和紙

20.神さまのために

挿絵20-1 貧乏な雀の子がいました。お父さんも、お母さんもいません。貧乏だから、いつも、みんなに、いじめられました。
 『きたない子だ。あんな子と遊んではいけないよ。』
と、お金持ちの親はいいます。
 『こないだ、うちの物がなくなったのは、きっと、あの子が盗んだんだよ。』
といって、何にもしないのに、疑います。
 子供たちも、意地悪い子が沢山いて、
 『ヤーイ、ヤーイ、乞食の子、乞食の子。』
といって、からかいます。貧乏な雀の子は、いつも、いじめられ通しでした。
 雀の子は、誰もいない所へ行って、泣きました。淋しくて悲しくて泣いたのです。
 『僕は、どうして、こんなに、ふしあわせなんだろう。世の中には、かやさしい心の人は、いないのかしら。僕を可愛そうに思ってくれる人は、いないのかしら。』
そう思って、悲しくて悲しくてならなかったのです。
 屋根の向こうに、どこかの家の、お部屋が見えました。そこに、いつもいつも、寝ている人がいました。それは、長い長い病気で寝たきりの、兎のお姉ちゃんでした。
 『あのお姉ちゃんも、淋ししそうだなあ。誰もお友だちがいなくて、いつも、一人で寝ているんだもの。僕と同じだ。そうだ、僕、お友達になってやろうかしら。』
一人ぼっちの雀の子は、そう思いました。
 チュッ、チュッ、チュッ、と雀の子は、窓のところへ飛んで行きました。
 『こんにちは、病気のお姉ちゃん。お姉ちゃんは、淋しいでしょうね。ぼく、お友達になってあげようか。』挿絵20-2
 『うれしいわ。お姉ちゃんは、毎日、お友だちがいなくて淋しかったのよ。お友達になって下さいね。』
兎のお姉ちゃんは、とても喜びました。
 『ねえ、お姉ちゃん、僕ね、貧乏だから、みんなにいじめられるの。みんなは、僕のことを、乞食の子っていうの。泥棒の子なんていうのよ。そして、だれも僕と遊んでくれないの。』
貧乏な雀の子は、そう言って泣きました。やさしいお姉ちゃんも、一緒に泣きました。
 『可愛そうな雀ちゃん。でもね、貧乏だから可愛そうじゃないの。あなたがエスさまを知らないから、可愛そうなのよ。』
と、お姉ちゃんは、言いました。
挿絵20-3 『天のお父さまがいるのよ。天から、神さまが毎日、私たちのことを、見ていて下さるのよ。やさしい、やさしいお父さまよ。私たちは、いまに、みんな、天国へ行くの。だから、今は、悲しくても辛くても、いいわね。じっと我慢しましょうね。エスさまが、みんな知っていて下さるのよ。だから、辛いときは、悲しいときは、エスさまにお祈りするのよ。』
 『さあ、お祈りを教えてあげましょう。おめめをつぶって、心をエスさまに向けるのよ。そして、エスさまに心の中のことを、みんなお話しましょう。』
そう言ってお姉ちゃんは、お祈りをしてくれました。
 『天のお父さまエスさま、貧乏な雀ちゃんも、どうか、エスさまの子にしてください。私たちは、みんな、悪い子なのです。エスさまに悪い心をとっていただかないと、天国へは行けません。どうか、エスさまの良い子にしてください。意地悪なんか言わない、人の悪口なんか言わない、心のやさしい子になれるようにして下さい。エスさまのおかげで、二人のお祈りを聞いてください。・・アーメン。』
貧乏な雀の子も、アーメンと言いました。
 ある日、雀の子が遊んでいると、下の方でを喧嘩をしていました。いつか、雀の子をいじめた大人の雀たちです。今日は、お互いに大喧嘩をしているのです。
 『まあ、恐い!あの人たちは、仲の良いお友達だと思っていたのに、本当のお友達ではなかったんだな。エスさまを知らない人は、みんなアクマだな。』
と、雀の子は思いました。雀の子は、すぐに、お姉ちゃんに知らせに飛んで行きました。
 『お姉ちゃん、お姉ちゃん、大変だよ。僕をいじめた人たちがね、今度は、お互いに、いじめあっているよ。みんなアクマだね。』
 お姉ちゃんは、黙って聞いていました。そして言いました。
 『雀ちゃん、その人たちはね、本当は、可愛そうな人たちなのよ。エスさまを知らないから、おなかの中に、アクマが一杯いて、そんなふうに、あばれ出すのよ。天国のことを知らない、かわいそうな人たちなの。だから、私たちで、お祈りしてあげましょう。』
 二人は、お祈りしました。
 『天のお父さまエスさま、みんな喧嘩ばかりしています。子供も大人も、喧嘩ばかりしています。国と国とでは、戦争をやっています。みんなエスさまを知らないのです。かわいそうな人たちです。どうかエスさま、みんなが、あなたのことを覚えて、やさしい心になるようにして下さい。そして、世界中の人が、天国へ行けるようにして下さい。どうか、私たちのお願いを聞いて下さい。アーメン。』
