
| ある森の中に、お母さんと子供の小鳥が住んでいました。坊やの小鳥が、このごろ、病気で何にも食べません。ただ、ピイピイ、ピイピイ、苦しそうに鳴いてばかりいます 『こんなふうでは、いまに死んでしまうかもしれない。 どうしましょう!』 かわいそうなお母さんは、心配で心配でたまりませんでした。 『そうだ。川に行って、お魚を取ってきて、食べさせてみよう。お魚ならおいしいから、きっと、食べるでしょう。そして、元気になってくれるに違いない。』 お母さんは、そう思って、川へいっさんに飛んで行きました。 川には、恐ろしいワニがいました。それは、とても悪いワニでした。どんなものでも、見ると、飛び掛かって一口に食べてしまうのです。森の動物たちは、怖がって、誰も、ワニのいる川には、近づかなかったのです。 小鳥のお母さんは、病気の坊やに、おいしいお魚を食べさせたくて、夢中でしたから、ちっとも怖いとは思いませんでした。 けれど、お母さん鳥は、川のことはちっとも分かりませんでしたので、水の中に出ている岩のようなものを、岩だと思って、そこへおりました。かわいそうに、それこそ、恐ろしいワニの頭だったのです。 パクッ! と、ワニは一口に、かわいそうなお母さんを、呑みこんでしまいました。小さい、かわいそうな生き物を、哀れむ心など、ワニは持ち合わせてはいなかったのです。 病気の坊やは、お母さん鳥の帰りを待っていました。けれど、かわいそうに、とうとう、お母さんは帰りませんでした。母なし鳥になった坊やは、やさしい森の動物たちが、世話をして育ててやりました。 悪いことは、いつまでも続けられる筈がありません。悪いものを何でも食べたので、ワニは口の中が病気なりました。歯の間に、悪い虫が食いこんだのです。 『痛い、痛い、助けてくれ、誰かとってくれ!』 と、ワニは涙をポロポロこぼして苦しがりました。 川せみが、それを見ました。川せみは、森の仲間たちに知らせに、飛んで行きました。 『みんなお聞きよ。大変なことが起きたよ。』 と、川せみが言いました。 『あの悪いワニが、歯の病気で苦しんでいるよ。歯の間の虫を、とってくれと言って、涙をこぼしながら、呼んでいるよ。』 『とんでもないことだ。』 森の動物たちがいいました。 『あの悪者の口の中へ、わざわざ、食べられに、入って行く馬鹿がいるかね。あいつのことだ。虫をとってやったとたんに、バクッと恩人を呑みこんでしまうだろう。』 『虫歯というのもおおかた、嘘かもしれないよ。』 と、森の動物たちは、言いました。悪いワニを、みんなは憎んでいたのです。 その時、小鳥の坊やが言いました。 『かわいそうなワニさん。私が行って、口の中の虫をとって上げよう。』 『君は、お母さんをあいつに食べられたじゃないか。よせよ、君も食べられてしまうよ。』 と、みんなが止めました。 『でも、苦しいのに、だれも助けてくれる人がいないのは、どんなに辛いでしょう。かわいそうだわ。』 と、小鳥の坊やは言いました。 小鳥の子は、みんなが止めるのも聞かないで、川の方へ飛んで行きました。お母さんを食べた悪いワニを助けに、飛んで行きました。 『ワニさん、口の中の虫を、私がとって上げましょう。』 『おや、お前は私にいつか食べられた小鳥の、子供じゃないか。おまえが、本当に、私を助けてくれるというのか?』 ワニは、びっくりして聞きました。 『さあ、お口を大きくお開けなさい。』 と、小鳥は言いました。 小鳥は、ちっとも怖がらないで、大ワニの口の中へとびこみました。そして、あっちこっち探し回って、小さいくちばしで虫をつまみ出しました。そして、すっかり、虫をとってやりました。 『ありがとうよ、小鳥君!』 助かったワニは、ポロポロ涙をこぼしながら言いました。 『君は、どうして、そんなことができるんだ?君のお母さんを食べてしまったこの私が、憎くないのか?悪者の私の口の中で、怖くないのか?』 『ワニさん、あなたは、本当はいい人なんです。』 と、小鳥は、言いました。 『ただ、神のお子のイエスさまを知らないから、悪いことをしてしまうのです。 ワニのおじさん。お願いだから、おじさんもエスさまの子供になってね。エスさまは、私たちみんなの罪を一人で受けて下さったの。そして、私たちが、みんな、ごめんなさいをして、はやくエスさまの子供になるのを、天で待っていらっしゃるのよ。』 と、神さまの子供が教えました。 その時から、悪者のワニは、よいワニになりました。天のお父さまのやさしいお心が分かって、エスさまにすっかりごめんなさいをしたのです。 どんな悪い人でも、天のお父さまは、その人をかわいそうに思って、心配していらっしゃるのです。そして、ごめんなさいをして、早く神さまの子供になるのを、待っていらっしゃるのです。 私たちも、お父さまのやさしいお心が分かったら、どんな悪い人にも、親切にして上げましょうね。 |
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| (ロマ12の20) | ||
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