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【奥付の部屋】

<その2>

 「著者検印」
 

かつては「著者検印」という、「愉しい制度」がありましたね。
いつからか「著者との合意により検印廃止」と記される様になり、「検印」は廃止されました。
現在では「検印廃止」の記載さえ無くなってしまいました。
では、古き時代を垣間見ることにしましょう。


 

「著者検印のあれコレ」

      私はその昔、実際に著者が一冊づつハンコを押しているのだと思い、
      「作家も大変なんだなあ。」と思っていました。
      よく考えたら「そんな馬鹿な・・。」と気付きました。
      でも本当に本人が押していたら楽しいのですが・・
      (大藪さんがせっせとハンコを押しているのを想像してみてください。)

 

「著者検印その1」

大藪春彦

『独り狼』トーキョーブックスの「検印」です。
ほとんど見えませんが「大藪印」です。

「桃源社版」では「検印」の代わりに、
このような「サイン」が印刷されています。

大藪氏には「ハンコ」より「サイン」の方が似合います。
だって、せっせとハンコを押している大藪・・かっこわるいぞ。(だから押してないって!)




「著者検印その2」

翻訳書の検印

これは「ドイル作品」の延原謙訳の検印です。「延原」と押してあります。

これは「ドイル作品」の大西尹明訳の検印です。「IHSINO」と、右からローマ字です。

これは「エラリー・クイーン」の検印です。何故外国人が「ハンコ」を・・・。

エラリー・クイーンの「ハンコ」というのは、ほとんど「ギャグ」の世界だと思うのですが、
当時は特に変では無かったのでしょうか?
だって、せっせとハンコを押しているクイーン・・思い切り変だぞ。(だから押してないって!)


<追記>

 「クイーンの検印」??
 クイーンが検印するはずがありませんね。
 翻訳書は、翻訳家が「検印」するんですものね。
 「検印」には、ハンコの形状や名義に関しての決まり事は存在しませんので、こんな検印もあります。

「バーネット探偵社」ルブラン/堀口大學訳 新潮文庫

  「Maurice Leblanc」
   ルブランの「LB」を象った「検印」です。
   翻訳者が「原作者」に敬意を表した感があります。
   『生者と死者と』に「Q」という検印を押した「井上勇」も、この「堀口大學」も、
   実に奥ゆかしいではありませんか。




「著者検印その3」

謎かけ? 谷崎潤一郎

「痴人の愛」谷崎潤一郎 角川文庫




こんな漢字存在しません。
「ウカンムリ」に「公」に「木」ですから、「ウハムキ」つまり「上向き」でしょうか
そこにどんな「意味」があるのか・・・謎です。



 <追記>

 「著者検印」はあくまで「著者サイド」に於いて行われていた制度です。
 但し「検印」は著者自身が押さなければ意味が無いものとは、ひとつの定義であり、
 「著者自身が実際にハンコを押す作業を自分で行っていた」という事はまた別の問題です。
  ここから色々な想像が出来ます。
 「清張は、自分の検印すら見たことがなかった。」とか、
 「朝山蜻一は、検印台紙全てに検印を押すという苦痛な作業に自虐的快感を感じていた。」とか、
 「乱歩は、土蔵の中で頭を掻きむしってプロットを捻りながら黙々と押印を続けていた。」など。
 ただ「検印付書籍」の幾らかは「著者自身の押印したもの」であると考えると、
 「むー、貴重だぞ。」と思ってしまいます。
 
 また「一家総出」で押された検印となると、
 「壇ふみ」の押印した「壇一雄」の書籍があるかもしれない・・・
 「岡本太郎」の押印した「岡本かの子」の書籍があるかもしれない・・・
 でも、上記全てどれが「ソレ」であるかは絶対わからないもんなあ。
    (横に『娘・ふみ押印』とか、書いといてくれればいいのに・・・)





「検印代わりのポートレート」

「一本の鉛」佐野洋 東都書房 S.34年



この時代はまだ「著者検印」付の本がほとんどですが、
いきなり「検印」の代わりに「佐野さんのお顔」が・・・
これはこれで「検印」の代わりにはなっていますね。
さすがは東大出の超合理主義者「佐野洋」の「ウルトラC」的発想かもしれません。
(しかし若いなあ・・)






「捨て印??」

「赤い水」杉浦明平 カッパノベルス S.37年




「検印」の「捨て印」・・・。
 あるいは「割り印」か?(笑)
 もしかすると、杉浦氏のご子息が「押印」に失敗して、ご本人が再度押したか?
 「検印」が二つあると、何だか得した気分です。(変ですか?)





「検印図鑑」

城戸 禮

これは「東都書房」の検印です
本のイラストの背に「東都書房」と書いてあります。

多岐川 恭

これは『氷柱』(河出書房)の検印です
個人的に好きな「検印」です。(何がだ?)

高木 彬光

いきなり「彬光」ですねえ。
「高木印」は存在しないのでしょうか。(存在します)

小島 政二郎

「古瓦」です。
ただ、それだけです。

高橋 一雄

台紙添付スペースの上に、いきなり検印!
しかも「たかはし」・・かわいいかもしれない

倉橋 由美子

倉橋さんって・・・
とっても律儀な人なんですね。きっと。

宮本 幹也

幹也の出身地「長野」の名産品「リンゴ」の中に「幹」です。
郷土愛を感じて、とっても微笑ましいです。

中村 武志

これは『目白三平の追跡旅行』春陽文庫の検印です
「わはは・・」主人公の名前だ!

覆面 作家

さて誰の「検印」かお解りでしょうか?
正解は「加田伶太郎」でした。


春陽文庫

これは「樫原一郎」の「サイン」です。
春陽文庫は「サイン」の印刷をずっと続けていますね。 花丸をあげましょう。




「おまけ」

「奥付が二つある本」

「覆面作家」折原一 講談社

「あっ!これはいいのか!」・・・だって「作中作」の奥付だもんね。
でもよく見たら三つありました。つまり「作中作中作」だな。(ややこしいな)
これ以上この問題に触れると「ネタばれ」になりますので、最後は「シャレ」ということで




<後記>

 『将棋殺人事件』の「誤植事件」に端を発した「奥付日誌」はこれにて終了でございます。
 何か面白い「奥付」がありましたら、ご一報くださいませ。        (了)




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