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ウイルスの基礎知識 | ![]() |
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ウイルスの分類
ウインドウ・ピリオド
エイズ(AIDS)
肝炎
ATL(成人T細胞白血病)
CMV(サイトメガロウイルス)
梅毒
伝染性単核球症
ヒトパルボウイルスB19
マラリア
エルシニア菌
クロイッツフェルト・ヤコブ病(CJD)
ウイルスの分類
ウイルスは、遺伝的情報を持っているDNA(ディオキシリボ核酸)またはRNA(リボ核酸)と、それを包むタンパク質から成り立っています。大きさは18〜300nm(1nmは100万分の1mm)で電子顕微鏡でないと確認できません。ウイルスは、宿主とする細胞の種類によって動物ウイルス、植物ウイルス、細菌ウイルスに分類されます。このうち血液を介して感染する可能性のあるウイルスは、動物ウイルスです。動物ウイルスは、核酸の種類、形、脂質膜(エンベロープ)の有無などによって分類されます。外膜を持つウイルスは、界面活性剤などによって不活性化させることができます。
ウインドウ・ピリオド
献血された血液は、すべて血液センターにおいてウイルスなどの抗原・抗体検査を行っています。しかし、ウイルスは、感染直後に検査に感染しているか否かが、検出できない期間があります。これをウインドウ・ピリオド(空白期間)と呼んでいます。例えば、HIV抗体のウインドウ・ピリオドは、一般に6〜38日(平均22日)とされています。この期間に献血された血液は、検査で見つけることができないため患者さんへの二次感染の可能性があります。ウインドウ・ピリオドは、より感度の高い検査法によって短縮することも可能ですが、ゼロにすることはできません。将来的にもウインドウ・ピリオドの血液を完全に除外することができないため、問診を実施しています。献血される方には問診に正しく答えていただくようお願いしています。また、問診に何らかの理由で正しく申告できなかった場合、献血後3時間以内に電話による自己申告をしていただくようお願いしています。
エイズ(AIDS)
エイズとは、後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome:AIDS)のことであり、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immune Deficiency Virus:HIV)の感染により免疫系が破壊されて行くために、通常では感染しても問題にならないような細菌やウイルスによって重篤な症状を表したり(日和見感染)、悪性腫瘍が発生し、死に至る病気です。HIVはレトロウイルスに属し、熱に弱く、感染力も低いウイルスです。HIV感染者は無症候性キャリア、エイズ関連症候群を経て、エイズ患者となります。発生までの基幹は、数ヶ月から10年以上と幅がありますが、発生後の死亡率はきわめて高く、完全な治療法は確立されていません。感染初期に発熱、のどの痛み、間接痛、発疹等の症状が見られることがあります。HIVの感染経路は、血液を介するもの、性行為を介するもの、母子感染などがあり、通常の社会生活で他人に感染することはありません。
現在、赤十字血液センターで実施しているHIV抗体検査は、世界最高水準の検査ですが、HIVには感染から6〜38日間(平均22日間)は検査では見つからないウインドウ・ピリオド(空白期間)があります。この期間に献血された血液が患者さんに輸血されHIV感染した例がこれまでに1例あります。日本赤十字社では、HIVに感染しているのではないかと不安のある人、またエイズ検査を目的とした人からの献血はお断りしています。
肝炎
現在、肝炎を引き起こすウイルスは、A型、B型、C型、D型、E型の5種類が知られており、これらの中で、日本において主に輸血の際に問題となるのは、B型肝炎ウイルス(HepatitisBVirus:HBV)とC型肝炎ウイルス(HepatitisCVirus:HCV)です。わが国におけるキャリアは、B型肝炎が200〜300万人、C型肝炎が100万人〜200万人といわれています。B型肝炎を引き起こすHBVは、輸血等により感染すると一過性の急性肝炎か、まれに致命的な劇症肝炎を引き起こすことがありますが、多くの場合は症状が現れないまま慢性肝炎に移行することなく回復していきます。また、検査法の進歩により、現在の輸血後B型肝炎は、一部の変異株の問題があるもののほぼ制圧されてきました。出生時の母子感染や、免疫力が充分に発達していない乳幼児期のHBV感染は、キャリア化し一部慢性肝炎に進行すると言われていますが、HBワクチン等の開発によりそのような感染ルートも予防できるようになりました。また、血液センターにおいても、従来のHBs抗原検査に加え、1989年よりHBc抗体検査も追加され、低濃度のHBVも検出できるようになり、輸血によるB型肝炎の感染を完全に防止することを目指しています。