和紙

17.有り難うの言えなかった烏

挿絵17-1 かわいいからすの子が、生まれました。天の神さまが、つくって下さったのです。生まれたばかりのからすには、まだ、羽が生えていませんでした。弱くて、まだ、飛ぶことも、立つことさえも出来ませんでした。
 やさしい天の神さまは、からすのお母さんにいいつけて、小さいからすの子に、ご飯を食べさせて下さいました。
 それで、毎日、お母さんが食べ物を運んできて下さいました。だから、からすの子は、ちっとも、困りませんでした。
 寒くないように、暖かい羽根の着物も、神さまが着せて下さいました。だんだん強く、大きく育てて下さいました。
 飛べるように、つばさを強くして下さいました。今では、もう、お母さんにお世話をしていただかなくても、一人で、どこへでも、飛んで行けるようになりました。
 からすの子は、空高く飛んで行きました。この大空も、神さまが造って下さいました。からすの子の、おなかがすいてくると、神さまは、ちゃんと食べ物を、行くさきざきへ、置いて下さいました。なにかたべたくなると、きっと、そこに食べ物がありました。だから、何一つ、心配がありませんでした。挿絵17-2
 こうして、からすの子は、神さまの下さるものを着て、神さまの下さるものを食べて、そして、神さまの仕事をしておれば良かったのです。
 ところが、このからすの子は、お父さまの心知らずの悪い子でした。神さまのお仕事なんか、何もしないで、ただ、自分勝手に、食べたり飲んだり、ばかりしていました。そして、お百姓さんの畑のものまで、泥棒しました。
 それに、やさしい神さまの心知らずで、このからすの子は、意地悪でした。弱い動物たちを追い回して、捕まえて食べました。意地の悪い、悪者ぐいのからすでした。
挿絵17-3 そして、本当なら、その口は、ご恩になっている天のお父さまに、『ありがとう』を言う口なのに、その口で、お友だちの悪口しか言いませんでした。ご恩知らずの、本当に悪いからすでした。
 ある時、からすの子は、一匹の蛙を見つけて、早速、食べようとしました。すると、蛙がいいました。
 『からすさん。私を食べるのを、ちょっと待ってください。死ぬ前に、天の神さまに、ちょっとお礼を申し上げたいのです。』
 『神さまに、お礼を言ういって?何のお礼をいうのだ?』
 『今まで、毎日毎日、やさしい神さまのお世話になって来ました。そのお礼を申し上げたいのです。』
と、蛙が答えました。挿絵17-4
 『うそつけ。神さまはやさしい人なんかじゃないぞ。もし、やさしい人なら、お前ををおれに食べさせないで、お前をを守るだろう。ところが、こうやって平気で、お前をおれに食べさせる。それは、神さまがお前のことなんか、ちっとも、構っていないからだ。そんな神さまなんか、悪口を言え。』
と、意地悪からすが言いました。
『いいえ、ちがいます。』
と、蛙は言いました。『神さまは、やさしいお父さまです。食べられるのは、私が悪いからです。でも、神さまは、悪い私を許して下さって、地獄へ行かないようにと、神の子のエスさまを代わりに十字架にかけて、私の罪をとって下さいました。おかげで、私は、今ここで死んでも、エスさまのいらっしゃる天国へ行けるのです。こんなやさしい神さまに、どうしてお礼を言わないで、いられましょう。』
そう言って、蛙は、土に頭をつけて、天の神さまにお礼を言いました。お礼を言い終わって、からすに食べられようと、頭を上げると、からすは、もう、そこにはいませんでした。
挿絵17-5 からすは、自分がほんとうに、恩知らずであるのが、分かりました。そして、心から、
 『神さま、ありがとうございます。』
と、申しました。そして、天のお父さまのやさしいお心が分かって、天国の子になりました。
(ロマ5の8)


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