 ある日、雀の子は、屋根の上で遊んでいました。すると、賑やかな声がするので、下を覗いてみました。そこは、どこかのお金持ちの兎さんのうちでした。みんな元気で、丈夫で、楽しそうです。おいしい御馳走を食べて、ラジオからは、たのしい音楽が聞こえてきます。
 『お金持ちで丈夫な人は、いいなぁ。楽しそうだなぁ。僕たちもあんなだったらなぁ。だけど、僕は貧乏だし、お姉ちゃんは病気だし、僕たちはつまんないや。僕は病気じゃないけど、お姉ちゃんは病気で貧乏なんだから、お姉ちゃんがいちばん、可愛そうだ。』
と、雀の子は、思いました。
 『お姉ちゃん、向こうに、お金持ちで丈夫な人たちがいたよ。楽しそうにしていたよ。賑やかだったよ。ぼく、お姉ちゃんが可愛そうで仕方がなかった。だって、お姉ちゃんは貧乏だし、病気だし、楽しいことが何にもないんだものね。』
 お姉ちゃんは、にこにこして聞いていました。
 『雀ちゃん、そうじゃないのよ。いちばん、幸せなのはね、お姉ちゃんなのよ。お姉ちゃんは貧乏よ、病気よね、なんにも持ってないの。だけどね、お姉ちゃんは、その代わりにエスさまを持ってるのよ。あの人たちも、お金があって、丈夫で、それはしあわせでしょう。だけど、あの人たちは、その代わりエスさまを持っていないの。エスさまを持ってる人が、いちばん、しあわせなのよ。毎日毎日、エスさまと話していられるの。エスさまに、だっこしていただいているの。お姉ちゃんは、エスさまの赤ん坊なのよ。』
 『だけど、お姉ちゃん、みんなは言ってるよ、貧乏な人や病気の人は、悪いことした罰で、そうなったんだって。そうなの、お姉ちゃん?』
 『それは、ウソよ。神さまは、やさしい、やさしい方なのよ。お姉ちゃんが病気になったのはね、神さまの為にさせられたのよ。神さまは、お姉ちゃんを病気にして神さまのことをみんなに教えようとしていらっしゃるのよ。病気の人や貧乏な人は、神さまのためにあるのよ。そんな人だけが、神さまの光をあらわしているのよ。丈夫な人やお金のある人は、だめなの。アクマの仲間になっているの。』
 毎日毎日、雨が降りました。風が吹きました。雀の子は、外へ行けないので、木の陰にじっとしていました。
 『はやく嵐がやめばいいなあ。はやくお姉ちゃんの所へ行きたいなぁ。』挿絵20-4
と、雀の子は思いました。
 『だけど、こんなに嵐が続いたら、ちっちゃい小鳥や貧乏な子は、どうしているだろうなぁ。寒くて、おなかが空いて、死ぬかもしれない。そうだ、僕、エスさまにお祈りして上げよう。』
雀の子は、お祈りをしました。自分のためでなく、他人(ひと)のためにお祈りをしました
 『やさしいお父さま、エスさま、小さい小鳥たちや、貧乏の小鳥たちを守って下さい。おなかが空いて死んだりしませんように、寒くてこごえないように、守って下さい。僕なんかは、どうなってもよいですから、可愛そうなお友達のこと、お願いいたします。アーメン。』
雀の子は、他人のためにお祈りしてあげられる子に、いつのまにかなっていました。
 嵐がやみました。雀の子をはすぐに、お姉ちゃんのところへ飛んで行きました。けれど、お姉ちゃんの部屋は空っぽでした、お姉ちゃんは、天国へ行ってしまったのです。
 『ああ、お姉ちゃん、死んじゃった。死んで天国へ行っちゃった。エスさまのところへ行っちゃった。なんだ、僕のこと置いて、一人で天国へ行っちゃって!お姉ちゃんの意地悪!』
挿絵20-5雀の子は、泣きました。だけど、すぐに考えました。
 『でもいいや、僕もいまに、後から、お姉ちゃんのところへ行こう。そして、エスさまと一緒に天国で楽しく暮らそう。それまで、淋しいけれど、我慢しよう。そうだ、僕はこれから、天国お友達を、うんと造ろう。そして、みんなで天国へ行くんだ。そしてお姉ちゃんや、エスさまを驚かしてやろう。』
 雀の子は、お祈りしました。
 『天のお父さま、エスさま。それから、お姉ちゃんも聞いてください。僕は、一人になったけれど、淋しくありません。毎日、お祈りします。そして、これからみんなに、エスさまのことを教えます。そして、天国の子を一杯作ります。みんなで、いまに天国へ行きます。どうか、守って下さい。いつも、いつも、一緒にいて、僕の道を照らして下さい。アーメン。』
 これから、雀さんは、どんな働きをするでしょうね。みんなも、エスさまの子にして、いただいたのだから、エスさまの光をみんなに知らせましょうね。私たちは、みんな、エスさまのため、神さまのために、生きているのよ。

(ヨハネ9の3)


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