
| ある山に、お猿さんたちと、一匹の片耳の兎さんが、一緒に住んでいました。 お猿さんたちは、大へん威張っていました。そして、毎日、山のおいしい果物ばかり食べて、兎さんにはちっともやりませんでした。兎さんは、それでも不平ひとつ言わないで、小さい草の実を拾って、食べていました。 お猿さんたちは、兎がいると、自分たちの食べ物が減ると思って、兎さんを憎んでいました。そして、いつも、兎さんをいじめました。 『やい、片耳、お前は僕たちのいない間に、あの実を取ったろう?』『いいえ、とりません。私は小さい草の実しか食べません。』 『うそつけ。減っていたぞ。おまえがとったんだ。』 と、お猿さんは、憎々しげにいいました。 『この片耳め、なぐってしまえ!』 そう言って、お猿さんたちは、兎さんを、さんざんにいじめました。いつもこうして、いじめるのでした。 兎さんは、泣きながら、天の神さまにお祈りしました。 『やさしい天のお父さま、私はいつも、お父さまからかわいがっていただいて、なんにも困りません。だけど、たった一つ、悲しいことがあるのです。お父さま、どうして、お猿さんたちは、お父さまのことが分からないのでしょうか。神さまのやさしいお心が分からないで、あんな意地悪をしているお猿さんは、本当にかわいそうです。私はどうなっても、いいから、どうぞ、お猿さんたちが、エスさまのことを、分かるようにして上げてください。』 泣きながら、いつも、お祈りしていました。 そのうちに、雨の季節が始まりました。毎日毎日、雨が降りました。野にも、山にも、雨がいっぱい降りました。 川の水が増えて、ごうごうと音をたてて流れています。山は、あちこちから水が出て来て、とても心配になってきました。 けれども、兎さんはちっとも心配しませんでした。エスさまがちゃんと守っていて下さるのを、知っていたからです。 兎さんは、にこにこして花をつんでいました。 神さまを知らないお猿さんたちは、びくびくして、高い木に登ったきりです。木の上からは、遠い向こうの河が見えます。 『おい、ごらん。大へんだ。』 一匹のお猿がいました。 『大水で、向こうの河の土手が崩れだしたぞ。こっちへ、大水が押し寄せてくるぞ。木の上の僕らは、大丈夫だけど、下にいる兎は、流されてしまうぞ。早く知らせなくちゃあ・・・。』 『まてまて。』 ![]() と、ほかのお猿が言いました。 『黙っていようよ。黙っていれば、あの兎は流されでしまうだろう。そうすれば、邪魔者がいなくなる。お山の食べ物は、みんな、僕らのものになるんだ。』 みんな、顔を見合わせました。あくまの心が、みんなの心を占めてしまいました。 ところが、兎さんの方は、片耳でも、素晴らしい良い耳を持っています。 『あっ、大変だ!』 兎さんは、片耳をピョンと立てました。別の方に、変な音を聞きつけたのです。 『山が崩れるぞ、山くずれだ!早くお猿さんたちに、知らせなくちゃあ・・・。』 みしり、みしり、みしり、みしり、 小さい、小さい、かすかな音ですが、上の山がくずれかかっているのです。いまにどっとくずれ出したら、兎さんも、木の上のお猿さんも、みんな、つぶされてしまうでしょう。 『おーい、大へんだ!お猿さん、山くずれがきますよ。早く木をおりて、向こうのお山へ逃げて下さい。』 兎さんは、一生懸命、言いました。 は、は、は、自分のことも分からないで、あんな事を言ってら、と、悪いお猿さんたちは、おなかの中で、笑いました。 『おい、兎さん。僕たちは、君なんかより、ずっと遠くが見えるんたぜ。山崩れなんか、あるもんか。それより、自分の足元でも気をつけた方がいいよ。』 そう言って、お猿さんたちは相手にしませんでした。 兎さんは、気違いのようになって、石を拾って、夢中で、お猿さんたち投げつけ始めました。ふだんは、おとなしい兎さんが、あばれだしたのを見て、お猿さんたちはびっくりしました。『やあ、気がちがった、兎の奴、気がちがったぞ。』 と言って、みんな逃げ出しました。 そのとき、ど、ど、ど、ど、 と、物凄い音がして、上の山が、一度に、くずれおちました。木や、砂や、土がいりまじって落ちてきて、みんな埋めてしまいました。木も、草も、兎さんも、うずめてしまいました。 お猿さんたちは、やっと、助かりました。 山くずれが、おさまりました。お猿さんたちは、もどって来ました。兎さんのいたところには、大きな山が出来ていました。兎さんは、その下に埋められてしまったのです。お猿さんたちは、みんな、黙って、ぼんやり立っていました。そのうち、お猿さんたちは、泣き出しました。 ああ、兎さんは自分だけで逃げれば、逃げられたんだ。だが逃げないで、意地悪の僕らを助けて、代わりに死んでしまった。それなのに、僕らは、さっき、兎さんを見殺しにしようとしたじゃないか。なんて悪い僕らだろう。 お猿さんたちは、兎さんのやさしい心が分かって、泣きました。 泣きながら、お猿さんたちは、初めて天の神さまに、ごめんなさいをしました。 『天のお父さま。エスさまのやさしいお心が、初めて分かりました。悪い私たちの代わりに、神の子のエスさまが、十字架で死んで下さったことが、よく分かりました。兎さんが、わたしたちの代わりに死んで、教えてくれました。悪い私たちを、どうぞ、許して下さい。』それから、お猿さんたちは、神さまを信じる、よいお猿さんになりました。 私たちも、神さまを知らないでいる、かわいそうなお友だちのために、命をすててあげましょうね。 |
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| (ヨハネ15の13) |
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