一方、C型肝炎を引き起こすHCVは、慢性化しやすく肝硬変や肝臓ガンに進行することが多いと言われています。わが国の慢性肝臓疾患(慢性肝炎、肝硬変、肝臓ガン)の60〜70%がC型肝炎の持続感染によることが明らかとなっています。HCVにはサブタイプT〜W型があり、わが国では、U型、V型が主流です。インターフェロンによる治療が有効ですが、サブタイプにより効果が異なり、著効例はV、W型に多くみられます。血液センターでは、1989年12月から世界に先駆けてHCV抗体検査を導入し、1992年2月よりさらに検出感度が向上した、いわゆる第二世代検査法(PHAまたはPA)に切り替えたことにより輸血後C型肝炎の発生は激減しました。日本赤十字社では、肝炎ウイルスに感染しているのではないかと不安のある人、またウイルス検査を目的とした人からの献血はお断りしています。
ATL(成人T細胞白血病)
ATLとは、成人T細胞白血病(Adult T−Cell Leukemia)のことで、HTLV−1(Human T−lymPhotropicVirusl)というレトロウイルスが原因で、リンパ球の一種であるT細胞が癌化する病気です。通常、乳幼児期に感染し中年以降に発症することが多いですが、感染者からの年間発掟率は約2000人に一人と言われており、発症率そのものはかなり低い状況です。患者の発生には地域差があり、日本では南西部沿岸地域に多くみられます。症状として、多くの場合皮膚病変がみられ、リンパ節腫大、肝脾腫大を伴うことが多く、決定的な治療法もなく、予後の悪い感染症です。HTLV−1の感染経路は、血液を介するもの(輸血等)、性行為を介するもの、母児感染によるもの(主に母乳を介する)の3通りに限られています。血液を介する感染経路は、輸血用血液のHTLV−1抗体検査によりほぼ100%回避されるようになりました。母児感染も母乳保育を行わなければその多くは回避されると言われています。なお、同じウイルスによって起こる病気にHAM(HTLV−1associatedmyelopathy)という神経疾患や、リウマチ様疾患、ブドウ膜炎などがあります。
CMV(サイトメガロウイルス)
CMV(サイトメガロウイルス)は、ヘルペスウイルス群に属し、献血できる年齢での感染率は80〜90%で、一般的には潜伏感染です。CMV抗体陰性の先天性免疫不全、骨髄移植や白血病など免疫機能が低下している患者さんや未熟児へCMVに感染している血液を輸血すると、問質性肺炎などの重篤な症状をおこすことがあります。このためこれらの患者さんには、CMVに感染していない血液が必要になります。
梅毒
梅毒は、スピロヘータの一種、梅毒トレポネーマの感染によって起こる慢性性病の一つです。トレポネ ーマは皮膚、粘膜の小傷から侵入し、やがて全身に 広がりますが、組織に現れる炎症性の病変は、線維 芽細胞、リンパ球、形質細胞の強い増殖と壊死を伴 うことがその特徴とされています。ヒトにおける梅毒 の経過は次の4期にわけられます。
[第1期]感染後3カ月位までをいい、トレポネーマ が局所に限定した状態で存在します。感染後3週間で トレポネーマの侵入部位に初期硬結(かたまり)を 生じ、潰瘍化します。感染後4〜6週間で抗原による 梅毒血清反応は陽性となります。
[第2期]倦怠感、食欲不振、夜間の頭痛などの前駆症状をもって第2期に入りますが、おおよそ感染後3年までをいいます。皮膚、粘膜には梅毒疹および脱毛が見られます。この第2期での梅毒血清反応はかならず強い陽性となります。
[第3期]感染後3年以上を経過したものをいいます。 この病期になると、臓器梅毒を特徴づけるゴム腫 (ゴムのような弾性をもつ腫瘍)が見られ、心血管系、 骨、中枢神経系など全身の器官が侵されます。
[第4期]感染後10〜15年にしたものをいいます。 この病期には脳や脊髄を侵して麻痺狂(慢性の脳炎 と脳変性で、主に痴呆や感情・意志の障害、瞳孔に 変化がみられるなどの痘状がみられる)をあらわします。梅毒の伝染は外部から病原菌の侵入による後天性梅毒(獲得梅毒)と経胎盤性伝染による先天梅毒 にわけられます。また、梅毒は免疫性をもっていますが弱く、梅毒に羅思していても新たに感染することがあり、重感染といいますが、一度治癒したのちに感染する再感染と区別されます。 赤十字血液センターでは1952年から梅毒の検査を行っていますが感染初期には、検査で見つからない場合があるため、問診を行っています。
伝染性単核球症
伝染性単核球症は全身のリンパ節腫脹を主症状とす る疾患で、エプスタイン・バー・ウイルス(以下 EBV)などの感染により発症します。発症時には38 〜40℃前後の発熱を伴います。血液検査では異型リ ンパ球を含むリンパ球増多とEDV関連抗体陽性が認 められます。唾液中に排出されるウイルスが感染源で、主に飛沫感染します。日本では3歳までに80% が不顕性感染又は感冒様症状で初感染が成立し、成人の90%以上がEBV抗体陽性です。国内では輸血に よる感染の報告はありませんが、欧米では輸血によ るEBV肝炎や伝染性単核球症が報告されているため、 問診により6ケ月以内に伝染性単核球症にかかったかどうか確認しています。日本においても問診を行い、 EBVの感染を確認しています。
