。世界中のものは、みんな、神さまのものです。
とうとう、兎さんたちは、野原を奪いあって、めいめいのものに、分けてしまいました。広々とした野原は、細かくちぎられて、きたない野原になってしまいました。それでも、兎さんたちは、めいめい自分のものが少ないと言って、まだ喧嘩をしています。
わたしたちの、この世界も、本当はみんな、天の神さまのものなのに、めいめいが欲ばって、兎さんたちのように、分けてしまったのです。そして、その罰で、みんな天国をなくしてしまったのです。
兎さんたちは、お花を売って、お金持ちになりました。きれいな着物を着て、赤いお靴をはいて、みんなすまして歩いています。みんな、ひとに見てもらいたいと思って、すましています。前に貧乏だったときは、神さまのことだけ考えていたのに、今は、ひとのことばかり気にしています。天国のことは、すっかり忘れてしまいました。
兎さんたちは、めいめい自分の花畑が、大変ご自慢でした。
『どうだ、あそこから、あそこまでは、わたしの花畑だぞ。今年も、こんなに花が咲いたぞ。』
『ぼくの花はどうだ。今年は、特別きれいな花を咲かせたんだ。ぼくのところが、一番だろう。』
でも、兎さんたちは、かわいそうに、天国の花がもう見えなくなっていました。
『どうだ、これだけの花があれば、一個が何円として、全部で、いくらいくらに、売れるぞ。そして、いくらいくらの金が入る。そしたら、いいものがいっぱい買えるぞ。』
兎さんたちは、かわいそうに、お花を見ると、みんな、お金に見えるのです。天国が見えないで、お金だけが見えるのです。
ここに一匹の兎さんがいました。この兎さんは、天国のことばかり考えて、ぼんやりしていたので、お花畑は、みんな、ひとにとられて、自分は、何にも持っていませんでした。一番、貧乏でした。でも、そのおかげで、道端の花を見ても、ちゃんと天国の花に見えるのです。
『きれいだなぁ。神さまは、こんな奇麗な花を、咲かせてくださる。やさしいエスさまは、私たちに、天国を思い出させようとなさって、きれいな花を咲かせて下さるんだなぁ。私も、この花のような、きれいな心にしていただこう。そして、やさしいエスさまのいらっしゃる天国へ、いまに行くのだ。ほかのものは、何もほしくないや。天国だけで、嬉しくて、嬉しくて、いっぱいだもの。』
そういって、貧乏な兎さんは、にこにこ、にこにこ、していました。私たちも、欲張り兎さんたちのように欲張って、天国を忘れて、天国の子でなくなったりしないように、気をつけましょう。
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