ヒトパルボウイルスB19
ヒトパルボウイルスB19は、脂質膜(エンベロープ) を持たない極めて小さな(約20〜26nm)ウイルスで す。ヒトパルボウイルスB19感染症は、主に飛沫感染により伝染し、5〜6年周期で流行があります。輸 血用血液および血紫分画製剤を介しても感染します。 幼少児に感染すると伝染性紅斑(リンゴ病)として 発症します。日本では成人の約50%の方がヒトパルボウイルスB19の抗体をもっています。もし、感染したとしても、通常の免疫能を持つ成人では、ウイル ス血症の期間が短く、約1週間で抗体が産出され、ほとんど血中からウイルスが排除されるため、無症候 あるいは軽い感冒など症状を起こす程度です。しかし、慢性溶血性疾患、大量出血、免疫不全の患者に感染した場合には強度の貧血を呈することがあり、 妊婦に感染した場合には、死・流産、胎児水腫など を起こす可能性もあります。献血された血液中のウ イルスを完全に不活化・除去することは困難ですの で、献血時に問診を行っています。なお、血液セン ターでは、1997年9月よりヒトパルボウイルスB19の検査を試行的に行っています。
マラリア
マラリアは、ハマダラ蚊に媒介されてヒトに感染する原虫疾患です。このマラリア原虫には、三日熱マラリア、四日熱マラリア、熱帯熱マラ リア、卵形マラリアの4種類があります。蚊の唾液とともに人体に注入されたマラリア原虫は数分間で肝細胞に入り、組織型原虫となって増殖します。やがて10〜14日の後、血液の中に入り、赤血球原虫に変化 し、分裂と増殖を繰り返し宿主である赤血球を破壊したのち他の赤血 球に侵入します。現在、マラリアは開発途上国に8億の感染人口が存 在するといわれています。日本では最近問題とされているのは“輸入熱帯病’’としてのマラリアで、海外で感染して帰国するケースが多く、 年間100例ほどが報告されています。マラリアの主要症状は発熱、貧血、脾腫で、潜伏期は、熱帯熱マラリアで1〜4週間、三日熱マラリア で10〜14日間といわれています。マラリアの中でも熱帯熱マラリアの 致命率が高く、脳性マラリア、急性腎不全などの合併症を引き起こし ての死亡例がしばしば見られます。 赤十字血液センターでは、献血者の方々に問診を行うことにより、輸 血によるマラリアの感染を防ぐよう努めておりますが、現在適切な検査方法はみつかっておりません。
エルシニア属菌
エルシニア・エンテロコリチカ(Yersiniaenterocolitica)は腸内細菌 エルシニア属の一種で、腸炎、リンパ腺炎、敗血症などを引き起こす病原菌で、小児の発熱、下痢、腹痛などを伴う胃腸炎の原因として知 られています。豚、牛、犬、猫などの動物およぴミルク、ミルク製品、 水などの食品、下水、川など自然界に広く分布し、本菌に起因する胃腸炎症例は各国で報告されています。低温に強く、常温と同じように 増殖できる特徴があります。欧米では、本菌に感染した献血者の血液を輸血して敗血症を起こした例があります。まだ日本ではこのような 症例はありませんが注意が必要です。現在適切な検査方法はなく、問診で献血者の体調を伺うことでチェックに努めています。
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)
クロイツフェルト・ヤコブ病(creutzfeldtJakobDis− ease:CJD)は、稀に見られる中枢神経系の致死的 疾患です。CJDの症例の多くは孤発性で、その感染 および発症機序は不明です。CJD症例の5〜10%は 家族性です。また、角膜移植、硬膜移植及びヒト下垂体製剤使用等の医療行弟による偶発的な感染が報告されています。CJDは10歳の若年者及び、80歳の高齢者の症例が報告されていますが、一般的に50歳 から75歳の間に発症します。CJDの頻度は、日本も 含め世界的に人口100万人当たり約1人と言われてい ます。人口当たりの報告症例数は、米国で最初にCJDが調査された1979年から一定しています。米国 では、年間約250例の人がCJDで死亡しています。 CJDの原因は、数10年間研究され、議論されてきました。ノーベル貰を受賞したプルシナーは、プリオン (タンパク性感染粒子)が関係していると推論してい ますが、ウイルスによって感染するという意見もあ り、はっきりと解明されていません。なお、日本の硬 膜移植を受けた症例の中では約40名が報告されてい ます。現在、輸血による感染の報告はありませんが、 より安全性の高い血液を患者さんに届けるためにも、 献血される方に問診を行っております。
【プリオン】
プリオンは、ほとんどの動物が保有しているタンパク 質の一種です。正常なプリオンは運動神経を維持するのに必要であると考えられていますが、構造が変化し異常型になると体内で分解されず、脳に蓄積さ れるためCJDを発病すると言われています。プリオ ンは感染性がありながら、ウイルスでも細菌でもな く、熱、消毒、紫外線、放射線などに耐性が強い粒子です。
日本赤十字社 BLOOD&DONOR 「献血と血液のハンドブック」より